読書のあしあと

訳あってしばらく閉店します。

読書を語ろう!

[ リスト ]

「2009年・この3冊」展望

毎年この時期になると、各新聞や雑誌で「今年の3冊」といった特集が組まれます。
世間の流行にとらわれず我が読書道を行く私にとって、幅広い分野に目を開くいい機会なので、毎年できるだけチェックするようにしています。

今年の更新の締めくくりとして、各紙で取り上げられていたものから気になったものをピックアップしておきましょう。


─────………・・・・・・・ ・ ・ ・  ・  ・


まず人文・社会科学関係です。

政治学関係では、苅部直が挙げた佐々木毅『政治の精神』(岩波新書)は現代政治学の第一人者のエッセンスが凝縮されてそうです。こういう新書が出てくれると嬉しいですね。

国際政治学で挙げられているものは少ないのですが、ジェームズ・メイヨール『世界政治』(勁草書房)は必読でしょう。

未だに経済恐慌の傷跡が世界を覆う中、土居丈朗と岩間陽子が「歴史から現在を鳥瞰する視点」として挙げたのが猪木武徳『戦後世界経済史』(中公新書)。昨年の堂目卓生『アダム・スミス』(中公新書)もそうでしたが、こんな時こそ歴史に学ぶべきでしょう。

佐藤俊樹『意味とシステム』(勁草書房)は佐藤俊樹の久しぶりの新刊にしてルーマンをめぐる本格的な研究。これは楽しみ。

他にも養老猛司が「骨太の日本論」として挙げた内田樹『日本辺境論』(新潮新書)や山崎正和が共感したという秋山聰『聖遺物崇敬の心性史』(講談社選書メチェ)も要チェック。

鷲田清一『噛み切れない想い』(角川学芸出版)は、このブログでも何冊か取り上げた鷲田の新刊。書評93:『「待つ」ということ』の「その後」を読めるようです。

さらに「この3冊」で挙げられていなかった中から2冊。
以前から好きだったアラブ研究者池内恵が09年度のサントリー学芸賞を受賞しました。『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書)以来彼の単著は読んでいないので、最新刊『中東 危機の震源を読む』(新潮選書)をフォローしておきたいと思っています。

敬愛するイギリス外交史家細谷雄一の待望の新刊、『倫理的な戦争』(慶應義塾大学出版会)は見逃せない。ブレアは個人的にも好きな政治家だし、イラク戦争時の彼の苦悩は21世紀の国際政治を考える上で根本的な問いかけを孕んでいると思います。


続いて日本文学関係。小説は基本的に文庫しか買わないんですが、一応メモしておきます。

今年最大のエポックは何と言っても村上春樹『1Q84』(新潮社)でしょうね。丸谷才一など複数人が挙げています。私は敢えて避けてきた村上春樹、これが文庫化されたら手をつけてみてもいいかな。

辻原登『許されざる者』(毎日新聞社)は湯川豊をして「魔術的と言えるほど筋の運び方がうまい」と言わしめた長篇。小倉紀蔵も「司馬がポジならこれはネガ」と賞賛。まだ読んだことのない作家さんなので、これじゃなくても何か一冊読んでみたいものです。

綿矢りさが挙げた山田詠美『学問』(新潮社)も気になります。書評130:『風味絶佳』がよかったので文庫化を楽しみにしておきましょう。

古井由吉『人生の色気』(新潮社)は知りませんでしたが、堀江敏幸の「わからないままに歩いて、続かなくなったら立ち止まり、来るべき言葉を、焦らず粘って、待つ」という紹介文は、この作品の魅力と同時に堀江自身の人生哲学も表しているでしょうね。


最後に海外文学を見てみましょう。

今年刊行された中で一番気になっているのはリュドミラ・ウリツカヤ『通訳ダニエル・シュタイン』(新潮クレスト・ブックス)です。書評103:『ソーネチカ』のウリツカヤの力作長篇で、沼野充義によれば「民族や宗教を超える人間性を見事に描いた」とのこと。質の高さは間違いないと思うんですが、問題は文庫になる可能性が低いこと。上下巻の単行本を買うか迷うところです。

光文社古典新訳文庫を筆頭に、今年も古典の新訳が活発でした。カフカ『訴訟』(光文社古典新訳文庫)は「落語に通じるものがある」とのこと、軽快なカフカなんて読んだことないので気になります。

サントリー学芸賞を受賞した『荷風へ、ようこそ』(慶應義塾大学出版会)も気になる持田叙子と阿刀田高が挙げたのは、ジェイムズ・ジョイス『若い藝術家の肖像』丸谷才一訳(集英社)でした。丸谷の訳でこれが読めるなんて!でもその内集英社文庫ヘリテージに入るのを待ちます。

鴻巣友季子は、王室風刺のイギリス文学アラン・ベネット『やんごとなき読者』(白水社)を挙げています。これは刊行時から面白くないはずがないと思っているのですが、文庫化されないんだろうなぁ。


─────………・・・・・・・ ・ ・ ・  ・  ・


これが今年最後の記事更新になります。
今年もこのブログを通じて多くの方との出会いがあり、たくさん刺激を受けることができました。改めてありがとうございました。
かたや古くからのブロガーさんの中には、更新がなくなる方が増えてきました。しかしそれはそれで、実生活の充実を謳歌されていることと想像しています。
私もいつまで続くかわかりませんが、皆さんの励ましをいただきながら細く長く続けていきたいと思っています。

それでは皆さま、良い年をお迎え下さい。
 

閉じる コメント(14)

アバター

大三元さんとは今年も沢山交流させていただきました。
ありがとうございました!
来年も変わらぬお付き合いができれば幸いです。
良いお年を!

