読書のあしあと

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My Best Books 2006 政治・外交部門


昨日書いたように、今日から数日は、2006年に読んだ本の中での「私的ベストブック」のリストを、各分野別に5冊ずつ挙げていこうと思う。まずは政治・外交部門で5冊。


第一位 細谷雄一『戦後国際秩序とイギリス外交──戦後ヨーロッパの形成、1945-1951』(創文社、2001年)
私にとって、イギリス外交は全くもって未知の領域であった。にもかかわらず、この本は門外漢を魅了してやまなかった。ページを繰る度に、そこには安定した国際秩序をつくろうと努力する、個性的なイギリスの外交官や政治家の姿が立ち現れる。彼らを描く細谷の文章は華麗であり、外交史の面白さを遺憾なく引き出していると言える。そして何よりもこの著書を実に魅力的な、意義深いものとしているのは、文章の隅々から滲み出る細谷の外交哲学であろう。私は本を読むのが遅い方だけれど、この本には特に1ページに5分もかけながら味わって読み、すっかり細谷雄一の文章の虜になってしまった。
この本をきっかけにして「イギリス的なるもの」に興味を持つようになり、昨年はジョージ・オーウェル『オーウェル評論集』カズオ・イシグロ『日の名残り』などを読むことになった。その意味で、2006年の私の読書に一本の糸を通してくれた著書でもある。


第二位 坂本多加雄「『万国公法』と『文明世界』──戦争と平和をめぐる日本の対外観の系譜」(『日本は自らの来歴を語りうるか』筑摩書房、1994年所収)
このブログを通じて紹介していただいた坂本多加雄の本は、非常に面白いものが多かった。その中でも、一本の論文だけで凡百の単行本数冊に匹敵する知的刺激を受けた、この「『万国公法』と『文明世界』」は忘れがたい論文であった。
昨今の北朝鮮をめぐる東アジア情勢、また泥沼化から抜け出せないイラク情勢などを考えると、坂本の「文明化の程度を念頭に置きつつ普通の国として対処すべし」という指摘は、ますます現実味を帯びてくる。このように、過去を論じながら現在を照らし出し、書かれて十年以上経ってもなおアクチュアリティを失わない論理こそ、真に「思想」の名に耐えうるのだろう。


第三位 北岡伸一『清沢洌──外交評論の運命[増補版]』(中公新書、2004年)
昨年末に、国連次席大使から日中歴史共同研究委員会の日本側座長に転じた北岡の出世作。噂に違わず面白い本だった。清沢洌の本は『外政家としての大久保利通』『暗黒日記』などどれも名著であるが、この評伝はさらに清沢の著作の意義を明確にしてくれる。清沢の思想自体にも、共感する部分、感銘を受けた部分が少なくない。
個人的にも、今まで読んだ北岡の著作の中で最も面白かった。


第四位 ジョン・L・ギャディス『ロング・ピース──冷戦史の証言「核・緊張・平和」』五味俊樹ほか訳(芦書房、2003年)
昨年の前半、ブログを休止中はアメリカ外交関連の本を読みまくっていて、これもそのうちの一冊である。ギャディスは冷戦史の大家であり、知る人ぞ知る高名な歴史家であるが、この本の主張は実証的かつ論争的である。即ち、「冷戦が熱戦にならなかったのは核兵器のおかげだ」というのである。ギャディスが史料に基づいて明らかにしているように、これは事実の一側面なのだろう。しかし、それは冷戦という特殊な環境のもとで成立した平和であった。
北朝鮮の核実験を前にして、われわれは核の脅威に直面している。直接的に核兵器に対峙したことのない日本にとって、核兵器の扱いに苦心した政治指導者たちの経験は振り返って損のないものであろう。


第五位 竹中治堅『首相支配──日本政治の変貌』(中公新書、2006年)
現代政治関連の本では、自分の中でのベストヒット作品。これに刺激を受けて「安倍新政権と2001年体制」なんていう長い文章まで書いてしまったくらいである。そこで述べたように、今になってみると2001年体制は「確立した」とまでは言えなかったのではないかとも思えるが、いずれにせよこの本が現代政治を鋭い視点から分析した力作であることは間違いない。


「My Best Books 2006」
政治・外交部門





☆がつきました

ところで、先日(1月1日)に人気度を表す☆が一つつきました。また、訪問者数が8000hitに達しました。
Yahooブログの「人気度」はよくわからない制度ですが、ともかくこのブログがそれだけ皆さんに興味を持っていただき、応援していただかないことには、こんなことにはならなかったと思います。
改めてありがとうございます&今年もよろしくお願いします。

閉じる コメント(4)

「読んでいる本がないので、コメントができない」ことは、昨年末に申し上げました。その考えが変わったわけではありませんが、大三元さんの書評のどの部分によって読んでみたいと思ったかを書込むことで、少しはお役に立てるかな、と思いコメントすることにいたしました。最初は、「細谷雄一『戦後国際秩序とイギリス外交──戦後ヨーロッパの形成、1945-1951』」です。「細谷雄一の文章の虜になってしまった」の一文が、読んでみたい、と思わせました。

2007/1/3(水) 午前 9:08 Mine

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>Mineさん:貴重なコメント、どうもありがとうございます。書評を読んでいただける方々のご意見を聞くことができるのはとても貴重なので嬉しいです。しかも私の文章を読んでその本を「読んでみたい」と思っていただけるのは最高の幸せですね。細谷雄一は新聞や雑誌などにもよく寄稿していますので、高価な単行本よりもまずそちらを読まれることをお薦めいたします。

2007/1/3(水) 午後 3:02 大三元

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私には未知の分野ですが、,イ△燭蠅鬚爾劵船礇譽鵐犬靴討澆燭い任后5重なご紹介、感謝しております。

2007/1/8(月) 午前 8:02 [ アズライト ]

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>電池切れさん:政治・外交関係は、私にとって最も読書の蓄積がある分野なので、比較的自信を持ってお薦めすることができます。参考にしていただければと思います。

2007/1/9(火) 午前 0:20 大三元


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