書評268 筒井康隆『時をかける少女』(角川文庫<新装版>、2006年)アニメ映画の名作『時をかける少女』の原作を、いつか読みたいと思っていた。先日、蓮さんのブログで筒井康隆の名前を見て、思い出して手に取ってみた。 【著者紹介】 つつい・やすたか (1934年─) 小説家、劇作家、俳優。 大阪生まれ。同志社大学文学部卒業。日本を代表するSF作家の一人で、ツツイストと呼ばれる熱狂的なファンを持つ。2002年紫綬褒章受章。 『虚人たち』で泉鏡花文学賞、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、『ヨッパ谷への降下』で川端康成文学賞、『朝のガスパール』で第12回日本SF大賞、『わたしのグランパ』で読売文学賞受賞をそれぞれ受賞。 本ブログで取り上げた作品に書評118:『家族場面』がある。 【収録作品】 時をかける少女 悪夢の真相 はてしなき多元宇宙 【本書の内容】 放課後の誰もいない理科実験室でガラスの割れる音がした。壊れた試験管の液体からただようあまい香り。このにおいをわたしは知っている―そう感じたとき、芳山和子は不意に意識を失い床にたおれてしまった。そして目を覚ました和子の周囲では、時間と記憶をめぐる奇妙な事件が次々に起こり始めた。思春期の少女が体験した不思議な世界と、あまく切ない想い。わたしたちの胸をときめかせる永遠の物語もまた時をこえる。 お薦め度:★★★★☆ 【本書の感想】 <時をこえる「時かけ」> いやあ、これはいいですよ。 少女趣味と言われようと何だろうと、いいものはいい。 淡い初恋と甘酸っぱい青春を駆け抜けるように描く、正統派の短篇である。 初出は1965年で、「まあ!どうしたのかしら?」など古めかしい表現もあるが、ありふれた学校生活は今でも変わらないので、すんなり読める。 私が観た映画はアニメ版だけで、原田知世版や仲里依紗版は観ていない。それでも読んでいるあいだに、「未来で待ってる」とか「うん、すぐいく。走っていく」とか、名台詞が耳にリフレインして、余計に切なかった。 SFやジュブナイルの枠を超えて、もはや青春小説における現代の古典と言ってもいいかもしれない。 何度も映画化される作品には、やはりそれだけの理由と価値があると改めて思った。 少女は時をかけ、『時をかける少女』もまた時をこえて愛され続けるのだ。 <筒井康隆と太宰治> 本作はジュブナイルだけに、いわゆる筒井文学の、書評118:『家族場面』のようなドギツさやぶっ飛び方は控えられている。 こんなに正統派の、後世に読み継がれるような傑作も書けるなんて、筒井康隆はやはり大作家である。 そんなことを考えていると、筒井康隆って、何だか太宰治に似ているような気がしてきた。 筒井はSF作家、太宰は暗い内向的な作家のレッテルを貼られているが、実は二人ともあらゆるジャンルの作品を縦横無尽に書き尽くしているし、その表現力も万華鏡のように多様だ。 そして、この「時をかける少女」はあの名作「走れメロス」を思い起こさせる。 一気呵成に読ませる疾走感、胸躍るストーリー、思春期特有の敏感な感性、極めつけは淡い恋心。 筒井康隆の他の作品も読みたくなってきた。
ちなみに、本書に収録された他の2篇もジュブナイルだが、残念ながら「時かけ」を読んだ後では見劣りする。 「時かけ」と比べるなという話かもしれないが。 |
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へー、少し意外でした、
私は原作も映画もみていませんが、幼い頃NHKでドラマ化され(題名は別)たものをみていました、毎週毎週それはそれは楽しみで。。。
嵌りましたね!^^
ラベンダーの香りをつい思ってしまいます。
2013/5/15(水) 午前 9:41
10年間慣れ親しんだXPからのリタイヤを望む悲鳴を感じて、win8を購入したものの、その「タッチパネルまがい」の本性が分かるにつれて日々苛立ちがつのっているAKIKOです!(^^)!
この作品は、まず大林宣彦監督バージョンをTVで偶然観て、詩情あふれる内容に感動、でも原作者を知って唖然・・・あのエロ・グロの権化みたいな筒井康隆(と思いつつ決して嫌いではないのですが!(^^)!)にこんな本が書けるわけが無い、原作はまったく違っていてモチーフか何かだけを拝借して大林監督がアレンジしたんだろう・・・と思っていたのですが・・・結局、原作を読んで新たな感動・・・筒井康隆氏を嫌いになれない理由が分かった・・・という感じです。館長様もこの作品をお好きとは・・・嬉しい限りです。
☆!
