|
サトクリフさんの児童文学ですが、ちょっと今回は勝手が違います。ローマン・ブリテン物でもなく、その前のケルト民族の時代でもなく、なんとヘンリー八世とアン・ブリンの時代なのですから。しかも、青年ではなく九歳の少女が主人公です。
両親のいない少女が、新しい家族に引き取られて新生活を始めるところなど、少女小説の典型ですね。日々の生活描写に重点が置かれているところ、主人公が幼いながら早くもベターハーフ(未来の伴侶)的存在がみつかりロマンチックなのもまた典型的。最後はやっぱりこう終わらないとだめだよね、と思っているとちゃんとそう終わるし。
でも、ちょっと待って。私が言っている少女小説っていうのは、自分が幼い頃に読んだオルコットとか、バーネットとか、モンゴメリとかそういった作家さんの作品なんですが、それってその作家さんたちにとっての現代の小説なんですよね。
そして、サトクリフさんが描いているのは中世のロンドンでのお話。もちろん著者にとっても読者にとってもずっと過去のお話であるのに、まったくそう感じさせず、思わずオルコットと比較させたりできてしまう・・・。実はそれがサトクリフさんのものすごいところなんです。これ、『第九軍団のワシ』よりも三年前の作品だそうですが、既に物語世界の時間と空間の中にすっぽり読者を引き込む技術が確立しているんですよね。
それから、タイトルにもなっている「イルカの家」ですが、これは家の軒の飾りがイルカの形をしているところから、この家の住人や近隣の人々がこの建物をこう呼んでいるのです。が、イルカと聞いてなんかぴんときませんか?
そう、ローマン・ブリテン物のアクイラ家は代々イルカの紋章だったのでした。そして時代が下ってその紋章が軒の飾りとして使われているのだとしたら・・・。ロマンがありますよね。『イルカの家』の方がローマン・ブリテン物よりも先に書かれたということは、サトクリフさんはイルカの軒飾りから逆算してイルカの紋章の指輪を登場させていることになりますね。
それから、ハニー的には話中話のおとぎ話がものすごく好みでした。特にお姫様の方が行動してがんばる系の物だったので、さすがはサトクリフと思いつつ先進性を感じましたね。今のディズニー映画とかでも、お姫様や女の子が助けてもらうのを待ってるだけのお話ってもうないですよね?
あ、あと、白魔法使いのおばあさん的人物が出てくるのもツボですね。そもそも、魔法使いっていうのは民間療法師さんだったわけで、そういうところがしっかり描かれているのもいいですね。妖精の存在を信じる民族性もよく表されていてその辺もいいです。
主人公のつらさや哀しさも描かれてはいるものの、全体としては心温まるかわいらしいお話でした。これは保有して何度も読み返したくなりますね。好みでした。はい。(*^_^*)
|
全体表示
[ リスト ]




