読書のあしあと

訳あってしばらく閉店します。

素人の芸術鑑賞

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私は、絵画に関しては全くのド素人である。
なので偉そうに絵のことを云々できる知識も感性も持ち合わせていない。

しかし一人だけ、昔から気に入っている画家がいる。
ピーテル・ブリューゲル(Pieter Bruegel,1525/30─1569)である。


ルネサンス期のフランドル派の画家なのだが、ルネサンスと言えばダ・ヴィンチとかラファエロとかの方が有名だし、西洋画の中でもレンブラントなどの方がそれらしくてファンも多いのだろう。確かに、壮麗さや迫力といった意味ではそれらの絵の方が上かもしれない。しかし私は、ブリューゲルに特別の思い入れを持っている。


高校の時だった。世界史の先生がとても個性的な先生で、受験勉強の話などせずに覚えても試験に出ないことばかり喋っていた。しかし、実はそっちの方が歴史において大切なことだったりするのである。その先生の影響で、このブログで取り上げる本に歴史関係が多いと言っても過言ではない。

その日の授業は、ルネサンス期の美術についてだった。ミケランジェロやダ・ヴィンチなどを一通り開設した後に、彼は一枚の絵の拡大コピーを黒板に貼り付け、熱っぽく語りだした。



イメージ 1それがこの「ネーデルラントの諺」である。ブリューゲルの絵はほとんどそうだが、農民や庶民の生活を描いているものが多い。しかもそれが絵の細部にわたって精密に再現されている。この絵の中では、病気の牛を埋める人、変な魔術にかかっている人、なぜか屋根から落ちる人、キリスト(っぽい人)を拝む人、一人で壁に頭を打ち付ける人…などなどがごちゃまぜに描かれている。しかし、それぞれが確固とした存在感を持たされているのがブリューゲルの絵なのだ、と。




その後、その先生はこう解説した。

「中世の絵ってモザイク画とか、聖母子像ばっかりでしたよね。もちろんこの時代でもラファエロなんかは多くの聖母子像を描いています。しかし、ブリューゲルは庶民を描いた。しかもその一人ひとりの顔がほら、こんなに生き生きしてるじゃないですか!勝手に屋根から落ちたり頭を壁に突っ込んでたりしててわけわかんないですけど、この庶民のエネルギーが爆発し、それが描かれたことこそ画期的なんです。いいですか、これが近代なんです!」

私は、その時の鳥肌の感覚を、未だに覚えている。



イメージ 2それ以来、気がつくとブリューゲルの絵を探すようになった。これは「農民の結婚式」という、おそらくブリューゲルの絵の中で最も有名なものだが、この絵でもそれぞれに個性的な農民が描かれている。


イメージ 3これは「雪の中の狩人」。この狩りから帰ってきた狩人の背中は、とても重い。雪国で生活する人々の苦しさを象徴しているようでもある。







ブリューゲルは、自らが近代の視線を持っていたことを自覚していなかったのかもしれない。
しかし私には、ブリューゲルの絵が、近代という時代──今や評判は地に落ちた感のある時代──の持つポジティブな側面を表しているように思えるのである。


皆さんは、好きな画家はいらっしゃいますか?

閉じる コメント(32)

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人様には言えないようなエロい絵が好きなのですが、この画家だけは胸をはって好きといえるのがアンリ・マチスです。平面的な構成、鮮やかな色使い、じっと見つめていると癒されます^^。

2007/7/21(土) 午後 7:09 しろねこ

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>しろねこさん:「人様には言えないようなエロい絵」…と言われると聞きたくなってしまうのが常ですね(笑)。全く偏見とかは持っていない方なので、是非教えていただきたいです。
アンリ・マチスという画家も知らなかったのですが、とても清潔で静かな雰囲気の絵なんですね。こんな絵が部屋に一枚あったらいいな〜。

2007/7/21(土) 午後 7:42 大三元

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大学生のころ,ムンク展を観に行って,買ってきた複製を部屋中にべたべた貼り付けていた時期があります。20歳前後のころで,1人暮らしをしていましたし,ちょっと特殊な感情生活を送っていた感じです。ブリューゲルは,野間宏の「暗い絵」という小説に出てきます。特定の絵を取り上げているわけではないみたいなんですが,ちょうどムンク展に行ったころに「暗い絵」読んだので,図書館で画集を広げ,どの絵が描写されているんだろうとあれこれ探し回ったのを覚えています。ブリューゲルも,けっこう好きです。独特の世界観ですよね。

2007/7/21(土) 午後 11:37 NONAJUN

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>NONAJUNさん:複製を部屋中に貼り付けてある部屋っていうのもいいですね。それこそ画家の世界に浸れる感じがして。普段絵を見てるだけじゃ見えないものまで見えそうですね。
野間宏『暗い絵』にブリューゲルが出てくるというのは初めて知りました。こりゃ本屋に行って探さないといけませんね〜。なかなかブリューゲルを取り上げた本てないんですよね。

2007/7/22(日) 午前 6:47 大三元

大三元さんのお気に入るかどうか、18才未満おことわり的なイラストレーターで、空山基さんなどいかがでしょうか。http://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/book/geijyutsu-list.htm
その他レオノール・フィニ、金子国義など。クラナッハ、デルヴォーも好きです^^。

2007/7/22(日) 午前 11:46 しろねこ

初めまして。履歴から参りました。ブリューゲルの絵は描かれているひとりひとりにリアリティがあって印象的なんですが、「それが近代」なんですね。素敵な先生ですね。上の方のコメントにもありますが、私はマチスの大らかな構図と鮮やかな色彩が好きです。