2013/5/15(水) 午後 5:30
と思ったらもう☆は無いんですね。
ナイス押してみましたが、うまくいってるのかしら(ブログ・デバイドに陥っています(涙。)
筒井康隆・太宰治類似説は・・・賛成しかねます( ^^) _U~~
2013/5/15(水) 午後 5:45
角川文庫にあるなら、買うの、恥ずかしくないかな。他のものも一緒に買えば。
2013/5/15(水) 午後 6:57
筒井康隆は中学からファンでシリアス・ジョブナイルは七瀬三部作が好きですね。「時をかける少女」は原作より原田知世主演の映画が素晴らしく、印象に残っています。筒井康隆はどんなにどぎつい作品を書いてもサービス精神と知性が感じられますが、太宰は……川端康成が「才あって徳なし」と評したのが今は分かります。
2013/5/15(水) 午後 9:07 [ - ]
むかし、10代のころ、アメリカのSFに夢中になり
学校でいねむりばかりしていた記憶がありますが・・・
「時をかける少女」のテレビ版で久々にそのドキドキ感を
思い出しました。
原作は読んでませんが、やはり原作に力があるんでしょうね。
2013/5/15(水) 午後 11:31 [ pilopilo3658 ]
>凛さん:これが何度もドラマ化・映画化されたおかげでラベンダーが流行ったという説もあり、ある世代にとっては相当な影響力っだったと想像されます。ドラマ版も昔の映画版もいいらしいですね。
2013/5/16(木) 午後 10:37
>AKIKOさん:おおおおお、お久しぶりでございます!
何年かぶりに館長と呼ばれて懐かしさを満喫しています。
継続は力なり…かどうかはわかりませんが、こうやって長く続けていると旧交が復活するというのもあるものですね。
今度はいなくならないでください(笑)
2013/5/16(木) 午後 10:39
>AKIKOさん:さて本作についてですが、私も一般的な筒井康隆のイメージとはかけ離れているのでびっくりしました。以前読んだ作品が世間的に言われているツツイ文学だったので、本当に同一人物の作品?という感じです。
筒井・太宰類似説は、作風が近いというより、実際の作風の幅広さにもかかわらず世間的なステレオタイプが画一的な点ですね。太宰治も一般には『人間失格』のような暗いイメージばかりで、「畜犬談」のような笑える作品があることは知られていないように思います。
2013/5/16(木) 午後 10:43
>蓮さん:本書を読むきっかけをいただきありがとうございました。薄いですし読み易いので、オススメです。他の2篇は微妙ですが、「時かけ」だけでも買う価値アリです。
2013/5/16(木) 午後 10:45
>ちょいこさん:原田知世版は皆さん絶賛しますね。一度観てみたいです。
太宰は川端に「徳なし」と言われてしまうのもわかります。でも、ある意味そこが人間臭く、共感を呼ぶ麻薬的な要素もあるのだと思います。
2013/5/16(木) 午後 10:47
>あおちゃんさん:そうですね、100ページもない短篇ですし、意外なほどあっさりしていて、スピード感もあるので一気呵成に読めてしまいます。読んだ感じ映像化は難しそうな印象ですが、何度も映像化されるということは、それだけの価値があるということですね。
2013/5/16(木) 午後 10:50
中学生の時だったか、読みましたよ。最後、すべての記憶を消されているのに、ラベンダーの香りを嗅いでなにか甘酸っぱい気分になるというくだりが良かったですね。
筒井康隆だったとは知らなかったです。彼の作品ってこれしか読んでいないけど。村上春樹も「太陽の西…」しか読んでいないけど。
二度映画化されたんですか。原田知世の時の主題歌はよく覚えているけど、映画はどちらも観ていません。
2013/5/18(土) 午後 9:42 [ nagata ]
>nagataさん:中学時代の読後感を覚えてらっしゃるとは、さすがです。でも、それだけの鮮烈さを秘めた作品ですね。
映画版は、原田版も評判がいいようです。映画は観てないけど主題歌は好きという方も多いですね。
2013/5/20(月) 午前 1:45
私にとってこの本といえばなんといっても「少年ドラマシリーズ」の「タイム・トラベラー」。ケン・ソゴルは初恋の人だったかも?!(笑)
ラベンダーの花、というのを知ったのも本書でした。懐かしいなあ。
2013/6/29(土) 午後 8:10
>Cuttyさん:そのようにおっしゃる方は多いですね。ラベンダーもこのドラマで全国的に有名になったそうで。
私はアニメ版しか観ていないので、台詞も全部そのバージョンで耳に残っています。
2013/6/30(日) 午前 0:04
ぼくも遅ればせながら、最近読みました。
大三元さんのこの文章は忘れていたのに、今日また読んでみると、この小説について、結局、同じような感想を持ったことがわかりました。
2013/12/13(金) 午前 10:49
>蓮さん:おお、読まれたのですね!早速伺います。
この作品は、わりと世代やジャンルを越えて万人受けするのではないかと思います。
2013/12/13(金) 午後 3:25
突然失礼します。
「時をかける少女」は私の大好きな作品で、本も読みましたし、映画も見ました。
映画を見たのは随分と前なので、またみたいな
2014/7/15(火) 午後 0:40 [ ぷりん君。 ]