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【著者紹介】 まつうら・れい (1931年―) 歴史学者。専門は、日本近代政治史、政治思想史。 京都大学在学中の1953年、荒神橋事件などの混乱の責任者とされ、大学当局による放学処分。その後立命館大学大学院を修了、桃山学院大学教授などを歴任。横井小楠および勝海舟の研究者として高い評価を受ける。 主著に『勝海舟』(中公新書、1968年)、『徳川慶喜』(中公新書、1975年)、『横井小楠』(朝日新聞社、1976年)、『明治の海舟とアジア』(岩波書店、1987年)、『新選組』(岩波新書、2003年)など多数。 【目次】 第1章 第一次脱藩まで 第2章 勝麟太郎の客分に 第3章 薩長密約を仲介 第4章 社中から海援隊へ 第5章 新国家構想なかば、京に死す 【本書の内容】 疾風怒涛の幕末、時代の変革をめざして東奔西走しながら、三二歳、志半ばで暗殺された坂本龍馬。勝海舟、西郷隆盛、木戸孝允、松平春嶽らとの政局をめぐる交渉の中で、龍馬はどのように行動したのか。また、巨艦を持つことを夢見た海援隊の実態はどうだったのか。龍馬の書簡等基本史料を丁寧に読み解きながら、その実像に迫る。 お薦め度:★★☆☆☆ 【本書の感想】 うーん、これはひどい。 歴史研究としての評価以前に、新書として失敗と言わざるを得ない。 歴史の研究は一次史料に忠実であるべきだし、その典拠は示すべきだけれども、著者の姿勢は書誌学的マニアックさに傾いており、全編に及んで読みにくい。新書というより、単行本の註ページを延々と読んでいる感覚に襲われた。 要するに、研究の焦点が曖昧なまま、読者は意味がよくわからない史実の海に放り込まれるのである。 例えば、「龍馬が京都に着いたのは10月13日なのか14日なのか確固たる史料はないけれども、誰それの書簡によれば13日の可能性が高いが、これは史料として怪しく…」といったようなくだり。 13日なのか14日なのかという問題が、龍馬の人生にとって、あるいは日本近代史にとってどのような意味があるかは論じられない。つまり著者の関心は純粋に史実の確定なのだ。 「はじめに」から「おわりに」まで一本調子に史実を並べられて、「まだ書きたいほどが山ほどある」と言われても…。。。 これでは新書の読者層はたまったものではない。 このブログでは、あまり感銘を受けなかった著作でも、自分の意見と違う部分を取り上げて批判したり、できるだけ真摯に書評してきたつもりだが、本書に関しては引用する部分を思いつかない。なぜなら、この本の力点がわからないから。 こうなると、坂本龍馬についてはマリアス・ジャンセン『坂本龍馬と明治維新』あたりを読まないと駄目かなぁ。
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書評 近代日本
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ありがとうございます。これで読む本が一冊減りました(^_^;)。
書評なんてあくまで個人的見解なんですからこんなのも有りだと思います。
2010/5/21(金) 午前 0:48 [ kohrya ]
そうですか、龍馬の本と聞いて期待したんですが、だめそうですね。
史料解読や史実の各論にこだわり過ぎて、研究者の自己満足に終わっている本というのは残念ながらよくありますね。
そういうヒトは研究をしていれば良いのであって、本を書いたり、もっと言わせてもらうと大学で教えたりしちゃいかんのです!そういうヒトたちはせま〜い研究者たちだけの世界で言わば職人としてお仕事しておいていただきたい!研究自体を否定するものではないですが、
本を愛する者としては、こういうヒトたちにままあたってしまうのはとても不愉快です!(勝手に熱くなってすみません)
でもこの学者さん、どうやらいっぱい新書を出しているようですね。他にはもう少しましなのがあるのか・・・まあ、あまり期待できないでしょうし、私は試してみることはないと思います(笑)
2010/5/21(金) 午後 7:17 [ るみ ]
つまり、『坂本龍馬と明治維新』がお勧めなんですね。
2010/5/21(金) 午後 7:46
>こーりゃさん:そうですね、この本を肯定的に評価している人はよほどの史実マニアなんだと思います。
2010/5/22(土) 午後 11:04
>るみさん:松浦玲はその道ではかなり評価されている研究者なので、私も楽しみにしていましたが、こういう本を書くとは思いませんでしたねえ。
私は歴史研究が大好きですし、データベース的な研究を否定はしませんが、新書でやることではないと思います。だいたい、史実をもって語らせるタイプの歴史家でも、「語らせる」内容があるはずなのですが、本書からはそれが感じられませんでした。残念です。
2010/5/22(土) 午後 11:09
>AKIKOさん:実は『坂本龍馬と明治維新』はチラ読みしかしたことがないのですが、評価の高い古典ですし、期待しています。
2010/5/22(土) 午後 11:11
これはだめでしたか。
私歴史小説は好きなのに史実には興味が湧かないのですよ、きっと歴史を物語の一部として捕らえているかも(笑)
今年は司馬遼太郎の未読本を読んでいますが、作品にかなり波があることに気がつきました。人気作家の場合傑作だけを生み出すのは無理みたいですね。
2010/5/24(月) 午後 9:33
>CAVEさん:フランス語では「歴史」と「物語」はともに“histoire(イストワール)”という単語であることが示すように、歴史は歴史家が書いた時点で真に客観的な事実だけを叙述したものにはなりえません。
度をわきまえて読めば、歴史小説もそれなりに示唆するところの大きい作品もたくさんあります。
司馬作品にもむらがあるのは確かですが、やはり偉大な歴史小説家であったことは紛れもない事実でしょうね。
2010/5/24(月) 午後 11:20
井沢元彦氏によれば、歴史学者って一番信用ならんと。
いつも固定観念や過去の歴史書に囚われて
ダイナミックに真実を探り当てられんと。
2010/6/1(火) 午後 10:03 [ pilopilo3658 ]
>あおちゃんさん:全ての歴史学者がそうではないと思いますが…(笑)
しかし固定観念というのは人間誰しも持っているものですから、歴史学者も無縁ではないのでしょう。
2010/6/1(火) 午後 10:38
>内緒さん:グラバーがフリーメイソンだったという証拠は未だに実証されていませんから、龍馬がフリーメイソンとかかわりがあったというのもまだ伝説の類と言うべきでしょうね。
2010/6/5(土) 午後 2:28