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カルラとばったり街で会ってしまった・・・
インドネシア人のカルラは、私たちの友人ニコラと結婚するために、国も家族も仕事も
すべて投げ出して、三年前ひとりフランスにやって来た。
それなのに、ニコラは突然離婚を宣言。
友人も家族もいない彼女を、私と主人で支えようとしてきた。
ある日、ニコラに主人が電話をした。すると電話口のニコラは非常に冷たく言いはなった。
「君たちは、ボクがカルラの銀行口座からお金を引き出さないように、
カルラを銀行に連れて行って手続きをしたらしいね。
離婚に向けてカルラに弁護士も紹介したらしいじゃないか。」
彼の言うことはすべて事実である。しかし、これらは彼女の判断で、彼女に頼まれて
したことだ。なのに、銀行口座の件で追い詰められた彼女は
すべて私と主人のアドバイスでしたこと、とウソをついたらしい。
主人はカルラに「協力はするけど、ニコラは自分の友人だ。
ニコラには絶対にこのことは言わないように。そうでなければ手伝いはできない」
と何度も何度も繰り返し言っていた。
カルラは今まで友人ニコラの奥さんでしかなく、あまり深いお付き合いはなかった。
私たちはカルラのことは余りよく知らなかったのだ。
だから、私にとっては、彼女が離婚で不利にならぬように手伝うことは
友情からというより、外国でひとりぼっちになってしまう彼女への同情からの
人道援助、に近かった。
ニコラの悪口を言ったこともなければ、ニコラに敵対するつもりもなかった。
それだけに、主人も私も、カルラに裏切られたような、なんともやりきれない思いをしている。
一時は毎日のように家に来ていたカルラであったが、
その後一度も顔を見せていなかった・・・・・
ほぼ一ヶ月ぶりの再会に「ひさしぶり、元気?」と
何もなかったように私の頬にキスをするカルラ。
元気よ、あなたは?と私もフランス語の型どおりの挨拶をする。
「ニコラとは落ち着いて来ているわ。私がフランス人国籍を
取ったら離婚する。もういろいろ考えず、とにかく資格をとってから
仕事をすることにしたわ。」と明るい調子で言う彼女。
「あの時はすまなかったわ。夜中に家に押しかけたりして。」
そうだ、彼女が最後に家に来たのは2月の末のこと。
夜中の2時にやってきたのだった。
あの日、彼女を送って行ったときの寒さはまだ体が覚えている。
お互い簡単に近況を報告しあったあと、
「それじゃ、友達が待っているから」と去って行ったカルラ。
夜中に押しかけたことより、ニコラにあんな話をしてしまったことのほうを
謝ってほしかった、と彼女の後姿を見送りながら思った。
こんな会い方でもしない限り、彼女に会うことはもうないだろう。
秘密を守る。
これはフランス人の無言のルールである。
これを守れない大人は、軽蔑され、人との交際の輪に入ることができない。
そのルールを侵したカルラのおかげで主人はニコラという友人を失った。
一度留守番電話に、直接会って話をしたい、という旨のメッセージを残したが
ニコラからの電話はいまだにない。
「自分は何も悪いことはしていない、自分からニコラに歩み寄るつもりはない」
と主人はいう。
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