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バカンスも終盤に入った一昨日のこと、
友人マルタンから電話が入る。マルタンは10年来の友人で
お互いの娘たちの年が近いこともあり、月に一回ぐらいのペースで会っている親しい友人。
マルタンの長女エリーズと我が家の下の子が同い年、仲が良いので、
このバカンス中に一日遊びに来ることになっていた。
「悪いけど、エリーズ、遊びに行けそうにないんだ。」
風邪でも?ときくと
「実は先週の日曜に兄弟で山スキーに行って・・・長兄が事故で死んだんだ。」
絶句。返す言葉もない私。
ごめん、なんていったらいいかわからないわ。
「こんなときに言うことなんてないよ。
La vie continue.それでも生きていかねばならないのさ。」
マルタンは8人兄弟の末っ子、親交の熱い家庭に育った兄弟はみなとても仲が良く、
兄弟で登山、山スキーなどをしばしば楽しんでいるのは知っていたが。
山スキーというのは、特殊なスキーを履いてオフピステを山の頂上まで上り、
スキーで降りてくると言うもの。
自然を満喫できるのが魅力で毎年愛好者が増えていると言う。
マルタンの兄、ジャンは、上級スキーヤーだったが、
山の斜面をスキーを履いて登っている途中、
転んでスキーがはずれた。雪面は、当日の朝の気温低下のせいで
一度解けた雪が固まり、アイスバーンのようになっていた。
ジャンは止まることが出来ず、そのまま谷底に転落したのだ。
マルタンや同行した息子、兄弟の目の前で起きた事故だった。
マルタンが谷底を覗いたところ、兄の体はバラバラになっていたという。
そのジャンの告別式に先ほど行ってきた。
ジャンの住んでいた山間の村の教会は人があふれていた。
信仰の熱い人だったのだろう、司祭が三人も祭壇に立っている。
音楽と自然をこよなく愛したジャンのため
家族や親戚が次々に言葉を述べ、賛美歌が続く。
私たちは入り口付近に立っていたが、それでも妻や子供たちが泣き崩れるのが見える。
教会の入り口には数枚のジャンの写真を貼ったパネルとと大きな花かごが置かれていた。
妻と微笑むジャン、孫を抱くジャン、庭で木を眺めるジャン。
マルタンの娘たちの洗礼式の際、2度ほど会っただけだったが、
写真のジャンはマルタンとあまりにそっくりで、夫ともども息をのむ。
その下に置かれた花は、桜、水仙、れんぎょうなど、どう見ても庭から摘んできた花々。
もうグルノーブルではとっくに散ってしまったが、山間のこの村ではまだ満開なのだろう。
生花店からのりっぱなブーケが並ぶ中、この心こもった花かごが一番美しかった。
教会から出ると、背後にジャンが命を落としたその山が見えた。
頂上はなだらかで平に雪の積もる山に見える。
山は優しい姿に見えるのに、時に残酷な仕打ちをする。
マルタンは泣きはらした目に涙をため、「来てくれてありがとう」と言う。
目前で兄を亡くしたマルタン、今どんなに辛い悲しい気持ちでいることか。
そして優しい彼のこと、兄を助けられなかった無力さを悔いているに違いない。
私は何も言えず、マルタンの肩を抱いただけだった。
こうして友達が辛い目にあうたびに、何も出来ず、何も言えない自分を恨めしく思う。
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今晩は holyさん、どこにいても 不意の死別はまぬがれず残された者は悲しみしかありませんね。 時が経ちお友達のマルタンさんの悲しみが少しでも癒えるのを心より お祈りしています。
2006/5/8(月) 午前 2:28 [ con*nei*e ]
con neigeさん、ほんとうに悲しみを癒してくれるのは、時しかないですよね。
2006/5/8(月) 午後 5:28
アルプスを愛して、生活の一部になっている方にはあり得るお話ですねお悔やみ申し上げます。山を熟知されていても、起こってしまう事故です。今年はニッポンの山も例年以上に残雪が多く、山スキーをやっている方も勝手が違うようです。GW後半は天気が良く、毎年多く出る遭難者が少なかったのが幸いでした。
2006/5/9(火) 午前 5:13
アルプスを愛するムッシューにとってはきっと他人事ではないお話でしょう。日本でもやはりこの連休中同様の事故があったようですね。ニュースできいていると、ああ、気の毒に、としか思いませんが、実際に身近な人が事故に会うと、残された人々にとっては悲劇だと実感します。マルタンにとってもトラウマにならねばいいけれど、と祈っています。
2006/5/9(火) 午前 5:37