|
25.柩の大陸 The Continent of Coffines
その(2)
人類は生きる為にエネルギーを必要とする。薪を燃やせば暖はとれるが60億の人間が薪を燃やせば地球上の森林はあっという間に消滅してしまうだろう。人間の数と地球上の資源のバランスがもうとっくに不均衡になっているのだ。
人間や物質が移動するには車や飛行機や船が必要だ。そのエネルギーは石油からとっている。その石油は地球が何十億年かけて地中に埋蔵してきたエネルギーのかたまりである。けれどもこの石油も埋蔵量には限りがあり、現代の科学で割り出された確認可採埋蔵量を人類が1年間に使用する石油消費量で割ると、どう計算してもあと40年という数字が出てくるそうだ。クリスマスを40回祝うともう石油が全然ないのだ。さして長い期間ではない。今生まれている赤ちゃんは石油のない時代を経験するのである。
人工の増加と急激なエネルギーの消費量の増大を考えれば、もっと早く石油は枯渇するかもしれない。ここに原子力発電所、原発の役割がある。
現代の社会は電気がなければ成り立たない。情報化社会は停電すればすべてがストップする。夜は暗闇だ。コンピュータ、銀行のATM、電話、FAX、テレビ、ラジオ、あらゆるもおが働きを失う。その電気は何からつくるか。火力発電、水力発電、そして原発である。原発の発電は総電力消費量のどの位なのか。世界の平均は17%だが、日本は30%に達している。世界には原子力発電所が約420基動いており、アメリカはそのうちの110ほど、日本には46基が稼働している。
原発は原子力を使うのだから事故があれば原子爆弾のように爆発するのではないかと心配する人がいるがその心配はない。原爆は100%の濃縮ウランを使用するにくらべて原発は4%程度の濃縮ウランしか使用しない。原爆は核分裂をわずか10万分の1秒に連鎖反応させるものだが原発はこの反応をゆっくりゆっくり起こしており、原爆のように一瞬に爆発させるには特殊な装置が必要だからだ。原発がなぜ大問題になっているのか。それは原子力発電をすれば必ず放射線廃棄物を発生させるからだ。これは避けて通れない。なかでもやっかいなのは使用済み核燃料を再処理した後の「高レベル放射性廃棄物」である。
原子炉における各燃料サイクルについてH君は科学者ではないので詳しくは知らないが、彼の知る限り何でも原発の材料になるウランは精錬され、濃縮され、燃料棒に加工され、原子炉の中で核分裂を起こして次第に減っていくが、逆にプルトニウムが生み出されてしまうそうだ。燃料棒は4年使うがその後で再処理する。再処理とは使用済みの燃料を原子炉から取り出して化学処理し、燃え残りのウランと新たに出来たプルトニウムを取り出し、放射性廃棄物を分離して処分することを言うそうだ。話がだんだんややこしくなってきたので結論を急ぐが、原発問題はこの「高レベル放射線廃棄物」をどこに捨てるか、その最終処分に関する問題なのである。
放射性物質のプルトニウムは放射線の一種のアルファ線を出し、人体に入ると臓器にくっついて長期間放射線を出し続け、放射線は発ガン作用を引き起こし、遺伝子にも影響を与えるということだ。問題のシアリアス性は、だが、本当はプルトニウムの半減期の長さにある。プロトニウムの半分が崩壊するのに必要な時間は2万4000年なのだ。
もう一度言う、24,000年かかるのだ。日数ではない。年数だ。
少なくとも放射性廃棄物が人体に影響を与えないレベルに達するには1万年かかる。それまでこの廃棄物をどこで管理する?(つづく)
|