夏休みの読書には?──戦争を考える編世間は夏休みのようです。夏休みといえば読書感想文の課題なんかがあって、戦争に関する本を読む生徒も多いでしょう。 そういうのがなくても、8月15日付近にはきまってメディア総出の「あの戦争」特集の季節を迎えます。 もっとも今年はオリンピックの陰に隠れているようですが。 私も政治学、なかんずく日本政治外交史を学ぶ者として戦争関係の本は他人の何倍も読んできたつもりですが、一般の素人が読むべき本となると、推薦が難しい。問題は単純ではなく、非常にデリケートなものだからです。こういった歴史は、じっくり時間をかけて、ゆっくり紐解いていくのが、歴史に対する誠実な姿勢というものだと思っています。 それを承知で、敢えて入門書を挙げれば? というリストを、文庫・新書に限定して考えてみました。 戦争と言うといわゆる戦史を思い浮かべそうですが、当然まず学ばれるべきは、戦闘そのものよりも戦争を起こさないようにする努力のはずです。 太平洋戦争に至るまでの日本外交の概説として、入江昭『日本の外交』(中公新書)は、出版後40年以上経過した今もその輝きを失わない名著。何度読み返してもその文章には唸らされるし、歴史に対する姿勢は歴史家の鑑そのものです。今でもこの本を凌ぐ日本外交史入門は出ていないのではないかと思っています。 最近のものでは書評46:五百旗頭真『日米戦争と戦後日本』(講談社学術文庫)が読み易い。太平洋戦争前後に特化した概説書ですが、そのバランスのとれた歴史観には学ぶべきところが多いですね。 そもそも8月15日という日の記憶はメディアが捏造したのだ、という論争的な本が佐藤卓己『8月15日の神話』(ちくま新書)。戦争とは直接関係がないメディア史の研究書ですが、自明の歴史がいかに“創出”されるのかを実証的に明らかにした労作で、この季節に何の疑問もなく戦争を思い浮かべる人は目から鱗かもしれません。 ガクモンは苦手だという人は戦争文学から入るのも手ですが、小説となると安っぽい反戦文学が多く、信頼できる文学というのはほとんどありません。 しかし書評25:吉田満「戦艦大和ノ最期」その1/その2(ちくま学芸文庫)だけはすごい。全て文語体で若干読みにくいですが、逆にそれがリアリティをもって迫ってきます。安易に戦争は語れない、ということを実感できる本ではないでしょうか。 日本の戦争ではないですが、「戦艦大和ノ最期」と双璧を成す戦争文学が書評24:レマルク『西部戦線異状なし』(新潮文庫)。お涙頂戴の戦争映画を観る前に、この二冊を読んでみましょう。現実の戦争なんて、映画化できるものではないのです。 欧米のもので必ず挙げられるのはV.フランクル『夜と霧』(みすず書房)ですが、宗教色が強く個人的にはあまり感動というのはありませんでした。どちらかと言えばアンネ・フランク『アンネの日記』(文春文庫)の方が面白い。これはあまりにも有名な反戦文学ですが、私はこの作品はむしろ一人の少女の成長日記として非常に興味深いと思っています。70年前のドイツに、こんなにも理知的で、素晴らしい少女がいたとは!ということに感嘆し、そして彼女の命を奪ったものについても考えが至るわけです。 銃後の世界を扱った戦争ものでは、大岡昇平『野火』(新潮文庫)、『レイテ戦記』(中公文庫)や遠藤周作『海と毒薬』(新潮文庫)、さらには野坂昭如『火垂るの墓』(新潮文庫)などが有名ですが、個人的には短評7:遠藤周作『女の一生 二部・サチ子の場合』(新潮文庫)が好きです。単なる「泣ける話」で終わらせないのがやっぱり遠藤周作。 「戦争はある、というのが歴史の現実である」と喝破したのは、太平洋戦争の最中に平和主義を貫いたリベラリスト・南原繁でした。であるならば、反戦平和を唱える前に、まず戦争の現実を知る必要があるのでしょうね。
皆さんは、「この季節にこれを読む」という戦争モノはありますか? |
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はじめまして! 履歴からきました
「アンネの日記」好きです その頃 凝って アンネが書いた他のも買って読んでました
そこから 発展して ユダヤ人に興味が行き
いろんな本を読みあさっていたことがあります
その頃かな 映画で「シンドラーのリスト」が 公開されたのは
また 寄らせてくださいね
2008/8/17(日) 午後 6:45 [ - ]
>ゆきさん:初めまして、ご訪問&コメントありがとうございました。わたしも『アンネの日記』を読んだときは、「少女恐るべし」と思ったことを強く記憶しています。アンネの作品は他にもあるんですか?知りませんでした。チェックしておきます。
ユダヤ人問題も面白いですよね。戦争とはそれほど関係がありませんが、ユダヤ人問題を論じた最近の本では内田樹『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)が面白かったですよ。
よろしければまたお越し下さい!
