書評148 モーパッサン『モーパッサン短篇選』(岩波文庫、2002年)傑作短篇書評125:「雨」の作者、サマセット・モームをして「最大の短編小説家」と言わしめたモーパッサン。昔、小中学校の教科書か何かで読んだことがあるような気がするが、全く覚えていないので読んでみた。【著者紹介】 Henri René Albert Guy de Maupassant (1850─1893年) フランスの詩人、小説家、劇作家。 ノルマンディー出身。母親の友人フローベールに師事し、文学を志した。普仏戦争で軍役に就いた後、役人生活の傍ら小説を執筆。彼の独特の文章はリアリティにあふれ、日本でもよく読まれている。 おもな作品に『女の一生』(1883年)、『死のごとく強し』(1889年)など。 【本書の内容】 鋭い観察力に支えられた、的確で抑制のきいた描写、余韻をたたえた味わい深い結末。モーパッサン(一八五〇‐一八九三)は、十九世紀フランス文学を代表する短篇小説の名手で、実に三百篇以上にも及ぶ短篇を書いた。その数ある作品の中から厳選に厳選を重ねた十五篇を収録。新訳。 お薦め度:★★☆☆☆ 【本書の感想】 一篇が20ページほどの短い作品が並ぶ。あらすじとしては、貧しい家庭や私生児といった19世紀フランスの庶民的な物語が多いのが印象的。中でも特に印象に残ったのは「椅子直しの女」と「シモンのパパ」、「田園秘話」である。 「椅子直しの女」は貧しい女性の純愛を語り草にしたもの。かわいそうな女の人生がかわいそうなまま終わったことを描いた物語は、どこか遠藤周作の短篇にも通じる。 「シモンのパパ」は有名な作品で、私もどこかで読んだことがある。読み直してみて確かにいい作品だと思った。私生児であるがためにいじめられるシモンが頑張る、という単純なストーリーだが、記憶に残る物語である。 「田園秘話」も同じく貧しい家庭の話だが、もともこもないバッド・エンドで終わるところが特徴的だ。親としては、最後の台詞なんかを言われた日にはもうやりきれないんだろうなぁ。 全体としてはかわいそうな話がほとんどで、貧しいなりにも幸せになったり、救いのないまま終わったり、耐え切れず逆上したりする。そういったそれぞれの人生の一端を垣間見れるのが、短篇集の面白さだろう。
寒い夜に布団で読むにはちょうどいい一冊。 |
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フランス自然主義文学としては私はゾラがこの上もなく好きだったけど「女の一生」「脂肪の塊」など、モーパッサはいまいち乗り切れませんでした。短編の方が面白かったと思います。子供に寝物語として「外国のお話」を聞かせていた時は大抵モーパッサンかオーヘンリの作品でしたね。
2009/1/21(水) 午前 0:53 [ kohrya ]
奇遇ですね。先ほど、「モーム短編選」をアップしたばかりで、モーパッサンの短編に挑戦したいと書いたところです。この文庫本、字が小さくありませんか?小さい活字は苦手でして(笑)。
2009/1/21(水) 午前 1:15
フランス文学はカミュとコクトーをちょっと読んだだけですが、重たくて深いですよね。でもカミュは好きです。この記事を読んで、モーパッサンを読んでみたくなりました。
2009/1/22(木) 午前 7:44 [ ソフィー ]
これまた子供時代に全集に入っていたのを読んだ程度なんですが、
「シモンのパパ」と「首飾り」は印象的でした。
特に「首飾り」。虚栄は身を滅ぼすなぁと子供心に思ったものです。
モーパッサンはなんかホントに庶民的なんですよね、そのあたりが魅力なのかもしれませんね。
2009/1/22(木) 午後 5:35
>こーりゃさん:私の先輩が『女の一生』を強く薦めていたので一応買ったのですが、まだ積読状態です。こういうタイプの作家は、長篇より短篇の方が面白そうですね。
2009/1/24(土) 午後 2:37
>内緒さん:モーパッサンの短篇集は新潮文庫でも出ているんですか?知りませんでした。
…と、調べてみたら、ありました、ありました。結構古いんですね。こりゃあふらふらと書店を探しているだけじゃあ見つからないかも。今度注意してリサーチしてみます。情報ありがとうございました。
2009/1/24(土) 午後 2:40