佐々木毅の『政治の精神』は非常に読み応えがあり、現在再読中です(今年中の記事は間に合わないですけどね(笑))。

2009/12/28(月) 午前 2:43 KING王

顔アイコン

村上春樹の「1Q84」は私も文庫待ちです。山田詠美の「学問」は知りませんでしたが、どんな話なんでしょうね。ウリツカヤの「通訳ダニエル・シュタイン」も興味深いですが、そういえば「ソーネチカ」も文庫化されていないですね。
今年も素敵な本を教えていただいたり、記事とも呼べないような独り言にコメントいただいたり、ありがとうございました。良いお年をお迎えください。

2009/12/28(月) 午後 9:57 ぼやっと

顔アイコン

大三元さんの今年のベスト特集、すべてプリントアウトしてじっくり参考にさせてもらいます^^)
オーッ さすがのアクセス数ですネ。

2009/12/28(月) 午後 11:07 [ pilopilo3658 ]

顔アイコン

リュドミラ・ウリツカヤの『通訳ダニエル・シュタイン』
読むのが楽しみですよね*

また来年もよろしくお願いします☆

2009/12/29(火) 午後 2:04 mie**tro*e

顔アイコン

>KING王さん:『政治の精神』読了されたのですね!是非KING王さんの感想を読んでみたいものです。私は古本で出回るのを待っているんですが、さすがに全然見ませんね(笑)。
今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。

2009/12/29(火) 午後 6:26 大三元

顔アイコン

>ぼやっとさん:私は小説は基本的に文庫しか読みませんので、昨今の海外文学ブーム(特に新潮クレスト・ブックス)で文庫が出ないと非常に困るんですよね。最近は我慢しきれずハードカバーに手を出すことが多くなってきましたが…。『学問』は青春小説っぽいのですが、『風味絶佳』以来の山田詠美ワールドを楽しみたいと思っています。
古くからの馴染みのブログの更新がなくなる中、ぼやっとさんとは長いお付き合いを続けていただきありがたく思っています。来年もよろしくお願いしますね。

2009/12/29(火) 午後 6:30 大三元

顔アイコン

>あおちゃんさん:プリントアウトしていただけるなんて…ありがとうございます!自分で文章を書くからには、そんな記事を書きたいですねぇ。
アクセス数、そんなにすごかったんですか…?

2009/12/29(火) 午後 6:35 大三元

顔アイコン

>mielさん:私も、『通訳ダニエル・シュタイン』を読むのを楽しみにしています。問題は文庫化されるかどうか…。
今年はmielさんとお知り合いになることができ、とても良い一年でした。来年もよろしくお願いします!

2009/12/29(火) 午後 7:08 大三元

顔アイコン

昨日、ソーネチカを読みました。ご紹介ありがとう。
来年もよろしくお願いします。良いお年を!!

2009/12/31(木) 午後 1:38 [ pilopilo3658 ]

顔アイコン

>あおちゃんさん:『ソーネチカ』お読みになりましたか!とても嬉しいです。でもあおちゃんさんにはちょっと悲しすぎたでしょうか?以前『わたしを離さないで』にもそのような感想をいただいたような記憶がありますので…。
私の場合、ああいう悲しい物語の中にも幸福を発見して感動してしまうタチなんですよね。

2009/12/31(木) 午後 3:40 大三元

顔アイコン

大三元様
”ソーネチカ”は哀しくはなかったです。現代人は自我が強すぎて幸せ感が得られないのだ、と思います。時間が出来たら感想文アップします。

2010/1/3(日) 午後 5:48 [ pilopilo3658 ]

顔アイコン

>あおちゃんさん:そうですか、ちょっと安心しました。また感想記事を読ませていただけるのを楽しみにしていますね。

2010/1/4(月) 午前 1:21 大三元

えっ、大三元さん、村上春樹お嫌いでしたか。
「世界の終わり・ハードボイルドワンダーランド」なんかは、なかなかの読み応えですよ。
『1Q84』はボクも是非読んでみたい1冊です。

2010/1/6(水) 午後 8:19 オブ兵部

顔アイコン

>オブ兵部さん:嫌いというか、食わず嫌いというか、かじり読み嫌いですね。学生時代に初期の作品を読んで、あの独特の、80年代バブルを引きずったようなキザな文章に拒否反応を起こしました(笑)。
でも、今読んだら印象が違うかもしれません。

2010/1/7(木) 午前 0:11 大三元


.
大三元
大三元
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について

ブログバナー

検索 検索
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

過去の記事一覧

読書を楽しむ

日々を楽しむ

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫
数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事