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昨日は大卒6年目のお姉さん4人をご案内して、上野のフェルメール展に行って来ました。

2人は2011年度3年ゼミにいた教え子、1人は2012年度の卒論難民(本来の所属はTゼミ)、1人はこの3人と外国語クラスかなにかで一緒だった仲良しグループの仲間。私のゼミ生たちと仲が良いのでちょくちょく集まりに現れたり、こないだは鶴見川ロードバイクツアーにも来てたな。

このうち1人が、クラシック音楽は好きでアマオケもずっと続けているのだけれど、美術には疎いので、まずは絵を楽しめるようになれないか、ということで、不定期にガイドツアーを開催しているのです。昨日はその2回目。前回はプラド美術館展でした。

なお、私はサイバーガイドなので、お姉さんたちと同じ会場内にはいましたが、リアルではほぼノーコミュニケーション。

サイバーガイドというのは、具体的にはツアー参加者の動きを見つつ、その付近にある作品についての解説や鑑賞のヒントをグループチャットに流します。だから、基本的には会場の中程にポジションを取って、ツアー参加者の位置を把握しつつ、適宜、ガイドトークをグループチャットに供給する感じですね。サッカーで言うセントラルミッドフィールダー。たまーにリアルで遭遇したとき(「あ、先生!」と笑われる)には、近くにある絵について簡単なガイドトークも提供します。

さて、フェルメール展です。

会場構成は

「肖像画」→「歴史画」→「風景画」→「静物画」→「風俗画」→「フェルメールの部屋」

という6ゾーン。
フェルメールについての教科書的説明において必ず出てくる、17世紀における西洋画のヒエラルキーに従ってのゾーン分けですね。

不思議なのは、ヒエラルキー順(降順なら歴史画、肖像画、風俗画、風景画、静物画だし、昇順ならその逆)の展示ではなかったこと。相対的にサイズのでかい肖像画と歴史画を先に見せるという、部屋割り上の都合だったのだろうとは思うのですが、それならそれで降順でも収まったはず。

何故肖像画からスタートしているのか。謎です。

このゾーンでツアー参加者に人気だったのは、これかな。
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ワルラン・ヴァイヤン「マリア・ファン・オーステルヴェイクの肖像」(1671, アムステルダム国立美術館蔵)

こちらの集団肖像画には「もっと小顔に描いて欲しかった」という声がグループチャットに・・・
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ヤン・デ・ブライ「ハールレム聖ルカ組合の理事たち」(1675, アムステルダム国立美術館蔵)

わかります。左から3番目のオヤジね。たぶん実物よりは盛ってあるだろうけどね。

こうした集団肖像画がどんな発注内容でどんなロジックで描かれているのかも、サイバーガイドが即座に解説します。

「今みなさんが見ているその絵ね、全員を同じくらいのサイズで描かないといけなかったんだよ。何故かというと・・・」

歴史画コーナーではこれが人気。
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パウルス・モレールセ「ヴィーナスと鳩」(1628, ユトレヒト中央美術館蔵)

瞳の描き方がグループチャットで高評価でした。
サイバーガイドからは

「何故このお姉さん、胸を見せているかわかる?」

という問いかけが。
こうして、単に綺麗かどうか、好きかどうか、上手いかどうかを越えた様々な絵の見方を、グルチャ上でのコミュニケーションによってツアー参加者に提供していくのが私のサイバーガイドです。

こっちの絵はまんまカラヴァッジオですよねえ
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ヤン・ファン・バイレルト「マタイの召命」(1625-1630, カタリナ修道院美術館蔵)

ほらこれが元ネタだ
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カラヴァッジオ「マタイの召命」(1600, サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会蔵)

というわけですかさず、ユトレヒト・カラヴァジェスキについての解説がグループチャット上に流れます。

風景画ゾーンでは何故かこれに注目が。
イメージ 6
アラールト・ファン・エーフェルディンヘン「嵐」(1650-1655, アルクマール市立美術館蔵)

「嵐の絵、好きです」
「え、あの不穏なだけの?」
「不穏なだけの(笑)」
「ショスタコーヴィチの交響曲5番みたいな。」
「たしかに!」

これも好評でしたね。
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アブラハム・ストルク「捕鯨をするオランダ船」(1670, ロッテルダム海洋美術館蔵)

静物画コーナーではこれがやたらバズってた
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ヤン・デ・ボント「海辺の見える魚の静物」(1643, ユトレヒト中央美術館蔵)

もちろんウェブ上にパスワードかけてアップしたガイドツアー資料で静物画についての概要は皆さん予習済みですし、ボデゴンとヴァニタスの違いも説明済み。ただ、キャンバスの現物のヴァニタスを見ると迫力が違いますからね。相当これは刺さったようです。

風俗画コーナーではなんと言ってもこれかな。
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ハブリエル・メツー「手紙を読む女」「手紙を書く男」連作(1664-1666年, アイルランドナショナル・ギャラリー蔵)

チャラ男が真面目な彼女を手紙で手玉に取る話なのではないか、と音声ガイドは語っておりました。

風俗画コーナーでは描き込まれたものの暗喩を適宜解説です。レース編みやニシンがこの時代のこの土地でどんな意味を持っていたのか、とか。

このようにして、対話や雑談や解説をリアルタイムでスマホでやり取りすると、吊るしの味も素っ気もない解説だけでは取り付く島もない「その他大勢の絵」が、ライブ感を伴って楽しめるんですよ。

階下に降りるといよいよフェルメールの部屋なんですが、ツアー参加者の中にはオランダで以前に同じ絵を見たことがあるという人も複数おり(スマホでそのときの写真見せてくれた)・・・・そもそもフェルメールは情報過多なコンテンツですから、私からの働きかけは控えめに。

ただし、フェルメールが同時代において抜群の、圧倒的な超絶技巧の持ち主というわけではなかったことや、同時代において遥かに高い値段で絵が売れていた画家もいたことはきちんと指摘しておきました。すなわち、ここでのサイバーガイドのガイディングの意図は

「脱神話化したニュートラルな目でフェルメールを見てもらう」

です。

その上で、彩度やコントラストなどインスタ世代に理解しやすい概念を使って

「初期の2枚以外は彩度、低いよね」
「2階の絵と比べると被写体が整理されてる感じ?」

というように、プレーンなテクストとしてのフェルメール作品を見て、分析もして、味わえるように誘導。

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2階の、どちらかと言えば猥雑でガチャガチャしてエネルギッシュであることが魅力でもある同時代のオランダ絵画に比べると、東山魁夷の日本画みたいなミニマルな表現ですよこれ。

美術館を出た後は、近所のカフェで、会場内では出来なかったリアルコミュニケーションでの振り返りと解題をして解散。
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楽しんでもらえたようです。

さて次はどの展覧会にご案内しようかな。バロックものは2回連続でやったので、ルーベンスじゃないしなあ。

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