書評245 桐野夏生『東京島』(新潮文庫、2010年)谷崎純一郎賞を受賞した作品は漏れなく読むことにしているので、昨年の書評230:『ミーナの行進』に続き08年度の受賞作を手に取る。桐野夏生の作品を読むのははじめて。 【著者紹介】 きりの・なつき (1951年―) 作家。 金沢市生れ。成蹊大学卒。1993年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞を受賞し注目を浴びる。97年に発表した『OUT』は社会現象を巻き起こし、同年、日本推理作家協会賞を受賞。99年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞をそれぞれ受賞。 【本書のあらすじ】 32 人が流れ着いた太平洋の涯の島に、女は清子ひとりだけ。いつまで待っても、無人島に助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。果たして、ここは地獄か、楽園か? いつか脱出できるのか――。欲を剥き出しに生に縋りつく人間たちの極限状態を容赦なく描き、読む者の手を止めさせない傑作長篇誕生! お薦め度:★★★☆☆ 【本書の感想】 31人の男の中に1人の女。この状況で何年も続く無人島の生活は、どこへ向かうのか? この設定だけでも荒唐無稽だが、その後のストーリー展開もすごい。 「女」としての特権、ということで真っ先に思い浮かぶのはセックスだけど、その他にも「子どもを産む」という権利や、それらが状況によって武器にもなれば逆に弱みにもなる点なども巧みに描かれている。そして、この状況を生き抜こうとする主人公・清子の変貌ぶりが読ませる。 あらすじがキモの小説なので詳説は控えるが、特筆すべきは、桐野夏生の腕力である。 やや都合が良過ぎる感じはあるものの、意外な展開を連発し、強引に読者を引き込んでいく筆力には素直に感嘆する。 福井晴敏の書評78:『亡国のイージス』を読んだときも思ったが、現代のエンタメ作家は腕力があるなあ。 ちょっと残念だったのは、谷崎潤一郎賞を受賞した理由がよくわからなかったこと。私はそれほど“文学”かくあるべしというような固定観念を持っているつもりはないが、それでも過去の受賞作書評130:『風味絶佳』や書評230:『ミーナの行進』に比べると、どうも“味”に欠けるような気がするのである。 いや、これも好みの問題かな。
いずれにせよ、ぐいぐい読ませる力を持つ小説であることは間違いない。 |
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すさまじい設定の小説でしたね。私、いくらモテるとしても、清子の立場には絶対立ちたくないです。
「ミーナの行進」とはまるで正反対の読後感かも。
桐野さん、確かに力量のある作家さんですが、最近の作品はちょっと手を抜いた感じの作品もあって、惜しいです。
2012/4/14(土) 午後 7:44
私、この小説、どうも合わなくて途中で読むのをやめてしまいました。最後まで読んだら面白かったのかもしれませんが、粗筋以前に、文章がなんだか苦手で。
2012/4/14(土) 午後 7:48
読んでみたくもあり
読んでみたくもなし・・・(^^;)
あまりに人間のエゴ剥き出しというのも
怪奇小説の世界以上に悍しそうです。
2012/4/14(土) 午後 7:53
>Tomatoさん:これ、読まれたんですね。そうそう、『ミーナの行進』とは正反対の読後感で、同じ谷崎賞受賞作でこうも違うものか、と思いました。もっとも、『ミーナの行進』の方があるべき文学だと言うつもりはなくて、好みの問題なのかもしれませんが、谷崎賞の性格がちょっとわからなくなってしまいました。
でも、力のある作家さんですね。
2012/4/14(土) 午後 10:54
>ぼやっとさん:ぼやっとさんも読まれたんですね。同じく、私もあまり得意ではない、というか読んでいて心に沁み込むタイプの文章ではないな、と思いました。好みの問題なのでしょうね。作品自体は、構成力と展開で読ませるな、と思いましたが。
2012/4/14(土) 午後 10:56
>みかんさん:この本では、人間のエゴや感情の赤裸々な部分が次々と描かれていくので、ある意味爽快ではあります。ストーリー展開もうまいですし、文章が合えばエンタメ小説としてはいいんじゃないでしょうか。
2012/4/14(土) 午後 10:59
お久しぶりです。
この人の作風は、好きか嫌いかと言われると微妙なところもありますが、つい読みたくなってしまう作家の一人です。
人の心のドロドロを大胆に描ききってしまうようなところがありますからね。
この人の作品の中で、一番のお薦めは「リアルワールド」と言う作品です。
お時間があればいかがでしょう。
2012/4/16(月) 午後 11:05
桐野さんの本はいつか読んでみたいと思っているのですが、あのエネルギーについてゆけるか心配でちょっと二の足を踏んでいます〜。
2012/4/22(日) 午前 11:35
私は、『顔に降りかかる雨』を読んで、彼女の作品は、満腹かな。気になるけど、ちょっとこわいです。
2012/4/22(日) 午後 7:31
>オブ兵部さん:俗に言う「ヤミツキになる」というやつですかね。そうそう、「描き切ってしまう」ところにひかれる読者が多いのでしょう。私としては、これより面白いというお墨付きの作品があれば読んでみたいかな…という感じです。『リアルワールド』ですね、チェックしておきます!
2012/4/23(月) 午後 9:24
>あんごさん:たしかに、エネルギーはすごいですね。平凡な主婦がグロテスクな怪物になっちゃいますから。でも、読み始めたら有無を言わせず読ませる力はあると思います。アレルギーを起こさなければね。
2012/4/23(月) 午後 9:25
>すてさん:そうですね、私もこの作品で若干満腹感を覚えました(笑)。他の人のオススメもありますので、もう少し読んでみようかと思ってますが。
2012/4/23(月) 午後 9:26
「グロテスク」「OUT」「魂萌え」「顔に降りかかる雨」等
読んだ記憶があります。
非常に得意な状況設定と特異な人物の性格付けで
ストーリーテリングは抜群に上手いですね。
ルース・レンデル的な雰囲気も感じます。
でも思い出してみるとルース・レンデルのほうが
人物の肉付けにリアリティがあると思います。
桐野さんは登場人物にフォーカスする目的(だと感じますが)
人間の歪さが少しデフォルメされすぎて感情移入ができません。
ルース・レンデルは凄い筆力だと思いますが
お読みになったことありませんか?オススメ!
サスペンスフルで、かつ人生の不条理を感じます。
2012/5/7(月) 午後 11:40 [ pilopilo3658 ]
>あおちゃんさん:確かにデフォルメされすぎというか、人物造形が漫画的ですね。
おススメありがとうございます。ルース・レンデルですね。チェックしておきます。そういえば、竹田いさみもまだ読んでない(笑)。
2012/5/9(水) 午前 0:56
はじめまして!
さきほどはコメントをありがとうございました^^
桐野夏生さんは、「OUT」を読んだことがあります。
ドラマにもなりましたけど、読んでいるうちに夢中になったのを覚えています!
2012/9/5(水) 午後 1:16 [ ゆみ ]
>ゆみさん:ご訪問&コメントありがとうございました。
本も読まれるんですか?
桐野夏生は、腕力があるというか、ぐいぐい読ませる力のある作家さんですね。
2012/9/10(月) 午後 10:36