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昨日の投稿からの続きです。

連銀ロサンゼルスは6階ほどの建物であるが、小切手のプロセスは4階にある。担当地区にある銀行の銀行という役目を果たしているので、高速の小切手処理システムを行っている。最近は小切手を物理的に扱わず、エレクトロニクスの発達で、スキャナーに取り込み電子的に高速処理するプロセスも見学した。しかし、なんといってもここの見学の圧巻は地下にある大金庫の見学である。(英語ではこれをvaultという。まったく同じスペルで棒高跳びの意味もあるが)
見学といっても大金庫の中に入れるわけではない。厳重に施錠されている鋼鉄の格子を通して中を垣間見るわけだが、大金庫から空調で流れてくる空気にはお金の匂いがする。これは本当だ。縦横2メートルほど、高さ1メートル半ほどの厚手のビニールの袋に入っている金額は5,400万ドル。このビニールの袋が巨大なスーパーのような空間に並んでいる鋼鉄のラック(棚)の上にぎっしりと積んである。上げ下ろしはもちろん、フォークリフトを使う。一体この大金庫にはいくら位のお金が入っているのか聞いてみたが、それは機密ということで教えてはもらえなかった。

今回のウオール街メルトダウンで政府系住宅金融公社のファニーメイやフレディーマック、保険会社AIGに投入される公的資金(税金)が7,000億ドルというが、この金額を実際の札束で勘定してみると、この厚手のビニール袋が13,000ほど必要になることになる。1袋だけでも私にまわしてもらいたい、というのが誰しもの願いだろう。だが実際、今回の金融危機を招いた元凶ともいうべきデリバティブをもて遊んだ会社のCEO,COO達の中には、はやばやとこのビニール袋をもらって、後は野となれ山となれ、と涼しい顔をしているものがいるかと思うと納得が出来ない。彼らにとっては金融デリバティブは本当にThe Midas Touch錬金術だったのだろう。

見学を続けよう。地区にある銀行から日常業務に不必要な札束が毎日現金輸送車で搬入される。銀行がデポジットに来るわけだ。また逆に現金が不足した銀行へは、連銀は預かっている預金の中からその銀行へ札束を届ける。この作業は厳重なセキュリティー管理の下で行われるが、いったん、受け取った現金は高速プロセッサーで数えられ、レーザー光線をあてて偽札を判別する。偽札は各銀行でまずふるいにかけられるが、専門家でも見逃す巧妙な偽札があり、うまく銀行の目を逃れても連銀のプロセスで発見される。偽札を受け取った銀行はその額だけ自己の損失となるから、厳重にチェックするのだろうが、国家的組織がドル札を偽造すると見事な出来栄えになるのだろう。偽札は毎日のように発見されているそうだ。偽札が発見されるとその扱いはシークレットサービスの担当になる。

連銀では破損したり汚れたりしたドル札を処分して、新しいものに交換している。その額1日に3,500万ドル。以前はこれを焼却していたが、現在はリサイクルのため、シュレッダーで裁断した後、それを業者に卸してTシャツを作らせている。ドル札は特殊なインクを使用しているので出来上がったTシャツは文字通りGreen Backである。廊下に陳列されていた。

ツアーが終わると米国でいままで流通したドル札が展示されている場所へ案内された。ここには1万ドル札や5千ドル札などが展示されており、南北戦争時代に発行した紙のコインもあった。北軍は武器製造のため、金属を必要とし、コインの製造は当時、お札にとって代わられたようである。日本も太平洋戦争の時、献納といって貴金属を戦争のため寄付させられたことがある。収集家がもっている価値ある正宗の名刀などはその献納を逃れたが故に現存しているのだろう。この展示場には偽札が沢山展示されているが、拡大鏡を使っても素人には偽も本物も見分けがつかない。廃棄札に関しては、以前、旧式のシュレッダーを使っていた時、二人が作業、一人がその作業を監視する体制を取っていたにもかかわらず、廃棄された筈のお札が流通したことがあったそうだ。単純作業を1日行うので多分、見張りの人間が居眠りでもしている間に作業の二人が結託して廃棄せずに持ち出したものと思われるというエピソードが語られた。

さて最後に連銀のもうひとつの役割を述べよう。それは各銀行に対する監督と規制を行っている業務である。これは連銀の役割がアメリカ国内の場合であれば容易だったが、現在は金融のグローバル化によってその業務が国際的に拡大している。例えばアメリカ国内には世界中の主だった銀行が174行営業している。総資産は7兆ドル以上あり、これはアメリカの銀行資産の22%にあたる量である。53カ国からの銀行が出店しているので各国の金融政策、規制にも精通していなければならない。Union Bank of California, BNP Paribas, Bank of the Westなどは外国の銀行が投資した国内のメジャーバンクである。連邦準備法はいくつかの法律の下で銀行業務を規制しているが、その主なものはInternational Banking Act(1978), Foreign Bank Sup. Enhancement Act(1991)などである。

連邦準備銀行制度はいま、世界的金融混乱の只中にある。ダウ平均が一日に500ドルも上下するのは到底正常な動きとは言えないだろう。それはグリーンスパンがその著書で言ったThe Age of Turbulenceどころの騒ぎではない。現在はまさにThe Age of Havoc(大破壊)だ。ちょうど現在の制度が1900年初頭の金融大混乱時代の教訓から設立されたように、今のHavocからはどのような制度が生まれるのであろうか。金融の大混乱はアメリカの基幹産業のゆらぎにおよび、すでにドルの基軸通貨体制が崩壊の兆しを見せている。それはとりもなおさずアメリカの外交・軍事政策の弱体化につながる。すなわち「アメリカの覇権国家の終わりの始まり」ではないのだろうか。連銀には確かに山のようなドル札があった。しかし、冷静に考えればそれはただの紙切れの山である。その紙切れが価値を持つのは、アメリカという国家への諸外国の信頼があり、それに裏づけされてこそなのだ。新しいアメリカの大統領の決定まであと1週間、果たしてアメリカは国際社会の信頼を再び取り返すことが出来るのだろうか。
連銀ロサンゼルスの視察レポートを終わります。

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とても解りやすく、貴重な体験談ありがとう。
今後も期待しております。^^

2008/10/31(金) 午後 2:39 J1visa_internship

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