読書のあしあと

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書評 いろいろ

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雑誌短評 『中央公論』2008年9月号

久しぶりに『中公』を買ったと思ったら、ブログの過去記事をみると昨年の同じ号(9月号)以来になるらしい。夏には良書が出ないのが定石になってしまっているが、総合雑誌の9月号は元気がいいのかもしれない。


短評20 松本健一×中島岳志「中国とインドは『近代の超克』の轍を踏むか」
今月号で特に面白かったのはアジア思想史研究のこの二人の対談。焦点はBRICsとして騒がれて久しい、今やアジアの大国となった中国とインドの、今後ますます膨張するであろうナショナリズムの行方である。

中島岳志の発言で面白かったのは、ナショナリズムには上からのナショナリズムと下からのナショナリズムがあり、近代アジアにおいて下からのナショナリズムは重要な役割を果たしたという指摘である。例えば日本では自由民権運動などがそれになるし(書評58:『明治デモクラシー』参照)、他のアジア諸国にとっては脱植民地化を達成する上でナショナリズムは不可欠の要素だった(134項)。
もう一つ重要なのは、反日ナショナリズムの過剰を、なぜ中国政府が恐れるのかについての説明。

「それはナショナリズムが平等な国民主権の要求を含んでいるからです。反日ナショナリズムが『国家は国民のもの』という主張と結びつき、それが独裁的な政府に対する批判になることを恐れている。」(中島、135項)

もちろん、ナショナリズムはこのように内側に対しては「おれたちはみんな一緒だ」という平等化、あるいは同一化の力学を働かせるが、外側に対しては「お前たちとは違う」という差異化が働くことになる。
その二つの力学が最悪の方向に向かってしまった結果を日本人は身をもって知ったのであって、この負の経験はこれから近代化の頂点に達する中国やインドに伝えていかねばならない(同じようなことは書評90:『日露戦争の世紀』などに書いた)。
…と思っていたら、対談の最後で二人が同じようなことを言っていた(笑)。

近代の超克を目指す二国の暴発をどうにか防がねばならないと思った例をもう一つ。松本健一が指摘していたことだが、東南アジア六ヶ国の最大の水源であるメコン川の源流に中国が五つもダムを作ったため、中国以外に流れる水流が以前の3分の1以下になってしまったという(136項)。こういった水資源の問題や、東シナ海の油田開発など、中国はますますやりたい放題になってきた。
こういう現実問題を通じて国際ルールをレクチャーしていくしか、当面の方策はないのかもしれない。


特集 この夏読みたい文庫100冊
最近の『中公』は読書案内が充実していて、買わない月も読書案内だけはチェックしている。
今月はミステリ、時代小説、SF、青春小説、官能小説、近現代史、紀行、ノンフィクションの10分野×10冊=100冊をそれぞれの専門家が紹介している。以下、気になった本を備忘録的にメモする。

ミステリでは今まで2冊読んだことがある宮部みゆき『火車』が気になる。これはこのブログでも何度かオススメのあったもので、北上次郎に言わせれば「宮部みゆきのベスト」らしい。
青春小説は池内紀が書いているが、あまり惹かれるものはなかった…(笑)。でも澁澤龍彦『高丘親王航海記』は読まないと。
近現代史は井上寿一が担当。既に読んだ本も多いが、SF作家の星新一『明治・父・アメリカ』という評伝を書いているのには驚いた。今まで知らなかったが、星新一って星一の息子なんですね。福沢諭吉『福翁自伝』も途中で読み止めたままになっているので、そろそろ再読したいところ。
ノンフィクションではマーク・ゲイン『ニッポン日記』杉山隆男『メディアの興亡も面白そうだ。個人的には、評者の武田徹の本も読みたいのだけれど。
 

閉じる コメント(4)

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>内緒さん:星新一の本は持っていませんが、『高丘親王航海記』の方は以前いただいたことがあるので、暇を見つけて手を伸ばしてみたいと思ってます。読んだらまた記事を書きますね。
本に埋もれてぼーっとできたらどんなに幸せでしょうねえ(笑)。

2008/9/2(火) 午前 0:24 大三元

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>内緒さん:私にとってSFは全く未知の世界なんですよ(笑)。今まで生きてきてそういうジャンルと関わったことがなかったので、何かのきっかけがあれば読むのかもしれませんが、今まで幸か不幸か巡り合わず…という感じです。
こうしてこれからの読書の課題を記事として掲げるのは、自分に対するプレッシャーの意味もあるんですが、こうやって他の方にプレッシャーをいただくと尚更ですね。精進します(笑)。

2008/9/4(木) 午後 11:36 大三元

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最近すっかり活字離れになっていたのでちょうどいい刺激になりました。中国のナショナリズムをコントロールする日本の外交政策。日本の場合、日米安保がある限り、平和的経済外交の中での選択肢をとるしかありませんよね。それよりロシアの動きが大変なコトになりましたね。これから、また冷戦構造関係の著述が増えそうですね。新ジャンルの紹介期待大です!

2008/9/7(日) 午後 1:45 コウジ

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>コウジさん:最近よく思うんですが、中国は何だかんだ言っても情報はたくさん入ってきますよね(ポジティブなものもネガティブなものも)。それに比べてロシアやインドあたりの情報は全くありません。中国のインパクトに対する日本の反応は両極端で、いずれ真ん中に近づくのかもしれませんが、ロシアなんかは何を考えてるか全くわかりませんね。
外交史に関しては、最近1970年代周辺の研究が続々出てきていますので、近いうちにフォローしたいです。お楽しみに!

2008/9/12(金) 午前 0:41 大三元


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