書評207 長嶺超輝『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書、2007年)裁判員制度も実施されて一年以上経ち、あまり報道もなくなってきたが、国民に受け入れられているのかは不明である。
以前書評156:『激論!「裁判員」問題』を取り上げたことがあるけれど、今回の書評は一時期流行った「裁判傍聴もの」の一冊。
【著者紹介】
1975年長崎県生まれ。九州大学法学部を卒業後、弁護士を目指し、塾講師や家庭教師の指導と並行して司法試験を受験。七回の不合格を重ねて懲りる。現在はライター業の合間をぬって裁判傍聴に通う日々。2005年の最高裁判所裁判官国民審査では、対象となった裁判官六名の経歴や過去の発言、判決骨子をまとめたサイト「忘れられた一票」が各方面で大きな反響を呼ぶ。
【目次】
第1章 死刑か無期か?―裁判長も迷ってる
第2章 あんた、いいかげんにしなさいよ―あまりに呆れた被告人たち
第3章 芸能人だって権力者だって―裁判官の前ではしおらしく
第4章 被告人は無罪―「有罪率99.9%」なんかに負けない
第5章 反省文を出しなさい!―下手な言い訳はすぐバレる
第6章 泣かせますね、裁判長―法廷は人生道場
第7章 ときには愛だって語ります―法廷の愛憎劇
第8章 責めて褒めて、褒めて落として―裁判官に学ぶ諭しのテク
第9章 物言えぬ被害者を代弁―認められ始めた「第3の当事者」
第10章 頼むから立ち直ってくれ―裁判官の切なる祈り
【本書の内容】
「死刑はやむを得ないが、私としては、君には出来るだけ長く生きてもらいたい」(死刑判決言い渡しの後で)。裁判官は無味乾燥な判決文を読み上げるだけ、と思っていたら大間違い。ダジャレあり、ツッコミあり、説教あり。スピーディーに一件でも多く判決を出すことが評価される世界で、六法全書を脇におき、出世も顧みず語り始める裁判官がいる。本書は法廷での個性あふれる肉声を集めた本邦初の語録集。これを読めば裁判員になるのも待ち遠しい。(カバー紹介より)
お薦め度:★★★☆☆ 【本書の感想】
面白かった。
裁判の判決など無味乾燥だと思われがちだが、裁判官の肉声を読むと、意外にも人間くさかったりして興味深い。
本書はタイトル通り裁判官の肉声を収録しており、裁判官の苦悩、決意、同情、憤怒など、様々な表情を垣間見ることができる。
中には思わず笑ってしまう一言や、裁判官の悲哀を感じる発言、ピリッと皮肉を効かせた説教、泣かせる判決文などもある。
以下、一文ずつ引用しながら感想を加えていく。
犯人が人を殺すのは簡単だが、国家が死刑という判決を出すのは大変だということです。皆さん、納得はいかないと思いますが、そういうことです。(24項) 久我裁判長は、判決理由で犯行の残忍さ・卑劣さを繰り返し強調しているが、苦悩の末、量刑相場のバランスを優先させたのだろうとのこと。個人の感情と法体系との狭間で悩む裁判官の姿が垣間見える。
罪は万死に値する。(80項)これも上の例と同じ。あろうことか身内の犯罪を隠した警察に対し、執行猶予をつけた判決を出さざるを得ない裁判官の憤りが、過激な表現に表れている。 捕まって刑務所に入りたいなら、放火のような重大な犯罪でなくて、窃盗とか他にも…。(46項)裁判官が犯罪を指南するなんて、口が滑っちゃったのか(笑)。 本当に反省した態度が見られない。次回公判までに、反省文を提出しなさい。(98項)こんなけしからん人もいるんですねぇ。そりゃ反省文ですねぇ。 仕事が忙しいのは当たり前でしょう。そんな言い訳が通ると思っているのか。(102項) その通り!四六時中多忙な裁判官が言うと説得力がある。
言葉は悪いが、単なるロリコン、単なるスケベおやじだったのではないか。(110項) 裁判官を裁く裁判官の一言。厳しい。
家族の愛情を求めながら、その家族から虐待を受ける日々を、どんな思いで耐えていたのか。何を感じながら人生の幕を閉じていったのか。願わくば、その人生が悲しみばかりでなかったことを祈る。(174項)胸を打つ裁判官の判決文である。この裁判官、文才があるのか、このまま弔辞になってもおかしくないと思った。 変態を通り越して、ど変態だ。普通の父親では絶対に考えられない、人間失格の行為。娘の将来の傷をどうするのか。(182項)ど変態。。。いや、その通りです。 薬物のフルコースで、責任は軽くない。(199項)フルコース…(笑)。いや、その通りです。 |
書評 社会・経済
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私も読みました。
「爆笑」なんて題が付いていますが、「深いい」話しばかりだと思いました。
さだまさしの「償い」を引用して、反省のない若者を説諭したり、裁判官の仕事とは何かを教えているように思いました。
2010/8/19(木) 午前 8:06
社会に大きな影響を及ぼした重大事件などの判決文だけはしっかり読みたいと新聞の記事を読み始めるのですが、わかりにくい法律用語が不満の種でした(笑)
おもしろそうですね!
