読書のあしあと

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連結書評二回目は、小説部門で二冊。ブログで取り上げるのは初めてのミステリ・アンソロジーと、これまた初登場の太宰治である。


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書評86:日本推理作家協会編『どたん場で大逆転──ミステリー傑作選35』(講談社文庫、1999年)

お薦め度:★★★☆☆
書評73:『ナポレオン狂』書評78:『亡国のイージス』に続く、ミステリ読書計画第三弾。私の父親がこの手のアンソロジーが好きで、実家にはこういった本がたくさんあったが、本楽大学ミステリ学部に入学したことを機に再び手に取った。

本書に収録されいている作家は全て初めて読む作家である。順に、宮部みゆき・佐野洋・中嶋博行・法月綸太郎・今邑彩・折原一・有栖川有栖・北森鴻・大沢在昌。

中でも、宮部みゆき・折原一・有栖川有栖の作品を面白く読んだ。ミステリとして最も面白かったのは折原の「わが生涯最大の事件」だが、宮部「人質カノン」や有栖川「蝶々がはばたく」は小説として面白かった。今邑彩の「吾子の肖像」は文章は気に入ったものの、最初の段階でオチが見えてしまったのが残念。

この中では宮部みゆき、今邑彩の他の作品を読んでみたいと思った。



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書評87:太宰治「畜犬談」(『太宰治全集3』ちくま文庫、1988年所収)

お薦め度:★★★★☆
ちくま文庫版の太宰治全集を、少しずつ読んでいる。太宰というと非常に内省的で繊細な小説、というイメージを持っていたが、そればかりではないことに驚かされる。

この作品などは一級のユーモア小説である。主人公は犬が大嫌いで、冒頭から犬への罵倒で始まる。「突然わんといって噛み付くのは、何という無礼、凶暴の仕草であろう」という非難の仕方も面白いが、滑稽なのはその後である。犬の心理を測りかねた主人公が、犬の前を無事に通り過ぎたいがためにできるだけの愛想を振りまいていると、何と犬に好かれてしまうのだ(笑)。

その後もこれが太宰か?と思わせる滑稽な展開が続く。この作品が書かれたのは結婚の前後であり、太宰の精神も安定を得ていたのであろう。作家の多面性をまた一つ見た気がした一品だった。

閉じる コメント(16)

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一瞬、『え、太宰のミステリー・・・・?』かと思ってしまいました。

2007/8/8(水) 午前 1:21 [ gak*1*66* ]

梅崎春生なども笑わせる話しを書いてますよね。振り子のように深刻な創作をした後は、ユーモア小説でバランスをとっていたのでしょうか^^;遠藤周作なども狐狸庵先生で有名ですし。
『どたん場で大逆転──ミステリー傑作選35』は読んだ事無いのですが、その作家の中では法月、北森が一番すきです^^;

2007/8/9(木) 午前 1:14 しろねこ

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おお、太宰全集を読み始めたのですか?私も便乗しようかしら?(笑)。太宰も芥川同様、晩年の作から読み始めたので、「人間失格なんていや〜!!」とか思ってました(爆)。でも、中期の作品など鮮やかだし、さらにユーモアも一級品ですよね!読みたい〜。

2007/8/9(木) 午後 4:17 mepo

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↑しろねこさんの「振り子のように深刻な創作をした後は、ユーモア小説でバランスをとる」って、納得してしまいます。ほんとにそうかもしれませんね。

2007/8/9(木) 午後 4:19 mepo

とうとう太宰ですね〜♪犬の短編はあつぴも読みました♪
太宰の短編は、ユーモアもあり、おもしろいですよね♪
嫌だと思いながらも、人にタカって飲んだくれていたり・・・など、
ところどころに、あ、こういう駄目なところ、わかる〜みたいな
人間臭さが、またいいですよ〜(^^)
宮部みゆきは「レベル7」が好きです♪ぜひお試しあれ♪

2007/8/10(金) 午前 0:35 ビール大好きあつぴ

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>gakiさん:あ〜、、、紛らわしくてすみません(笑)。確かに、太宰書評の三行目あたりまではそういうふうに読めますね(苦笑)。太宰のミステリーなんてあったら読んでみたいなぁ…。

