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昨年末は恒例の「My Best Books」と「この3冊」の展望ができなかったので、まずこちらからやっつけます。
主要新聞各紙の書評委員が年末に「今年の3冊」を選びますが、この中から個人的に気になったものをピックアップ。
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まず人文・社会科学部門は、経済関係から3冊。
中村達也ら複数人が推すのがジョセフ・E・スティグリッツ、アマティア・センほか『暮らしの質を測る』(金融財政事情研究会)。「生活の豊かさを示すGDPを超える指標を求め、サルコジ・フランス大統領(当時)が設置した委員会の報告」とのこと。ようやく目に見えない幸福の議論が深まってきたということか。気になる。
中北徹『通貨を考える』(ちくま新書)は松原隆一郎が挙げた。この円高趨勢を冷静に考えるのもいいかも。
書評254:『消費するアジア』の次にアジアについて読むならこれかな、と思っているのが白石隆、ハウ・カロライン『中国は東アジアをどう変えるか』(中公新書)。山崎正和が「現代アジアを論じながら、アングロ・チャイニーズという新民族の誕生を示唆し、過去の文明史の通念に反して、民族が天与の固定的な存在ではないことを暗示した秀作」と評している。
個人的に昨年の目玉だと思っているのが山崎正和『世界文明史の試み――神話と舞踊』(中央公論新社)で、三浦雅士・五百旗頭真・細谷雄一と錚々たる面々が挙げている。もはや絶滅危惧種となった総合的知識人の新著である。
ノンフィクションでは、中島岳志が挙げた安田浩一『ネットと愛国』(講談社)と池澤夏樹が挙げた斎藤環『世界が土曜の夜の夢なら−−ヤンキーと精神分析』(角川書店)が以前から気になっていたので、古本探しリストへ登録。
続いて文学・随筆部門。
日本文学で一番読んでみたいのは水村美苗『母の遺産−−新聞小説』(中央公論新社)。川本三郎の評もいい。「老い果てた母親を介護し、看取る。一方では夫の浮気に悩まされる。『ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?』大人の女性による市民小説の傑作」。
江國香織が「あまりにもデリケートで幸福な小説」と評する金井美恵子『ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ』(新潮社)。江國自身の本も久しぶりに読みたいなあ。
今年亡くなった丸谷才一の遺作『快楽としての読書−−日本篇・海外篇』(ちくま文庫)は、湯川豊が「あっけにとられるほどうまいというしかない書評集成」として挙げた。
そして忘れてはならないのが我らが小川洋子の新刊『ことり』(朝日新聞出版)。ま、文庫化まで待ちますけどね(笑)。
海外文学では、あの書評103:『ソーネチカ』のリュドミラ・ウリツカヤの新刊、『女が嘘をつくとき』(新潮クレスト・ブックス)が出た。その前に刊行された『通訳ダニエル・シュタイン』も積ん読になっているし、全然追いつかない。
もう一冊ロシア文学。ミハイル・シーシキン『手紙』(新潮クレスト・ブックス)は、沼野充義をして「ポストモダン・ロシアの荒野から突如出現した福音」と言わしめた。どんな本なんだろう。
マーク・トウェイン『トム・ソーヤーの冒険』(新潮文庫)は、柴田元幸の新訳が出たんだった。昨年は書評242:『あなたの知らないガリバー旅行記』を読んで『ガリヴァー』を読んだ気になってしまった(笑)ので、こっちはちゃんと読みたいな。
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次回はお待ちかね、「My Best Books 2012」です。
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読書を語ろう!
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興味をそそられる本が、目白押しですね!山崎正和『世界文明史の試み――神話と舞踊』、斎藤環『世界が土曜の夜の夢なら−−ヤンキーと精神分析』は、読みたいですね。斎藤環さん好きです。題も文学的で素敵。
また「ソーネチカ」の著者の新作も気になります。実は、最近「ソーネチカ」を思い出していたんです。読んだ当時は、お子ちゃまで(精神年齢が)、こんな気持ちわかりたくない!って拒む気持ちが強かったんですけど、改めて思い返すと傑作だったな〜と、思うんですよ。再読しようと思ってました。一気に新刊まで読んじゃうかも。
2013/1/8(火) 午前 9:29
うわっ!ちょうど、きょう図書館で「女が嘘をつくとき」と「手紙」を借りたところでした。「女が・・・」は前から読みたいと思っていた本。
柴田さん新訳の「トム・ソーヤー」も気になりますね。
2013/1/8(火) 午後 6:00
>mepoさん:山崎正和はもはや古き良き知識人の最後の生き残りと化した感がありますね。斎藤環の本は、実はしっかり読み込んだことがないので、楽しみにしています。
お〜、『ソーネチカ』を傑作と評するとは、mepoさんもついにこちら側に!
是非もっとこちら側に寄って下さい(笑)
2013/1/8(火) 午後 6:57
>Tomatoさん:実はロシア文学はことごとく玉砕しているのですが、唯一といっていいほどの例外がウリツカヤです。多分あの本との出会いは一生ものだったと思う。
早速新刊を借りられたとのこと、感想を心待ちにしています!
2013/1/8(火) 午後 6:59
読売新聞を購読しているので「母の遺産‐新聞小説」はリアルタイムで読みました。
介護の描写は筆者の体験のようですがそれだけで終わりません。「金色夜叉」をモチーフに母と祖母の生い立ち、夫と離婚後の金勘定がシニカルに描かれています。私も今のところ親は元気だけど身につまされました。
2013/1/8(火) 午後 8:22 [ - ]
「ピース・オブ・ケーキ〜」は期待してます。金井さんも創作意欲の衰えない作家ですね。「ネットと愛国」、こちらは嫌な感じになってきたインターネット内の右傾化を取材されたようですね。困ったことに、在特会の主張があまりにも品がなく過激なのに、一部本当に特権化しているところです。
小川さんの作品も期待してます。
2013/1/10(木) 午前 9:44
>ちょいこさん:やはり『母の遺産』は面白そうですね。『日本語が亡びるとき』で話題をさらったのがついこの間のようですね。是非読みたいと思ってますが、なかなか文庫には入らないてましょうね。
2013/1/13(日) 午前 8:52
>しろねこさん:金井氏の名前ははじめて知りました。エンタメ作家なのでしょうか?にしては江國にここまで言わせるのは相当の実力と見ました。
インターネットの右傾化と言われる傾向は、自分には縁のないものと思ってましたが、私のブログの内容上、たまにそっち系の方のコメントももらうので、ちょっと気になっています。
2013/1/13(日) 午前 8:54
やはり水村美苗『母の遺産−−新聞小説』というのに興味が引かれます。
やはり父のこともあり、求めているものがあるのかもしれませんね。
2013/1/14(月) 午後 4:22 [ もたんもぞ ]
>もたんもぞさん:そうですね、私もいずれそういう場面に出くわすことがあると思うので、一度は読んでみたい作品です。川本三郎の評もいいですよね。
2013/1/14(月) 午後 11:23