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書評 日本文学

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書評206 恩田陸

『エンド・ゲーム――常野物語』

(集英社文庫、2009年)

書評151:『光の帝国』書評186:『蒲公英草紙』と続いてきた「常野物語」シリーズ第三弾。
本書は謎の存在「あれ」を「裏返し」続ける一家の物語で、『光の帝国』収録の「オセロ・ゲーム」の続編にあたる。


【著者紹介】
おんだ・りく (1964年─) 小説家。
宮城県仙台市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。郷愁的な情景を描くのが巧みで、“ノスタルジアの魔術師”と称される。『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞及び本屋大賞、『ユージニア』で日本推理作家協会賞、『中庭の出来事』で山本周五郎賞を受賞。
本ブログで取り上げた作品に書評151:『光の帝国――常野物語』書評186:『蒲公英草紙――常野物語』がある。


【本書のあらすじ】
『あれ』と呼んでいる謎の存在と闘い続けてきた拝島時子。『裏返さ』なければ、『裏返され』てしまう。『遠目』『つむじ足』など特殊な能力をもつ常野一族の中でも最強といわれた父は、遠い昔に失踪した。そして今、母が倒れた。ひとり残された時子は、絶縁していた一族と接触する。親切な言葉をかける老婦人は味方なのか?『洗濯屋』と呼ばれる男の正体は?緊迫感溢れる常野物語シリーズ第3弾。


お薦め度:★★★☆☆

【本書の感想】
「常野物語」シリーズの中では、本書は異色作にあたるだろう。

『光の帝国』所収の短篇はどれも暖かく切ないものばかりで、第一長篇『蒲公英草紙』もその系譜を継いでいた。
一方でこの作品はサイコ・サスペンスの趣が強い。謎の存在「あれ」と戦い続ける、孤独な家族の物語は、郷愁的な雰囲気に包まれる常野ワールドとはまるで別世界だ。


二転三転するストーリーにも力がある。「あれ」の正体や「裏返す」能力の秘密、消えた両親の行方、「洗濯屋」と呼ばれる男の存在など、数々の謎が読者の手を止めさせない。

ただ、どんでん返しが続く中で世界観が壮大になり過ぎて、若干空中分解している印象もある。
『蒲公英草紙』もそうだったが、「え、これで終わり?」という感想を抱いたのが正直なところ。
まだ常野シリーズが完結したわけではないので、To be continued…なのはわかるけど、独立した長篇としてもちゃんとしたストーリー構成にして欲しかった、というのは酷な要求か。


『光の帝国』にはまだまだネタが残っていたので、今後の続編にも期待しています。
 

閉じる コメント(9)

この本を読んだ頃にはまだ、続編を期待していたのですが・・。
もう少し話の方向性を定めてから書いて欲しいものです。
でも、恩田さんに完成度を求めちゃいけないかもしれません。

2010/8/10(火) 午前 7:02 りぼん

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「あれ」が怖いので「エンド・ゲーム」は苦手でした。茶碗の話の商社マンがどうなったのか、そちらで続編が読みたいです。

2010/8/10(火) 午後 8:49 ぼやっと

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こんばんは!
常野シリーズは好きなので、読んでみたいです!
大三元さんの感想を読んで更に読みたくなりました。
でも、恩田作品は世界観が途中で行き過ぎてしまうことが多々あるように思います。この作品もそうなのかな。

2010/8/10(火) 午後 9:06 Kimmi

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>りぼんさん:トラバありがとうございました。
もう、私は恩田陸にきっちりした結論を求めるのは止めました(笑)
彼女の作品は、そういうのではなく、そもそもの発想とか、世界観とか雰囲気とかを楽しむものなんですよね。

2010/8/10(火) 午後 10:16 大三元

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>ぼやっとさん:茶碗の話、もはや懐かしいですね(笑)
あれも、何となく春田家の「しまう」能力や槙村家の予知能力の雰囲気に近いですから、続編があれば『蒲公英草紙』の方向に戻るかもしれません。
個人的には、最後はツル先生が全てを丸く収めて欲しいのですが(笑)

2010/8/10(火) 午後 10:20 大三元

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>Kimmiさん:この作品の場合(というか他の作品もそうですが)、「途中で行き過ぎる」というより、当初の発想に後々の構成力が追いついていかない感じがします。途中まではわくわくするんですけど、そこからの展開が若干肩すかし。でも、『エンド・ゲーム』はまだいい方でしょうね。
読まれたら感想をお聞かせください!

2010/8/10(火) 午後 10:22 大三元

何度か登場している常野物語のシリーズなのですね。
面白そうではありますが、1個の物語としての完成度はイマイチなのですね。
その辺で星3つということでしょうか。

2010/8/12(木) 午前 2:59 オブ兵部

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>オブ兵部さん:常野シリーズは好きなんですけど、どうも恩田さんの作品には構成力に難があるような気がします。文章は素晴らしいし、世界観や発想も良いんですが(だから読むんですけど)、それが一つの小説としてまとまった時にどうかな、と。

2010/8/13(金) 午前 6:00 大三元

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>内緒さん:そうですか、お口に合いませんでしたか・・・。恩田はわりと万人受けするタイプの作家だと思ったんですが。
ちなみにどの作品を読まれましたか?この『エンド・ゲーム』はともかく、『光の帝国』なんかはいい本だと思います。

2010/9/19(日) 午前 1:20 大三元

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