2007/7/22(日) 午後 2:55 ぼやっと

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>しろねこさん:ぬおぉぉ〜〜〜!た、確かに刺激が強いかも…(笑)。でも冷静に見ると丁寧なタッチですね。何かはまったら大変なことになりそうですね(笑)。
レオノール・フィニ、金子国義、クラナッハ、デルヴォーもちょっとググってみたんですが、空山基さんの絵を見た後では普通の西洋画に見えてしまいます…(苦笑)。あ、でもレオノール・フィニだけはどこかで見たことがありました。

2007/7/22(日) 午後 3:33 大三元

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>ぼやっとさん:初めまして、ご訪問&コメントありがとうございます!本来は受験勉強づくめになる高校時代にああいう先生に恵まれたことは、本当に幸せだったと思っています。
ぼやっとさんもマチスがお好きなんですね。そう言われてみると、シンプルだけど色が鮮やかで、女性にファンが多いような気がする絵ですね。

2007/7/22(日) 午後 3:41 大三元

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ブリューゲルは安野光雅「絵のある人生」でも採り上げられていますね。画集とかでしっかり見たことはないのですが、気になる画家です。

2007/7/22(日) 午後 11:48 [ ちいらば ]

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ブリューゲルの絵は、濃密さと存在感が好きです。亡くなった中野孝次さんの初期の作品に「ブリューゲルへの旅」という名著がありましたね。内容を忘れてしまったので、もう一度本を開いてみたいです。

2007/7/23(月) 午前 0:17 [ アズライト ]

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>ちいらばさん:ご紹介ありがとうございます。早速書店で探してみることにします。画集もなかなか手に入らないですよね〜。

2007/7/25(水) 午前 1:36 大三元

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>電池切れさん:『ブリューゲルへの旅』ってそのままのタイトルですね(笑)。でも今まで知りませんでした。まだ絶版ではないようなので、早いうちに手に入れた方がいいですね。

2007/7/25(水) 午前 1:44 大三元

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山下清さん・・・
実際に、式場病院のバラ園でお会いした事が有るので。
と、言っても丸い背中だけ(笑)
「バラを描いている、変なオジサン」が、第一印象☆
私の自宅が、千葉県市川市国府台だったので、
式場病院は、遊び場の一つでした。
小学校も近所でしたし・・・。
山下清さんは、大人の世界の汚さを教えてくれた、先生でも有ります。

2007/8/8(水) 午前 2:04 [ ブルドッグ大好き〜♪ ]

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>bulldog_daisukiさん:山下清ですか〜!きれいですよね。実際に会われたことがあるというのは、とても貴重な経験ですね。私も、実際に見たことのあるアーティストは、それだけで何となく愛着がわいてしまいます。
「大人の世界の汚さを教えてくれた」…う〜ん。深いですね。

2007/8/10(金) 午前 7:59 大三元

はじめまして、履歴から参りました。でも大三元さんのお名前はしろねこさんやakihito先生の所で何度もお目にかかっていましたが・・。ブリューゲル、私も思い入れの画家です。大三元さんの画像のところに諺の絵がありましたので、お好きかしらと思っていました。随分以前ですが、私も雪中の狩人、子供の遊戯、諺。他を記事にいたしました。簡単な、大した記事ではないのですが、よろしかったら覗いてみてくださいませ。トラバの仕方がわからないので、すみません^^;

2007/9/10(月) 午後 8:05 XXcXiX

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>きいちごさん:初めまして、ご訪問&コメントありがとうございます!きいちごさんは絵画どころか美術全般にお詳しいのですね。私などはずぶの素人なもので、色々と教えて下さい。また遊びにきてくださいね。

2007/9/10(月) 午後 11:44 大三元

そういえば、ブリューゲルってルネサンスに入るんですね・・・・・・。もっと後の印象を受けます。それもおそらく、農村画家と称され宗教色が薄いからなのかもしれませんね。
大三元さんは、本当に歴史に興味があるのだなぁと感じました。

私はどちらかというと妙でシュールなものが好きなので、ブリューゲルを含め、北欧の画家が描く化け物が好きなんですよ。

2008/2/2(土) 午前 1:55 [ in_my_sunshine ]

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>in_my_sunshineさん:そうそう、宗教色が薄いからこそ、「人間の解放」たるルネサンスに相応しいんですよね。歴史の転換点を象徴する絵を描いた画家はブリューゲルだけではないですし、そういう絵を観ると、文字だけでは感じられない歴史のダイナミズムが胸に迫る感じがします。
北欧の画家がお好きなんですか。私は絵画自体には疎いのでわからないのですが、具体的にはどういう画家さんなのでしょう?ちょっと興味あります。

2008/2/2(土) 午後 6:54 大三元

うーん、具体的な名前が分かる人はボッシュくらいなのですが・・・。ダリはスペインですしね・・・。画家ではないのですが映画監督のヤン・シュワンクマイエルは私が抱く北欧のイメージに合っていますね。チェコ出身のシュールな映画を作る方です。

以前、ルネサンス期の絵画を観にいったとき、中心はイタリアのものだったのですが、その中に絵全体が暗く妙な物(角があったり翼があったりする物)が出てくる絵があったんです。国をみてみると案の定北欧だったので、ああやっぱり彼らは好きなんだなぁと実感しました。

私の中では、日本(妖怪)とアイルランド(妖精)と北欧(何だろう・・・トロールとか?)が世界三大化け物エリアです(笑)

2008/2/4(月) 午後 2:14 [ in_my_sunshine ]

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>in_my_sunshineさん:そうなんですか。北欧の画家ってマニアックですね。ボッシュも名前くらいは聞いたことがあったんですが、絵を観たことはないかもしれません。北欧っていう性格づけで芸術作品を見たことがないので、そういう目で見ると面白そうですね。妙でシュールな化け物の絵、観てみたいです〜。

2008/2/6(水) 午前 0:12 大三元


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