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書評 日本文学

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書評228 森見登美彦

『夜は短し歩けよ乙女』

(角川文庫、2008年)

各方面で話題の作家・森見登見彦の出世作である。
2006年の本屋大賞2位ということで、お読みになった方も多いと思う。


【著者紹介】
もりみ・とみひこ (1979年―) 作家。
京都大学大学院農学研究科修士課程修了。2003年『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、小説家デビュー。2006年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞、本屋大賞(2位)などを受賞し注目を集める。ほとんどの作品の舞台が京都であり、個性的なキャラクターを多く登場させ、独特の文体で強烈な世界観をつくりあげる。他の著書に『四畳半神話大系』『【新釈】走れメロス 他四篇』など多数。


【本書のあらすじ】
「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する“偶然の出逢い”にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作。


お薦め度:★★★★☆

【本書の感想】

<全体の感想>
面白い!
が、評価が難しいと言おうか、好みが分かれる本ではあるだろう。
個人的には、学生時代を京都で過ごしたこともあって、濃ゆい森見ワールドにすんなり入っていけた。

あらすじを簡単に書けば、ド天然な黒髪の乙女と屁理屈頭の男子学生が織り成すドタバタ活劇である。
この個性溢れるキャラクターが本書最大の魅力であり、好みの分かれ目と言ってよいだろう。

登場人物の破天荒さ加減はめちゃくちゃだし、現実味は薄い。
キャラの濃さの例を幾つか、森見独特の文章とともにご紹介しよう。


しかも私が中学生の頃から欲しかった本が、百円玉一枚だとは! お財布への信頼に一抹の翳りある我々にとってはありがたすぎるお話です。ビバ、「ビギナーズラック」。それとも私は古本市巡りの才能があるのかしらん。私の興奮はいやが上にも高まります。(81―82項)

かつて「左京区と上京区を合せても並ぶものなき硬派」という勇名を馳せた私が、今や何とか彼女の眼中に入ろうと七転八倒している。私はそれを「ナカメ作戦」と名付けた。「なるべく彼女の目にとまる作戦」を省略したものである。(155―156項)

雲霞の如く発生する即席恋敵たちに私の苛立ちは募り、彼らの肩を掴んで「彼女はおまえらなど眼中にない!」と宣言したくなったが、相手へ放つ矢はより勢いを増してこちらへ跳ね返る。「チクショウ、俺も彼女の眼中にない!」と私は呻いた。(172項)

「人間として、力の入れどころを激しく間違っているよね」羽貫さんが酒を飲みながら呟いた。志は素晴らしく美しいが、目的地から真逆の方角へ全力で走っている印象が濃い。私は彼の力いっぱいの逆走ぶりを讃え、握手を求めた。そういう「やむにやまれぬ」生き方が、他人事とは思えなかった。(188項)

もちろん私は普段から精神を研ぎ澄ましているような人間ではありませんが、その「ボーッ」は、「ボーッ」の中の「ボーッ」、「世界ボッーとする選手権」というものがあれば日本代表の座も間違いなしと思われるほどに筋金入りのボーッであったのです。(228項)

私には、どう対処すればいいのかわからなかった。世の男女が二人きりで会う時、彼らは何を喋っているのであろう。まさかずっと睨み合っているわけにはいくまい。かといって、人生や愛について白熱の議論を繰り広げるわけでもあるまい。(316項)


破天荒な学生生活を送らなかった人は共感できないかもしれない。
しかし、京都で学生生活を送った人は気づいてくれるのではないか。
程度の差こそあれ、実際京大生なんて変態ばかりであって、主人公や黒髪の乙女のような学生も実在するということを。
程度の差こそあれ、主人公の悩み方は自分自身の悩み方とも共通していたということを。

だからこそ、“学生の街”としての京都は面白いのである。

閉じる コメント(16)

またまた、楽しそうな本を紹介していただいてありがとうございます。早速、図書館に予約です(*^^*)。

2011/6/13(月) 午前 7:00 かえる

丁度今、この人の作品で4畳半を読んでます。
確かに独特な文体です。
大昔、野坂昭如を初めて読んだ時のような読みづらさを感じました。
慣れれば、解決するのかな。

2011/6/13(月) 午前 8:25 オブ兵部

へーっ、おもしろそうですね!超天然の私としてはほっておけないかも(笑)。
この世代の著者の”乙女”像にも興味がありますね。

2011/6/13(月) 午前 9:00 凛さ

何年か前、誕生日のプレゼントに息子が買ってくれました。自分が読みたい本をくれるんですよ(^_-)

