書評190 宮崎哲弥
『映画365本――DVDで世界を読む』
(朝日新書、2009年)
ミヤテツの本を読むのは久しぶり。最近チェックしてなかったけど、相変わらずのペースで本を量産しているようだ。
今回取り上げるのはTSUTAYAオンラインに連載された映画レヴューを集めたもの。
【著者紹介】
みやざき・てつや (1962年―) 評論家。
慶応義塾大学文学部社会学科卒、同大学法学部法律学科中退。90年代に入って執筆活動を開始。政治哲学、宗教思想を主領域とする評論を発表。テレビのコメンテーターやラジオ・パーソナリティーもつとめる。
主著に『正義の見方』(洋泉社、1996年)、『新書365日』(朝日新書、2006年)など、共著に『M2:ナショナリズムの作法』(インフォバーン、2007年)、『罪と罰』(イースト・プレス、2009年など多数。
【目次】
第1章 政治
第2章 メディア
第3章 法と秩序
第4章 文化と歴史
第5章 生と死
第6章 宗教と思想
第7章 倫理と社会
第8章 特別編―オールタイムベスト50
【本書の内容】
世界を知る、トレンドを見る未来を読む――映画は最高の教科書だ!政治、経済、メディア、宗教、人種、科学、国際関係から哲学・思想に至るまで、ハリウッド映画を題材に、ラジカルに変化する21世紀を見定める教養エッセイ。(カバー紹介より)
【本書の感想】
年間300本以上観るという宮崎哲弥が「自分は映画通ではない」と割り切って、「面白くてためになる映画」を紹介する、というコンセプトの本。
要するに映像芸術としてではなく、徹底的に「娯楽として、教養として」良い映画は何か、という判断基準でレヴューされている。
そうであればこそ、各レヴューについている出演俳優についての薀蓄(この俳優は以前あの映画に出て…というやつ)なんかはいらなかったのではないかと思った。そのために教養的解説のページが少なくなっていて、若干物足りない後味が残る。
ただ普段あまり観ないハリウッド映画の中から興味のある作品を知ることができたのはよかった。
以下、本書の中で特に気になった作品を列挙しておく。
『幸せのレシピ』
ドイツ映画『マーサの幸せレシピ』のハリウッド版リメイク作品。食いしん坊にとって、食をテーマにした映画はたまらない。ドイツ版とどっちが面白いんだろうか。
『レミーの美味しいレストラン』
健全なアメリカ映画の中でも一際健全なディズニーのアニメ作品。これも食がテーマになっているが、なかなか奥が深いのだという。楽しみである。
『パヒューム ある人殺しの物語』
「人類に二人といない」と言われた優れた嗅覚を使った香水の調合師グルヌイユ。世界で最も芳しい香りを保存するという夢を持った彼は、やがて猟奇的殺人犯となっていって…。
ミヤテツが「掛け値なしの名画」と絶賛するヨーロッパ映画。
キンゼイは、性道徳には確かに生物学的な根拠はないものの、これを完全に欠いたとき、人間の自我や社会は容易に崩れてしまうものだという賢慮に、最後の最後まで辿りつけなかった。(137項)
鋭い批評である。
お世話になっているブロガーさんの紹介とともに、映画チョイスの参考にしたい。
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この記事で、宮崎氏が私の後輩であることを初めて知りました!!
誰のゼミだったんだろう・・・って大昔のはなしでカンケイないか。
この方、私と趣味合いそうにありません(笑)
”幸せのレシピ”はもちろんドイツ映画の方がずっとイイです。
ていうか、ハリウッドリメイクは全部おもしろくない!(もとの作品を観たあとで観るととくにね)
トム・クルーズで当たりをとった”バニラスカイ”だって、もとのスペイン映画のほうがずっとずっと面白かった!
