永遠的日誌 Ver.2

気紛れにいろいろな小説を執筆中。

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 軽快な笛のメロディと、和太鼓が刻むビートに、年甲斐もなくワクワクしてしまうあたり、やはり僕も日本人なんだなと改めて思う。

 それは、傍らにいる少女も例外ではないようで―――

「ほらっ、なにぼさっとしてるの! 置いてくわよ!」
「わかったわかった。あんまり急いでるとコケるぞ」



   祭囃子のあとに



 僕は、伊織といっしょに地元の秋祭りに来ている。今年の運営を任されている中学時代の友人にどうしてもと頼まれて、彼女のシークレットライブを企画したのだ。

「まったく、ランクS間近のアイドルが、こ〜んな田舎でライブやってもしょうがないじゃないの。あんたの頼みじゃなかったら聞かないんだから」
「まぁ、そのへんは感謝してるよ。ありがとな」
 照れ隠しに鼻を鳴らして、伊織がそっぽを向く。

 ライブは盛況のうちに幕を閉じ、後は祭りを楽しんでくれという友人の好意に甘えさせてもらうことに。
 伊織もピンク色の浴衣に身を包み、心なしか楽しそうにカラコロと下駄を鳴らしている。
 浴衣に合わせてゆれるポニーテールから除くうなじがまぶしい。

「ところで、伊織は祭り、初めてなのか?」
「……ま、まぁね。…悪い?」
「いや、悪くは無いよ」
 出店を覗き込むその表情は興味津々で、なんとも微笑ましい。
「はい、これ」
「!?」
 目の前に差し出されたわたあめに、きょとんとなる伊織。
「わたあめだよ。知らない?」
「バ、バカにしないでよっ。わたしだってそれくらい…」
 そう言いながら、ふわふわの砂糖菓子を口に運ぶ。
「………こんなに甘いってことは、知らなかったけど」
 伊織が、恥ずかしそうに目を伏せた。


  *


 ―――数分後。
「にひひっ♪ 祭りって結構楽しいわねっ」
 すっかり祭りに染まった伊織の姿があった。
 頭にはアニメヒロインのお面をひっかけ、両手にはそれぞれたこ焼きと杏飴。
「ほらプロデューサー、早く早くっ!」
「ちょ、待てってば」
 軽快な下駄の音を残して、ひょいひょいと先に行ってしまう伊織。
「やれやれ…迷子になっても…ってうお!?」
 急に人が流れ、人ごみの向こうに伊織の姿を見失ってしまう。
「しまった。はぐれちまった……」
 土地勘のない彼女を一人にしておくわけにいかない。とはいえ、大声で呼びながら探すと周囲のパニックを招きかねない。なにせ人気アイドルだしな。
「あ、そうだケータイ…」
 こういうときは文明の利器だのみってヤツだ。
 手早く伊織の番号を呼び出し、発信。

 …と、着信音が随分と近い場所から。

「あれ? そんなに離れてないのか…?」
 しかし、なりっぱなしの着信音は一向に取られる気配は無い。
 …というか、なにか不自然に音が近い。

「……あ」

 邪魔になるから、と預けさせられていた巾着の中に、伊織の携帯が延々と鳴っていた。


  *


「まいったなぁ……」
 伊織とはぐれて2時間ほど。
 祭りは終わりの時間を迎え、出店は次々に撤退の準備をしていた。
「人は少なくなったから探しやすくはなったけど…」
 それでも彼女がまだ会場内にいればの話だ。
 ……最悪の事態は出来れば想像したくは無いが。

「……ん?」
 神社の境内へと続く坂道のふもとで、見覚えのあるピンク色の浴衣を見かける。
「伊織か?」
 そう声をかけ近づくと、間違いなく伊織だった。
「…プロデューサー!」
 不安そうな表情をしていたのが、一転して穏やかなものになったが、すぐに頬を膨らませる。
「もうっ、何してたのよ! わたしのこと放っておくなんてプロデューサーの風上にも置けないんじゃないのっ!?」
 むしろ伊織が僕を放っていったのだが…リアクションが容易に想像できるので言わないで置く。
「ごめん。なかなか見つけられなくてな」
 帰ろう、という僕の言葉に頷き、腰掛けていた灯篭から立ち上がろうとする伊織だったが、一瞬、顔をしかめる。
「…どうした?」
「べ、別に……っ」
 足を庇うような動き方に、僕は一抹の不安を覚えながら、彼女の足を見る。
「ちょっ…!」
「ああ…腫れちゃってるな。捻ったのか?」
 痛々しく真っ赤になった足首。よく見ると下駄の鼻緒が切れて不安定に揺れている。慣れない下駄ではしゃぎすぎたのだろう。
「大丈夫よ。このくらい」
「大丈夫じゃないからここに座ってたんだろう? まったく…」
「悪かったわよ。足なんか怪我したら、仕事にも影響あるものね」
 バツが悪そうに伊織が俯く。
「…そんなことはいい。伊織が無事なら、それで充分さ」
「………そ、そう」

 さて、どうするか。
 この足じゃ伊織は歩けないし…

 しかたない、か。

「ほら、伊織」
 伊織に背を向け、しゃがむ。
「?」
「背中貸してやる。僕に負ぶさって」
「―――!?」
 絶句する伊織。
「どうした? 早くしろよ」
「ばっ、バカじゃないの!? なんであんたに……そのっ……おんぶなんか…」

「……お姫様抱っこの方がお好みか?」
 僕はどちらでもかまわないけど。
「!! …………お、おんぶでいい」
「じゃ、どうぞ。乗り心地は期待しないでくれよ?」

 よっこらせ、と立ち上がる。
 想像以上に軽い彼女の身体に、少し面食らう。

 人気アイドルだろうがなんだろうが、彼女はひとりの女の子なんだな、と改めて実感する。

 ―――僕が守らないとな。

 …なんて、ちょっとうぬぼれだろうか。

「……なに止まってるのよ? 帰るんでしょ?」
「あ、ああ……そうだな」

 ・
 ・
 ・

 随分と静かになった通りを、伊織をおぶったまま歩く。

「……祭りの後って、なんか寂しいわね」
「そう、だな」

「楽しいことって、どうしてこんなに早く過ぎちゃうんだろ…」
「そう、だな」

 淡々と呟く伊織に、僕も淡々と返す。

「………ね、プロデューサー」
「……うん?」

 不意に、僕を掴む伊織の腕の力が増す。
「……また来年、来ましょ」
「それは仕事で? それとも……プライベートで?」
 我ながらちょっと意地悪な質問だ。

「き、決まってんでしょ?」
 背中越しでもわかるくらいに伊織が照れる。




「……プライベートで、よ」

 そっと囁いた伊織の声は、万人向けのラブソングよりずっと、僕の心に響いた。




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

随分と久々にアイマスSSだきゃっほーい。

てなわけで、いおりんin秋祭り。
……今年のはとっくのむかしに終わってるだろと小一時間(ry

だが反省はしない。

実はこのネタ自体は、リトバスのクドSS用に考案したものだったんですが、まぁ紆余曲折ありまして。

ついでに言えば桜藤祭ネタでひよりんをヒロインにコレをやる案もあったんですよ。


でも結局伊織ヒロインで。さすが俺の嫁(ぇ

いおりんの浴衣姿…劇中では見れないのが残念。
てなわけで妄想で補完だいっ!

ピンク色の浴衣はデフォとして、髪型はアップかポニテでガチってとこでしょうかね。浴衣にうなじはツキモノですし♪


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