修学旅行では決して行かないもう一つの京都。
不思議な登場人物。
幻想的な場面や怪しげな場面。
初めて読む森見ワールドに驚きつつ読みました。

2011/6/13(月) 午前 9:36 みこぴょん

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この回の本屋大賞で1位だった「一瞬の風になれ」は読んでいないのですが、私だったら迷わず「夜は短し〜」を推すと思います。(スポーツものが苦手^^;)それぐらいこの本でモリミーワールドにはまりました^^
癖のある文体ですが、そこがまた魅力になっていますよね。

2011/6/13(月) 午後 6:32 ねこりん

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この本、気になっていました。読んでみたいです。
「程度の差こそあれ、実際京大生なんて変態ばかりであって、主人公や黒髪の乙女のような学生も実在するということを。」
こういうコメントをしみじみと書ける辺り、
まさか・・・・・まさか・・・・・大三元さんて・・・・K大生?


京都の大学に「K」はいっぱいあるけどね。・・・・てへっ

2011/6/14(火) 午後 10:01 miffy_toe

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読みましたよ〜〜〜♪

私的には、、結構面白くて、、森見ワールド楽しみました。。。
どれも、、似ていますね。。。(笑)
でも、、結構好きです。。。♪
(*^-^*)/~

2011/6/14(火) 午後 10:06 さ ん ぽ

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>かえるさん:ちょっとクセが強い文章とドタバタな内容が読者を選ぶかもしれませんが、ハマればファンになってしまいそうな感じです。こういう作家さんはいいですね、文学の幅を広げてくれそうな気がします。

2011/6/14(火) 午後 11:25 大三元

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>オブ兵部さん:初めは文体に面食らいますよね(笑)。
野坂昭如ですか・・・気づきませんでした。確かにどちらもすらすらとは読みにくいし、ねちっこいかも。次は『四畳半』に挑戦予定です。

2011/6/14(火) 午後 11:35 大三元

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>凛さん:自分で自分を「超天然」と言う人は初めてお会いしました(笑)。
でもこの本の「黒髪の乙女」も相当ですよ!

2011/6/14(火) 午後 11:39 大三元

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>みこぴょんさん:素晴らしい息子さんですね!
京都って、実は観光する街ではありません。住んでナンボの街であり、学生こそその魅力を一番堪能できるんですね。
本書の出来事の50%、登場人物の70%は実話と思っていただいていいでしょう(笑)。

2011/6/14(火) 午後 11:44 大三元

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>ねこりんさん:トラバありがとうございました。
モリミーワールド、存分に堪能させていただきました。
この作風で何冊も書くなんて、すごい作家さんですね。色んな意味で。
他の作品も是非読んでみたいです。

2011/6/15(水) 午前 0:22 大三元

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>すてさん:残念ながら、私はどのK大生でもありません^^
ただ、K大生の友人はことごとく変態でした(笑)。
しかしそうじゃないと大学なんてつまらん、というのは京都的発想でしょうか。

2011/6/15(水) 午前 0:24 大三元

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>さんぽさん:おお、既にお読みでしたか。面白いですよね。こういうタイプの作家は初めて読みましたが、なかなか悪くないです。

2011/6/15(水) 午前 0:25 大三元

ご報告です。挫折しました・・・。文体は嫌いではないのですが、次々出てくる地名のイメージも、距離感もわからない中で、読み進むのが厳しくなってきました。地図を片手にじっくり読めばよいのかなぁ(地図、好きなんです(^_^;))時間をおいて再度トライしてみるつもりです!

2011/6/27(月) 午後 0:49 かえる

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>かえるさん:う〜ん、そうですか。。。文章以外にも、京都を知らない方にはそんな弊害が。。
なまじ京都を知っていると気づきませんでした。
でも、地図を見ながら、というよりは、わからなくてもそのまま読み飛ばして、リズムとスピードに乗って読んでしまった方がこの作品の良さが伝わるかも。実際地名はほとんど物語の要ではないので。

2011/7/3(日) 午前 0:58 大三元

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