2008/8/18(月) 午前 0:59
カズオ・イシグロの「僕らが孤児だった頃」「女たちの遠い夏」
BLOG休暇中ですが、こっそり覗いてるうちに耐え切れなくなってコメしてしまいました。
あと「朗読者」(ベルンハルト・シュリンク著)
もちろん『アンネの日記』も好きとか嫌いとかいうレベルを超えて大切な本です。
2008/8/18(月) 午後 3:44
開高健の“輝ける闇”とか、戦争モノと言えるか微妙ですが“玉、砕ける”とか、ですかね…
2008/8/18(月) 午後 9:01
>AKIKOさん:イシグロの作品は、次は『女たちの遠い夏』に挑戦しようと思っているので、楽しみです。シュリンクの『朗読者』も面白いらしいですね!AKIKOさんに薦められると、ますます読まないといけないような気がしてきました。これって戦争も関係あるんですね。
2008/8/21(木) 午前 0:06
>係長さん:『輝ける闇』も『玉、砕ける』も全然知らない作品でした。教えていただきありがとうございます。そもそも開高健自体読んだことのない作家なんですよね。面白いですか?チェックしてみます。
2008/8/21(木) 午前 0:08
『朗読者』は若い男の子が年上の女性に憧れるという「またか」みたいな書き出しですが、実はこの女性、無知と純粋さゆえにナチスの協力者であったという過去があり・・・
後は書かない方がいいですね。
2008/8/21(木) 午前 10:11
私などはやはり文学のほうが馴染みやすいですが、どうしてもフィクション入ってしまいますよね。とりあえず城山三郎の「落日燃ゆ」を読み終えましたが、大三元さんにご指摘いただいたように、美化されている部分もあるでしょうから、いろいろなものに触れて判断していきたいと思います。
明日から山崎豊子の「二つの祖国」を読み始めます。同じく山崎豊子の「大地の子」(長年の課題図書でありながら、まだ手つかずです)と迷ったのですが、この夏は「二つの祖国」で締めたいと思います。
2008/8/22(金) 午後 5:43
私は、フランクルの「夜と霧」を読んでかなり泣いた方です。
でも確かに、人それぞれに感じ方が違うと思います。私の場合、彼の書く文章がとても綺麗に映り(翻訳者も上手だったと思います)、読みながらフランクルという人の人間性の素晴らしさも伝わってきて、残酷な話でありながらも感動する場面が多かったです。上手く言い表せませんが^^;/そういえば「アンネの日記」小学生の時に、母から絶対に感動するからと言われて読んだのですが、あの頃はそこまで思えなかったです。今読んだら違うかも知れませんね。
「野火」や「海と毒薬」は手元に届いているのですが、まだ読めてなくて、今はちょっと戦争に関する小説は、なかなか読む気持ちになれなくて先延ばしにしています。最近読んだ、篠田節子の「レクイエム」という短編集も戦争が背景にあったのですが、これがちょっと衝撃的だったからかも知れません。
2008/8/23(土) 午前 8:09 [ ソフィー ]
こんばんは!
アンネの本わかりました?
たしか アンネがアメリカに行く話だったと思います
芸能人になる夢を持って
でも あれは彼女の創作なのか ほんとにアメリカに行ったかは不明です
もう 大分前なので 内容が少し違ってたらごめんなさい
でも テンポもよく 面白く読めたような印象があるんですが・・・
わたし 詩集も好きで 特に中原中也には一時期惹きつけられ
いろんな自伝を買っては 読みあさっていたことがあります
なにか 興味をそそられました
また その時期 テレビで 中原中也の物語があったんです
そのころ ブームっていうこともあったんでしょうね
本屋さんに行くと コーナーができてました
だらだらと書いてしまいました ごめんなさい
じゃ おやすみなさい!
