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カズオ・イシグロさんの小説。純文学になるのでしょうか。いい本読んだな〜って感じです。ストーリーを説明するとたちまちネタばれになってしまうので、なるべくストーリーに触れないように気をつけて感想を書こうかと思います。しかし、これから先入観なく読みたいと思っておられる方は、ここは読まない方がいいかも。というよりも、感想やあらすじが書いてあるものはいっさい読まずに、いきなり小説にトライされることをお薦めします。
この小説はですね、だんだんに明かされる主人公やその友人たちの生い立ちがひとつのポイントになっているのですが、実はそのネタは意外とわかり易いのですね。ちらっと見てしまったこの本の裏表紙のあらすじと、本文の最初の3ページほどで、ハニーにはピンときてしまいました。これと似た設定のお話はたくさんあるのではないかと思います。ハニーもすぐに、映画とアニメでそれぞれ一つずつ思い浮かびましたから。
しかし、著者のイシグロさんは、この設定で読者を驚かせたかったわけではないと思います(それじゃ古すぎです)。彼が描きたかったのは、「良い教育を受け純真無垢で将来有望な若者たち。しかし、意外にも彼らに待っていたのは過酷な一本の道だけ。そのとき、彼らは・・・。」というお話だと思います。
この場合、「戦時下にいきなり徴兵されて特攻隊員に」とか、「学業半ばにして政略結婚で中年男性に嫁ぐ少女」とか、いろんなパターンがあるかと思います。しかし、どれにしても、あの時代は大変だったんだね、とか、あの国はしょうがないね、とか、時代設定が過去でも現代でも、所詮読者は第三者的に距離をおいて読むことになると思うのです。
しかし、この小説のようにある種の架空の設定を用い、しかも、誰にでもありそうな学校内の人間関係を微細に描写していくと、なぜか第三者的には読めなくなります。不思議とより身近に感じ、あったかも知れない自分のお話になるのですね。この方法は、失敗すると中途半端なSFチックな作品で終わってしまうと思うのですが、イシグロさんの場合は綿密な人間描写で大成功を収めていますね。
主人公の一人称で書かれ、過去を回想していくという形ですが、彼女の思いは時間を行きつ戻りつするため、結果的に彼女の人生でターニングポイントとなるいくつかの出来事は、何度も角度を変えて描かれることになり、最終的に読者の心の中に深く残ります。こういった書き方も心にくいですね。
著者の名前とこの本の題名は知っていましたが、まさか、こういった本だとは思いもよりませんでした。いやあ〜、ほんとに驚きました。そして、過酷な内容にも関わらず、読んでいていやな感じが全くしないのもいいですね。しかも、読んだ後はいろいろ考えさせられます。著者はこの物語に何を投影したかったのか・・・。もしかしたら、イシグロさんのような他国で育つ日本の若者の現実だったのかも知れませんが、どの国の人からも、まるで自分のことのように受け入れられたはずです。
まさか、この物語で描かれたような境遇の人たちが、実際にアンダーグラウンドにたくさんいて、その暴露ってことではないですよね?(@_@;)
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こういう設定で、ミステリにもSFにもならず、ただひたすらに切なく感動的に迫ってくる小説でしたね。
2011/4/12(火) 午後 6:02
架空の設定でも人間がしっかり描けているから、純文学として認識できるんでしょうね。
2011/4/13(水) 午後 8:12
こんにちは、HONEYさん♪
お久しぶりです、nekiです。
相変わらず読書していますね〜。「わたしを離さないで」私も英語版ですが読みました。日本語の翻訳がどのような感じになっているのかは分らないのですが、英語ではとても切ない心がひりひりするような、それでいて夢の中を歩いているような、カズオ・イシグロ独特なリズム感や色彩にどっぷりとつかれる作品だと思います。因みに、映画はカズオ・イシグロ監修だけあり原作とは違う点も多々あるものの、原作の雰囲気がよく表現されている感じでした。とにかく風景が夢の中で見るように美しいのも印象的です。彼はイギリスのサリー州で育った様です。私の妹の旦那の実家がサリー州にあり、実際に行ってうろうろしてみましたが、ロンドンからも近い(特急で20分)がとても美しい自然の豊かなところでした。機会があったら映画も観てみてくださいね。
2011/8/6(土) 午前 10:06
nekiさん、お久しぶりです。
日本語訳は品のいい「ですます調」で、大人っぽさ女性らしさが出ていたと思います。私もいつかは英語版に挑戦してみたいけど、まだまだ先ですね〜。(@_@;)
映画も観てみたいですね。ネットで調べた感じでは、今をときめく若手の役者さんたちが演じていて、服装も私好みでした。風景もいいのなら楽しめそうです。
2011/8/8(月) 午前 0:49