2007/8/10(金) 午前 8:01 大三元

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>しろねこさん:そうですね、確かにそう言われてみるとそんな気がしてきます。遠藤周作の場合、純文学を書いてもユーモラスなエッセイを書いても「やっぱり遠藤周作じゃん」と思ってしまいますが(笑)。
しろねこさんは北森鴻がお好きなのですね。私はこの本に収録された短編しか読んだことがないので、次は単行本に挑戦してみたいです。

2007/8/10(金) 午前 8:08 大三元

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>mepoさん:太宰全集を一通りさらった後は、芥川全集をさらおうと思っています。しばしお待ちを…(笑)。しかし漱石も読まなくちゃいけないし、このあたりの多作な作家を読みこなすには相当の時間がかかりますね。太宰が『人間失格』ばかりでないことも、今回改めて感じました。

2007/8/10(金) 午前 8:14 大三元

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>mepoさん:太宰の場合、精神的に安定していた時期にユーモラスな作品が多くて、自殺を図った後、晩年になってくると『人間失格』や『斜陽』といった陰影に富んだ作品が多くなるような気がします。私は太宰については詳しく知らないのですが、晩年になってもユーモア小説を書くことができていたら…と思います。
その点、遠藤周作などは意識的にバランスをとっているタイプの作家ですね。

2007/8/10(金) 午前 8:21 大三元

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>あつぴさん:ようやく読み始めました。お待たせしました。おっしゃる通り、太宰の描く人間は実に人間っぽいというか、人くささがあっていいですね。全集で読んでいるので、晩年の作品はまだまだ先になるかと思いますが、気長に待ってください(笑)。
宮部みゆきは『レベル7』が面白いのですか。早速探してみます!

2007/8/10(金) 午前 8:24 大三元

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そうですね、坂口安吾も「不良少年とキリスト」というエッセイで、「最後まで作品上でのコメディアンであってほしかった」(←詳細な文章は忘れた!)というような文章がありました。太宰全集もちくま文庫で出てるんですね。うわ、買おうかどうか迷う〜。私も芥川全集が終わったら、梶井基次郎を経て、太宰に行こうかしら?夏目漱石は、まだ全部読む勇気が出ません(笑)。実は「坊ちゃん」読了してますが、感想の書きようがないのですよ…。

2007/8/12(日) 午前 2:19 mepo

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遠藤周作といえば、最近「あなたの中の秘密のあなた」というエッセイ集を読みました。それを読むと、彼は確かに意識的にバランスをとっている感じがしますね。「無意識に抑え込んでいる自分を解放しろ〜っ」て女性に叫んでいるようなエッセイでした。ちょっと身につまされる内容だったので、非公開で記事にしています(笑)。

2007/8/12(日) 午前 2:22 mepo

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>mepoさん:『不良少年とキリスト』は確か講談社文芸文庫ですよね。いつか読んでみたいと思っていた本です。太宰と安吾も仲が良かったのでしょうか?太宰全集は漱石全集や安吾全集、中島敦全集あたりと違って古本でも出回ってるので、古本屋を一通り回ってなかったら買う、という形でもいいと思います。何しろ巻数が多いですから、全部集めると5桁になっちゃいます。
漱石は…私もまだまだですね(苦笑)。一応『坊っちゃん』の書評は書いたのですが、どうも作品自体ではなく江藤淳の「解説」の書評みたいになっちゃいました(笑)。それがあって次の作品に手が出ないのですが、感想を書きにくい作家ですね、漱石って。

2007/8/12(日) 午前 4:20 大三元

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>mepoさん:遠藤周作は、『侍』以降は「日本におけるキリスト教」というテーマから次第に「心の深層/裏面」のようなテーマに関心を移したようです(ちなみにこの時期の代表作『スキャンダル』の解説は河合隼雄が書いています)。こっちのテーマで書いている著書も数多いのですが、どちらかというと女性向けに書いていると思われる作品が多く、正直あまりピンとこないものが多かったです。それだけに、mepoさんが身につまされたという記事が非常に気になるところです(←別に読ませてくれというプレッシャーではありませんよ笑)。

2007/8/12(日) 午前 4:26 大三元

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これを太宰入門の作品にするといいですね。
こんな面白いもの、滅多にありませんから。

2007/12/31(月) 午前 10:24 [ 遠い蒼空 ]

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>jyhs0114さん:確かに、この作品は滅法面白かったです。太宰にはこういったユーモアの効いた作品がいくつかありますが、これを読めば太宰=『人間失格』だと思っている人のイメージが変わるでしょうね。

2007/12/31(月) 午後 8:44 大三元


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