2008/8/23(土) 午後 8:38 [ - ]
>AKIKOさん:なるほど、そういうつながりがあるんですね。以前、阿刀田高が『朗読者』を褒めていたのを読んでから気になっていたんです。今度書店で探してみます。
2008/8/25(月) 午前 0:25
>ぼやっとさん:『二つの祖国』って第二次大戦時の日系二世の話でしたっけ?私は読んだことないのですが、山崎豊子って結構信頼できるらしいという噂です。『大地の子』は随分実話に基づいているらしいですよ。読んだことがないので何とも言えませんが…。読了されたら感想をお待ちしております。
2008/8/25(月) 午前 0:31
>内緒さん:しかし随分たくさんの本を読まれたんですね!ポピュラーなものばかりといっても、最近は戦争文学など特に『戦艦大和ノ最期』と『女の一生』を読まれているというのはとても嬉しいです。前者は数少ない戦争文学の名著ですし、後者は私にとってバイブルのような大切な作品です。
2008/8/25(月) 午前 0:51
>内緒さん:今『マイナス・ゼロ』をアマゾンで検索したら、どうも歴史小説というよりSF作品のようなものなのでしょうか?それはそれで面白そうです。緻密な作品もいいですが、ぶっとんだ作品にも考えさせられる強烈さがあったりしますしね。これもチェックしておきます!
2008/8/25(月) 午前 1:03
>ソフィーさん:フランクルの本は、実は本編に入る前の解説でかなり体力を消耗してしまい、本編を読む(感じる)体力がなかった…というのが実情ですので、公平な評価にはなっていないかもしれません。
『アンネの日記』は私も小さい頃に読ませられた記憶があるのですが、大学に入ってから読み直して全く印象が変わりました。あれは反戦文学ではなく、一人の少女の成長日記なのです。それが理解できるようになるには、大人になってから読んだ方がいいということなのかもしれません。『野火』や『海と毒薬』も戦後文学で必ず挙げられる本ですが、個人的には考えさせられる点はあっても、「すごい!」と言えるところまでは感じませんでした…。大岡昇平なら『事件』、遠藤周作なら『沈黙』などの方が完成度は高いと思います。
篠田節子は最近ちょくちょく目にするようになった作家です。かなり独創的な作家みたいですね。衝撃的、というレビューはそこかしこで見ます。
2008/8/25(月) 午前 1:10
>ゆきさん:アンネの本、調べてみたんですがどうも見つかりません…。。。
おそらくアンネはアメリカに行ったことはなかったと思うので、あるとすれば完全な創作なのでしょう。アンネが作家になる夢を持っていたのは有名な話ですね。
中原中也は気になりつつも手を出していない詩人です。詩人て、どうもどこから手を出していいかわからない気がするんですよね…。オススメの作品があれば教えて下さい!それとも『中原中也詩集』みたいなものから入った方がいいのかな?
2008/8/25(月) 午前 1:13
こんばんは!
中原中也 しばらくぶりにこの人の名前を思い出したんですが
別の方のブログで 同じ日中也の詩が載せられていました
偶然って 時にはすごいと思いました
わたしは詩も大好きですが この人の自伝はとても関心があり
深く 深く知りたいうちに 気がついたらかなりの数の中也の事が
書かれてる本を買って読んでいました
いまでも残ってます
まあ 三角関係のお話なんです あまり関心がないかもしれませんね
それと赤川次郎にはまりこんでいたことあります
100冊以上は読みました ただ 友達は本にうちにははいらないと
ひどいこと言われたことあります
でも 好きでした
2008/8/25(月) 午後 9:48 [ - ]
>ゆきさん:赤川次郎は私も昔(小学生頃かな?)はまっていたことがあります。もうほとんど覚えていませんが…(笑)。
読書の楽しみ方は人それぞれですから、好きな本を好きなように読めばいいんですよね。またオススメの本など教えて下さい!
2008/8/26(火) 午前 0:50
>内緒さん:『二人のイーダ』は知りませんでした。調べてみると子ども向けの原爆本ということですが、表紙がちょっと怖いですね…。確かに「単なる子ども向け本」とは言えなそうです。『太陽の子』も読んだことはありませんが、有名な作品ですね。
上にも書きましたが、中原中也は読んだことがないのです。ということで、おっしゃるような小林秀雄との関係や三角関係のことも全く知りませんでした。私にとっては小林秀雄がそのような関係にあったことの方がむしろ驚きでしたが…(笑)。
機会があれば読んでみたいと思います!ご紹介ありがとうございました〜。
2008/8/28(木) 午前 3:59