読書のあしあと

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ブルックナー『秋のホテル』/回想のMy Best Books #1
 
“書評その後”について書いてみる、「回想のMy Best Books」第一弾はイギリス文学『秋のホテル』です。
書評自体はこちら ⇒ 書評182:『秋のホテル』
 
『秋のホテル』こそ、読んでいる間よりも読後の方が余韻が深く続くタイプの小説です。
主人公のイーディスは、中年に差しかかった知的で繊細な女流作家。真摯に愛を求めるがゆえに躊躇し
続ける彼女の心理を、硬質な文体で丁寧に描ききった傑作でした。
 
イーディスは、自らを有名な逸話「兎と亀」の亀に例えます。素朴で世間知らずな亀は、実直に愛人を
思い続けるのです。
しかし、世の中はいつも兎が勝つようにできている。
イーディスはそれを知りつつも、やはり自分の生き方を変えることはできない。
亀であり続けることを決意した彼女の姿は、本を閉じた私の中に、得体の知れないモチベーションを沸騰
させました。
「それでいいのだ」
「亀は亀らしく生きて欲しい」
 
 
本書は、日本ではベストセラーになった訳でもない、地味な小説にすぎません。
しかしあれから3年、今思えば、イーディスのような女性は、意外とたくさんいるのではないか、と思うよう
になりました。
世間では、兎が飛び跳ねる「婚活」ブームが未だに衰えない中、地味だけど誠実な亀は日本中にいる
のではないか。 (誤解ないように付け加えますが、婚活自体を否定するわけではありません)
 
そう思うようになったのは、私自身、ブロ友さんやリアルの知り合いの中にイーディスを発見してきたから
にほかなりません。
そして、そういう人に触れる度に思うのです。
「亀は亀らしく生きて欲しい」
「できればその先に望むような幸せがあって欲しい」
「もしそれがなかったとしても、亀であることを理解し、共感する人がいることを知って欲しい」と。
 
 
『秋のホテル』という地味な小説は、私を含めた亀たちへの、静かで力強いエールになるはずだ、と思う
のです。
 

閉じる コメント(7)

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なんだか身につまされそうな物語ですねf^Θ^;) でもカズオ・イシグロのような味わいのある小説なのでしょうか。今読んでいる本が終わったら早速読んでみます。
私も兎型の人生が羨ましかったですが、順調な道を行ってると思われてる人でもつまづいたり病気になったり、他人には分からない苦しみがあると年と共に分かるようになりました。人生はうまく出来てると思いますよ。

2013/5/10(金) 午後 4:27 [ - ]

こんな世の中ですから、誠実な人が描かれた本を読むとホッとします。
大三元さんの記事に背中を押されるように購入を決めました。
読むのがとても楽しみです。
紹介ありがとうございます。

2013/5/10(金) 午後 7:40 goo*y

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3年前に読んだ本が、今も大三元のなかに生き続けているんですね〜。私ってば、読み飛ばして終わりで忘却するばかりなので、反省。
でもでも、自分が読んだ膨大な小説、活字は、心のどこかにしんしんと降り積もってゆくのだろうし、そのとき感じた思いは永遠に失われることはないのでしょうね。
知らず知らずに、今の私を動かしてるのでしょう。
だから、読む本を選ばなければならないな〜と思うようになりました。
「秋のホテル」 読んでみたくなりました。
間違いなく亀な私には、共感できて人生の支えになる一冊かも知れません。

2013/5/11(土) 午前 10:29 [ わかめ ]

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>ちょいこさん:『秋のホテル』は『日の名残り』と同じくブッカー賞受賞作です。端正な文章、じわじわと沁みる「重さ」なども似ていると思います。色んな経験を積まれた女性の感想を聞いてみたくなるような小説です。
そうですか、そういうものなのかもしれません。私自身、また周りの友人たちも、まだまだ色んな経験が必要なんだと思います。

2013/5/13(月) 午後 11:28 大三元

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>goofyさん:goofyさんのように、一生懸命生きている方に読んでもらえば、ブルックナーも本望だと思います。願わくば、goofyさんの心に残り続けるような作品になれば、このブログの意味も少しはあったかもしれません。

2013/5/13(月) 午後 11:29 大三元

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>内緒さん:そうですか、一瞬意外なコメントでした。
しかしよく考えてみれば、そういう逡巡こそ、“誠実な亀”に相応しいように思えてきました。あっけらかんと飛び跳ねることができるのは兎であり、何も考えずにじっとしているのは単なる憶病です。迷いながら、躊躇しながら、真摯に考え続けるのが亀なのではないでしょうか。
そう、かつてイーディスがそうであったように。

2013/5/13(月) 午後 11:38 大三元

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>わかめさん:そうです、自分が読んできた本が、自分をかたちづくっていると思います。その形跡を、自ら確認してみようというのがこの企画の趣旨です。
単に「本を読んだ」で終わるのではなく、本当に自分にとって大切な本は、自分のものの見方、生き方に決定的な影響を与えているはずです。皆さんのそういう記事も読んでみたい気がします。
『秋のホテル』は、わかめさんにとってもきっと何らかの「重み」を残してくれる本だと思いますよ。

2013/5/14(火) 午前 0:33 大三元


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