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あのカズオ・イシグロの名著書評153:『わたしを離さないで』の映画化ということで、公開当時から観たかったものの、おっかなびっくり。今回やっとDVDで鑑賞です。 監督:マーク・ロマネク
出演:キャリー・マリガン (キャシー) 、アンドリュー・ガーフィールド (トミー)、 キーラ・ナイトレイ (ルース)、 シャーロット・ランプリング (エミリ先生) 、サリー・ホーキンス (ルーシー先生) 《ストーリー》 緑豊かな自然に囲まれた寄宿学校“ヘールシャム”。そこは、牧歌的な田園地帯にありながら外界からは完全に隔絶され、徹底した管理が行われている謎めいた施設だった。そんな静かで整然とした環境の中で、幼い頃からずっと一緒に育ってきたキャシー、ルース、トミーの仲良し3人組。やがて18歳となった3人はヘールシャムを卒業して、農場のコテージで共同生活を送ることに。初めて接する外の世界に不安や喜びを感じていく3人。そして、いつしかルースとトミーが恋人になったことで3人の関係も終わりを迎えようとしていたが…。(allcinemaより) うーん。重い。。。 映画としての完成度は高いし、心にずしりとくるものはあるけれど、これじゃあ救いようがない。 というのが、原作の大ファンの感想です。 !! ※ここからは完全にネタバレです !! いや、原作も十分重いです。 この映画が原作と決定的に違っているのは、ヘールシャム時代のポジティブな思い出が全くないこと。そのことで、映画全体が救いようのないものになってしまっている。 原作では、はじめ彼女らの将来に何が待っているのか、はっきり明かされません。普通の学校とは違う、ちょっと特殊な施設で育つ子どもたち。でも、彼女らは普通にサッカーをし、叱られ、友情を育み、恋をした。読者はこの子たちも同じ人間なんだと感情移入できるからこそ、その後の悲劇にも共に共感し、でもあんな楽しい思い出もあった、と共に回想できる。 このことは、以前の書評で強調した通り、この作品を単なる悲しい物語で終わらせない、悲しさの中に共感とカタルシスを感じさせる核があると思っています(書評153:『わたしを離さないで』参照)。 しかし映画版では、このポジティブな思い出がバッサリ切られているために、悲劇から悲劇へ転がり落ちるだけのストーリーになっている。“終了”を迎えるときの、あの胸に迫る「悲喜こもごも」が、「悲」だけになってしまっている。 そのため、原作にもあった「重さ」は十分過ぎるほど伝わるのですが、原作から受ける感動はそれほどではない、というか質が全然違う。 原作を読んだ人の中にも、悲しいだけで感動はない、という感想をちらほら見ましたが、この監督は原作をそのように読んだのかもしれません。 とはいえ、演出は素晴らしいです。イギリス文学の映画化はやはり完成度が高いですね。 主演のキャリー・マリガンは素晴らしい。映画『華麗なるギャツビー』を先に観ていたのですが、デイジーとは全く違う、運命に翻弄されるヒロイン・キャシーを演じきっています。個人的な好みだっていうのを差し引いても、この雰囲気、かわいらしさはキャシーにぴったりではないかと。 キーラ・ナイトレイは映画『プライドと偏見』でエリザベスを見事に演じていましたが、ここでは汚れ役のルース。しかしルースの最期もショッキングだった。。 と、原作を2009年のマイ・ベスト・ノベルに推しただけに、違和感を全面に出したレビューになってしまいましたが、決して駄作ではないと思います。
悲しくて重いですけど、ね。 |

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