読書のあしあと

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紀元前 My Best

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井上達夫『他者への自由』/紀元前 My Best Books #1

昨年このブログが100,000ヒットを記録したのを機に、このブログ開設以前に私が決定的な影響を受けた
本、即ち“紀元前”のMy Best Booksを紹介していこうと考えています。
まず第一回は、法哲学者井上達夫の主著である『共生の作法――会話としての正義』(創文社、1986年)と
『他者への自由――公共性の哲学としてのリベラリズム』(創文社、1999年)。

学生時代の前半、政治思想に特に興味を持っていた私は、やがて社会的規範理論と呼ばれる著作群を読む
ようになりました。
当時時代遅れの感もあったリベラル=コミュニタリアン論争はその代表格ですが、リバタリアニズムやポスト
モダニズムなどの立場が乱立する中で、元来保守的な私はコミュニタリアニズムに傾倒していきました。
書評218:『これからの「正義」の話をしよう』のマイケル・サンデルの主著を読んだのもこの頃ですね。
 
当時私は大学で小規模ながらもサークルの運営に携わっており、社会構想というより自分の実体験から
部員の積極的参加を促す共和主義的コミュニタリアニズムに惹かれていたのだと思います。
 
そんな頃に出会ったのが井上達夫の作品群でした。初めて読んだのは『共生の作法』で、硬質な文体は
読みにくいったらありゃしないけれど、その緻密かつ鮮やかな論理展開には衝撃を受けました。
 
7年以上前?に読んだ時の記憶をたどると、彼の正議論の骨子は

・正義の基底性=「自由」概念が「正義」を規定にして初めて救われる。
・他者への自由=自らの「自由」は、「他者」という試練なくしては単なる放縦に終わってしまう。
           寛容な社会に必要なのは、「積極的自由vs.消極的自由」というバーリン的二分法を
           超えた、「他者への自由」である。

ということになります。
井上達夫には他にも現代的な問題を扱った論文集などがあり、その全てが知的刺激に満ちていました。
(最近『現代の貧困』が岩波現代文庫に入りましたね。)
 
今考えると、彼の作品からは学問的な意味でのみならず、生きていく上での姿勢という意味でも影響を
受けていたように思います。00年代に刊行された新刊書を読む度に、自分の視野の狭さを恥じ、「他者を
他者として受け入れること」の大切さを学びました。
 
専門書であるにもかかわらず、狭い専門にとどまることない広い射程を備え、しかもその核には一個の
人格とそれを裏打ちする哲学が存在する。
蓋し、優れた学術書というのはそういうものなのかもしれません。

閉じる コメント(8)

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『共生の作法』、『他者への自由』ともに積読本として本棚に眠っています(本棚にすらなく床に眠っているかもしれません)。大三元さんが影響を受けたということで、久しぶりに興味がわきました。子年の課題図書にでもしようかと思います。

2011/4/17(日) 午後 11:05 KING王

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>KING王さん:井上達夫は、私が最も影響を受けた法学者であり、学生時代の血の気の多かった私に“他者を畏れること”の大切さを教えてくれた思想家でした。著作は読みにくいことこの上ないですが、何ヶ月かかっても是非読んでいただきたい一人です。

2011/4/17(日) 午後 11:27 大三元

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「生きていく上での姿勢という意味でも影響を受けていたように思います。」とあり、大三元さんの若く青い時代を彷彿させました。
このような本を読みながら、今の大三元さんになっていったのですね。なかなか興味深いです。

2011/4/24(日) 午後 5:03 miffy_toe

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紀元前Bookお待ちしておりました。大学では法学か政治学を学んでらっしゃったのですか?恥ずかしながら自分にとってはまったく未知の著者・著作ですが、記事は大変興味深く拝読しました。
大三元さんの芯の通った読書や生き方の基礎を垣間見た気がします。

2011/4/24(日) 午後 6:23 ang*1jp

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大三元さんは、史学科でしたよね?
井上達夫って名前聴いたことあるかも??
法学者じゃ縁遠い。
どのような系譜の中にいる人ですか?
一度読んでみればいいのでしょうが。

2011/4/24(日) 午後 11:58 [ nagata ]

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>すてさん:今でも職場では一番の若手で通っているので、お間違いなく^^

2011/4/25(月) 午前 8:10 大三元

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>あんごさん:1冊目がこんな本ですみません。でも、大衆受けするような本を記事にしてもしょうがないよなあ、と。
大学での専攻は政治学(のはず)でしたが、書庫の記事をご覧になればわかっていただけるように、できるだけ幅広く手がけてきたつもりではあります。

2011/4/25(月) 午前 8:13 大三元

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>nagataさん:私は、学部は政治学科でしたが狭義の専門は日本政治外交史でした。
井上達夫は、ロールズの正義論を出発点とした英米系の法哲学者です。とはいっても彼の思想・論法は非常に独特なもので、日本の言論界でマッピングするのは極めて難しい。ただ一つ言えるのは、当時新進気鋭の研究者だった彼は今や日本法哲学界の第一人者になったということです。

2011/4/25(月) 午前 8:17 大三元


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