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北欧に伝わる神話をもとに作られたワーグナーの楽劇「ニーベルングの指輪」は、上演に4日間をついやす大作の歌劇で、およそ以下のようなストーリーである。やはり神様と人間がともに暮らしていた時代のお話。 神々の長ウォータンは全世界を支配する権力を手に入れるため、地下の小人族(ニーベルング)をだまして黄金の指輪を手に入れる。神々族は、巨人族を働かせて天空の城ワルハラを築かせるが、最後のひとかけらが足りないということで、黄金の指輪を巨人族に奪われてしまう。(楽劇『ラインの黄金』) その後ウォータンは地上で人間の娘と浮気して双子をもうける。この人間の子に指輪を取り返させようとして、彼は世界のトネリコの樹に無敵の聖剣ノートゥングを突きさして地上から去る。 成長した後偶然出合った双子の兄ジークムントと、妹であり既に人妻となっていたジークリンデは、再会のその夜に隠していた自分たちの素性を明かし合い結ばれる。トネリコの樹から聖剣ノートゥングを抜いたジークムントは新妻を連れてかけおちする。 神々の長ウォータンはことの成り行きを見て喜んでいたが、妻のフリッカにとがめられ、自らの本心を曲げて、追っ手に追いつかれる二人を見捨てるように戦女神ワルキューレである娘ブリュンヒルデに指示する。ところが彼女は父の本心を知っていたため命令に反してジークムントを助けてしまう。これを見たウォータンは怒り、最愛の娘ブリュンヒルデを炎の山上に眠らせる。(楽劇『ワルキューレ』) 双子の兄妹の子ジークフリートは、巨人族から黄金の指輪を取り返そうとする小人族に孤児として拾われ育てられていた。彼は恐れ知らずで、聖剣ノートゥングを鍛え上げ、巨人族のハーフナーが黄金の指輪を守るため姿を変えていたドラゴン(大蛇)をたおす。返り血を浴びたジークフリートは小鳥のさえずりを聞き取れるようになり、黄金を手に入れたこと、炎の山にブリュンヒルデが眠ることを教えられる。果敢に炎を乗り越えたジークフリートはブリュンヒルデと結ばれる。(楽劇『ジークフリート』) 小人族の息子ハーゲンは父が錬金した指輪を取り返そうと、ジークフリートのことを虎視眈々と狙っていた。彼はジークフリートをライン河のほとりの屋敷に招き、忘れ薬を飲ませたあと、妹のグートルーネと会わせる。ジークフリートは彼女に一目惚れし、二人は結ばれる。 これを知って激怒したブリュンヒルデは、ハーゲンに、ジークフリートの唯一の弱点は背中であることを教えてしまう。ハーゲンはジークフリートを狩に誘い出し、鳥の声を聞いてブリュンヒルデのことを思い出したジークフリートの背を、槍でひと突きにして倒す。 ジークフリートがだまされていたことを知ったブリュンヒルデは、ライン河のほとりに巨大な焚き火を焚かせ、天馬にまたがったまま炎の中に身を投じる。炎は彼女と地上を焼いた後、天上のワルハラ城まで達する。神々は元はといえば自分たちが蒔いた種なので、なす術もなく黙って焼き尽くされてしまう。 炎の上昇気流は大雨を降らし洪水を起こす。黄金の指輪を手に入れかけたハーゲンは、ライン河の濁流に飲まれ黄金もろとも水底に沈んでしまう。そして世界は浄化される。(楽劇『神々の黄昏』) 蛇足ではあるが、兄妹が結ばれ洪水が発生する点は中国の『伏羲と女媧』の神話と似ており、英雄が剣で大蛇を倒す点は『日本書紀』のスサノヲノミコトがヤマタノオロチを退治する話と似ている。巨人族がいたり、神様(天使)が人間の娘との間に子をもうける話は『創世記』の6章にも出てくる。 |
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