「パヒューム・・・」も醜悪だと思うな。
2010/2/18(木) 午後 9:09 [ pilopilo3658 ]
>あおちゃんさん:あおちゃんさんは慶應ガールでしたか、ミヤテツは文学部を一度卒業して法学部に入り直したという変り種です。
そもそもミヤテツは、映画を“社会科の教科書”として使うような目的で観てますので、芸術作品として楽しみたい人には向いていないかもしれません。かく言う私もあまり惹かれない作品が多かったのも事実で、やはり映画は作品として楽しみ、政治経済や宗教文化は書物から吸収したいですね。
2010/2/19(金) 午前 0:03
全面的に賛成!です、ハイ。
2010/2/19(金) 午前 10:00 [ pilopilo3658 ]
こんな評論家がいたのですね。
たまに映画でもとおもってレンタル屋に寄るのですがいつも手ブラでなので、一度こんな紹介本を読むべきですが、紹介だけで納得しそうですよ(笑)
2010/2/19(金) 午後 4:41
>あおちゃんさん:映画や本に求めるものも人それぞれですね。もっとも、ミヤテツ自体は好きな評論家なので、今後とも著作を追いかけていこうと思います。
2010/2/21(日) 午後 10:31
>CAVEさん:映画の好みもそれぞれですから、こういったレヴュー本は自分が信頼できる人が書いたものを読むのが一番だと思います。宮崎哲弥自体はここ数年テレビにも出ている評論家ですが、なかなかマトモですよ。
2010/2/21(日) 午後 10:37
ミヤテツは、ワイドショーや討論番組でアツく文句を言っているイメージしかないのですが、映画の評論もしているのですか。
映画を“社会科の教科書”として云々というのは、いかにも彼らしい(笑)
2010/2/27(土) 午後 3:44
>オブ兵部さん:ミヤテツ、ご存知でしたか。私は学生時代から彼のことは知っているのですが、なかなか面白いですよね。映画評論の本は初めてだと思いますが、彼の本領はやはりジャーナリズムとアカデミズムを架橋する言論にあるでしょうね。
2010/2/28(日) 午後 10:10
宮崎さん、以前インターネットテレビで浅草キッドの水道橋博士と番組やってたんですよね。それが、とっても面白くて、鋭くて、感心していました。こんな本も出してるんですね〜。宮崎さん、1日に7冊の本を読むって聞いて、驚きました。今時の知識層は、それぐらい当たり前なのでしょうか??
2010/3/4(木) 午後 11:59
この本は面白かったですね〜
紹介している視点が楽しめました。
著者の方はいろいろなことに精通なさっているんですね。映画評論家の本ではなく、違った面から観た映画紹介だからこそ新鮮に映ったのかも(笑)。
以前コメントも戴いてますし、簡単な記事ですがTBさせてくださいね。
2010/3/5(金) 午後 11:12
>mepoさん:水道橋博士との番組は私も何度か見ました。もっと続けばよかったんですが…。
ミヤテツの場合、この本と同じく「本や映画は手段である」というスタンスで読んだり観たりしていますから、作品としてそれ自体を楽しんではいないはずです。だから彼の場合飛ばし読みや早送りができるし、それでいいんですよね。
よく速読術とか言いますが、速読自体に価値があるかというと疑問です。一生モノの感動本を速読したらもったいないと思いませんか?
2010/3/6(土) 午前 11:57
>Choroさん:トラバありがとうございました!
私は評論家としてのミヤテツは好きなのですが、この本のスタンスはちょっと中途半端でしたね。「娯楽として、教養として」映画を選ぶのであれば、薀蓄は要らなかったように思うのですが…。映画のチョイスも私の趣味とはあまり合わなかったように思えました。
2010/3/6(土) 午前 11:58
大三元さん、ミランカの宮崎さんと水道橋博士の番組は終わってしまったのですが、別のところで二人と同じスタッフで番組をやっているはずです。ご、ごめんなさい、どこででだったか、今は忘れました(汗)。思い出したら、またコメントしにきますね〜。
2010/3/6(土) 午後 9:22
>mepoさん:そうなんですか、知りませんでした。私もちょっと調べてみます。情報ありがとうございます!
2010/3/6(土) 午後 10:27
思い出しました。MXテレビ「博士の異常な鼎談」です。念のため、公式HPはこちらです→http://www.hakase-teidan.com/
2010/3/10(水) 午前 1:14
>mepoさん:おっ、さすが〜!ありがとうございます。
早速覗いてみましたが、隔週なんですね。しかも木曜深夜…忘れそうな(笑)。今週は月の2週目だから放送されるのかな。
2010/3/10(水) 午前 1:36