>genteelさん:そうなんですか、本当に奇遇ですね(笑)。モームは「雨」以来読んでいないのですが、昨年行方訳が岩波文庫で出たということで注目していました。今年古本で手に入らないかな〜と思っています。
この短篇選は2002年の改訳なので、字はわりと大きくなっていますので、安心して下さい。
2009/1/24(土) 午後 2:43
>ソフィーさん:カミュはいいですよね。コクトーは読んだことがないんですけれど。どちらかというと私にはフランス文学よりイギリス文学が合うようなんですが、それでもこういった名作には何らかの魅力を感じることが多いです。好きではなくても何か残るものがあるというか。
2009/1/24(土) 午後 2:45
>はざくらさん:「首飾り」も本書に収録されています。有名な短篇ですね。子供全集か何かで読んだことがあっても、こうやった大人になってから読むとまた新鮮でいいものですね。
2009/1/24(土) 午後 2:47
モームは好きで若いころ沢山読みましたがモーパッサンまで手が回らず(笑)今日まできました。時間を作って読んでみようかな。
現在は『メディチ家の人々』と『フィレンツェ名門貴族の処世術』を読んでいますが忙しすぎて暫く本を閉じた状態です。
早くゆっくり読みたいです。
2009/1/24(土) 午後 11:49 [ pipimyucogen ]
寒い夜の布団で、モーパッサンを読む…かっこ良すぎます、大三元さん!(え?大三元さんが布団の中で読んでたんじゃないんですか?笑)モーパッサンは、実は読んだことありません。同じく「女の一生」や「脂肪のかたまり」は積読本としてはあるのですが。最近、外国文学はとんとご無沙汰なので、モームやモーパッサンあたりから少しずつ読んでみようかな?
2009/1/25(日) 午前 8:25
「女の一生」、面白かったと記憶しています(笑)ずい分前だったので、細部を忘れてしまっていますが^^;表紙、モネですね。いいですよね^^
2009/1/25(日) 午前 9:13
>Cafeさん:初めまして、コメントありがとうございます。
『メディチ家の人々』面白そうですね。最近マキャヴェリを読み直していて、ヨーロッパ史をもう一度勉強し直したくなりました。読了されたらまた感想をお聞かせ下さい。
2009/1/27(火) 午後 10:19
>mepoさん:ええ、布団の中で読みました(笑)。布団から出てる手が寒かったです。
モーパッサンは、私も記憶のある中では初めての読書になりました。モームが「最大の短篇作家」と呼ぶだけあって、技巧を凝らしたものあり、ほろりとさせられるものあり、短篇の面白さを楽しめます。
2009/1/27(火) 午後 10:35
>きいちごさん:あら、そうですか(笑)。偏見、食わず嫌いはいけませんねぇ。ともかく読んでみることにします。
表紙に注目されるとはさすが!奇遇にも今きいちごさんのブログで話題になっているモネです。岩波はこういうところのセンスはいいですね。
2009/1/27(火) 午後 10:42
こんばんわ。
「お気に入り」登録頂き有難うございます。
モーパッサンの短篇集は以前読んだことあります。
なかでも「オルラ」は訳の解らない恐さでびっくり・・・
作者はもしかして精神異常なのではないかと
思ったくらいです。
2010/5/3(月) 午後 9:22 [ 名無しの権兵衛 ]
>リッチーさん:お返事遅れました。
モーパッサンは下層階級の悲喜劇を書くのが上手いですね。
「オルラ」は記憶に残っていないんですが、機会があれば再読したいと思います。岩波に入っていない短篇も読んでみたいです。
2010/5/6(木) 午後 11:04
再度お邪魔します・・・
まだ短篇集は読み終えていませんが、
巻頭を飾る「水の上」がとても怖いお話・・・
オーヘンリーは理想主義で
どことなく人工臭がつきまといますが
モーパッサンは現実的・悲観的で・・・
人生はコレほど悲惨ではないだろうと
思わせられます(^^;)
2011/11/2(水) 午前 9:08 [ 名無しの権兵衛 ]
>リッチーさん:モーパッサンは現実的という評価がありますが、個人的には感情移入できないというか頭にすんなり入ってこない作品が多かったような印象です。おっしゃる通り「現実はこんなに悲惨ではない」ということなのかもしれません。
2011/11/4(金) 午前 5:14