読書のあしあと

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書評275 小川洋子

『心と響き合う読書案内』

(PHP新書、2009年)

好きな研究者や作家の書評を読むのは、自分が信頼する人のブログを読むのと同じ面白さがあると思う。
皆さんも、夏休みのお供に読書案内などいかがですか。


【著者紹介】
おがわ・ようこ (1962年─) 小説家。
早稲田大学第一文学部文芸科卒業。1988年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞、1991年「妊娠カレンダー」で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』で読売文学賞・本屋大賞、同年「ブラフマンの埋葬」で泉鏡花文学賞、2006年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞をそれぞれ受賞。
本ブログで取り上げた著書に書評35:『博士の愛した数式』書評40:『偶然の祝福』書評47:『余白の愛』書評63:『シュガータイム』書評88:『深き心の底より』書評230:『ミーナの行進』がある。


【本書の内容】
人間が虫になることよりも、さらに不気味な不条理を描いている『変身』(カフカ)。言葉では書けないことを言葉で書いた『風の歌を聴け』(村上春樹)。「自分のために詠まれたのでは」と思える歌が必ずある『万葉集』…。小川洋子さんと一緒に、文学の喜びを分かち合いませんか?本書では未来に残したい文学遺産を52編紹介します。若い方にとっては最高の文学入門。「本の虫」を自認する方にとっては、新たな発見が必ずある作品論です。人気のFM番組「Melodious Library」、待望の書籍化。


お薦め度:★★★☆☆

【本書の感想】
古今東西、短篇長篇を問わず、小川洋子がお薦めする52作品を紹介。
ラジオ番組の書籍化らしく、それぞれの作品紹介がコンパクトにまとめられている。

肩肘張ることなく、自分がいいと思った部分、好きなところを率直に語るあたりが小川洋子らしい。
また、本のチョイスも独特だ。
『万葉集』から『ファーブル昆虫記』まで、時代、国内外、分野を問わず挙げているあたり、豊かな読書遍歴が小川作品を育ててきたのだろうと察することができる。

以下、未読の本で気になった評を抜書きする。今後の読書の参考にしようと思う。



◆梶井基次郎「檸檬」
檸檬を丸善に置いて帰るという、それだけの話です。これは俳句に近いと私は感じます。あるいは、盆栽。小さな器の中に、全宇宙を表現するという日本人特有の感性がまずベースにあると思います。……その日本的な感性の中に、エンジニア的な冷静さで情緒に流されない観察眼を持ち込み、西洋的なクールな一面を織り交ぜた。(42―43項)

◆川端康成「片腕」
もしかしたら自分の中にも、こういう狂気、醜さ、あるいは残酷さといった邪悪なものが潜んでいるのではないか、それを自分自身も気づかずにいるのに、この「片腕」を読んだために、気づかなくてもいいことに気づいてしまうのではないか……そういう恐ろしさがあります。(58項)

◆中勘介「銀の匙」
少年の内面をここまで繊細に描き出した作品はほかにない(71項)

◆村上春樹『風の歌を聴け』
私が村上文学で最も新しいと思うのは、その傷を言葉で書きあらわすことはできないのだ、ということを書いている点です。(111項)

◆梨木香歩『家守奇譚』
どれくらいまで人は許せるのか、という不思議の行けるところまでいってみた小説(120項)

◆田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」
若いカップルの心のみずみずしさ、まだ稚拙だけれども一所懸命でひたむきな愛を、どうしてこんなに鮮やかに描けるのだろうと驚きます。(172―173項)

◆マンスフィールド「遊園会」
大人でもなかなか感じ取れない人生の深淵を、少女は、その暗い小さな家の片隅で、パッとつかみ取ったのです。これはちょっと並大抵な感受性ではない、と思います。(221項)
このラストシーンがとてもいい。言葉にできないことを描いた小説、これが傑作たるゆえんでしょう。(222項)

◆向田邦子『思い出トランプ』
向田さんの小説は、脚本家独特の視点から綴られていると思います。……たとえ直接描写しない部分でも、完璧に把握している、この人の前ではどんなごまかしもきかないというような鋭い視線で小説を書かれた方だと思うのです。(239―240項)

◆フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』
ひたすら絶望という一点にのみ、物語は突き進んでゆきます。誰もギャツビーを止めることはできません。しかし、ラストシーンを迎えた時には、ああ、人はここまで人を愛することができるものなのか、という感銘の境地にたどり着いています。(248項)

◆佐野洋子『100万回生きたねこ』
ほんとうに死ねるということは、幸せなことなのです。



また、ここでは引用しないが、これまでこのブログで書評してきた本も多く取り上げられており、比べてみるとわれながら興味深い。
やはり小川洋子とは好みが合うなとか、ここはこういう読み方をするのかとか、自分の書評と言っていること全く一緒!とか。
以下、このブログで取り上げた作品。

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