2010/8/19(木) 午前 8:29
裁判官も「自分」というものが思わず出てしまうのだなあと思う内容でしたね。同時に裁判官の仕事の重さも強く感じました。
2010/8/19(木) 午前 10:08
すみません、「薬物のフルコース」って不謹慎ながら笑ってしまいました。「万死に値する」も凄いですね…。裁判官も人なんですね。
2010/8/19(木) 午後 9:02
面白いですね♪
きっと、、大三元さんの紹介の仕方が、的確で、分かりやすいからだと思います。。。
なかなか、本の紹介とか、感想を記事にするのは難しいです。。。
(*^-^*)/~
2010/8/19(木) 午後 10:59
>内緒さん:これもお読みですか?さくっと読めるし、面白かったですね。
2010/8/21(土) 午前 7:14
>みこぴょんさん:そうなんですよ、笑えるものもありますが、結構「いい話」もあって面白かったです。よく考えれば、裁判て非日常的なことが集まってくるわけで、ドラマティックな出来事が起こる確率は高いんですよね。
2010/8/21(土) 午前 7:16
>しぐれさん:これは軽く読めるし、かといってよく考えると深い台詞もあって、なかなか面白い本だと思います。ベストセラーになった本を今更という感じもしますが、お薦めです。
2010/8/21(土) 午前 7:17
>ねこりんさん:人を人が裁くのだから重いのは当然なのでしょうけれど、それがシンプルに伝わってくる本でしたね。ねこりんさんはこういう本も読まれるのですね。
2010/8/21(土) 午前 7:18
>ぼやっとさん:執行猶予をつけておいて「万死に値する」と言ったり、「単なるロリコン」「ど変態」のような表現を使ったりと、それだけ読むとタイトル通り笑える台詞も、事件の背景を知ると全然笑えない、というところがこの本の深いところかなと。お薦めです。
2010/8/21(土) 午前 7:20
>さんぽさん:ありがとうございます〜。私は備忘録がてら書き写しているだけなのですが。。。笑
2010/8/21(土) 午前 7:21
>内緒さん:弁護士つながりですか。お仕事がそういう関係なんでしょうか。
この本が予想以上に面白かったので、『人情お言葉集』も買ってきちゃいました。
2010/8/23(月) 午前 0:59
これは是非,読んでみたい・・・
さっそくamazonでお買いもの(*^。^*)
2010/8/24(火) 午後 9:36
今まで持っていた判決文のイメージがひっくり返りそうな本ですね。
3歳児を虐待死させた事件の判決文は、胸を打つ名分です。
2010/8/24(火) 午後 11:43
>かえるさん:さくっと軽く読めるのに、よく考えてみると深い背景がある、とても珍しい本です。お薦めですよ。
2010/8/26(木) 午前 0:18
>オブ兵部さん:私は天邪鬼の気がありますので、巷で流行っている本は基本的に読まないのですが、これを読んでみると裁判を傍聴する人が増えるのもわかる気がします。
勢いでこの本の姉妹編も買ってしまいました(笑)
2010/8/26(木) 午前 0:20
読みました。
『願わくば、その人生が悲しみばかりでなかったことを祈る。』
涙が出ました。
でも,他はたいてい笑って読みました。
2010/9/14(火) 午後 8:38
>かえるさん:読まれたんですね!
「爆笑お言葉集」のタイトル通り、笑えるフレーズが多かったですね。
でも、よく考えてみると複雑な事情があったり、裁判官の人情が滲み出ていたり、考えさせられる部分もありました。
2010/9/16(木) 午前 1:17