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★残業代11.6兆円が消失する?!〜2/2
「労働契約法」の成立が厚労省と労組の悲願
今年4月には、裁判官と労使双方の専門家からなる合議体によって、労働トラブルの解決を図る「労働審判制度」がスタートした。ただ、ここで問題が生じる。労働トラブル解決のための器ができたのはよいが、解決のための判断基準を示す労働契約法が日本にはないのだ。
戦後、マッカーサー率いるGHQ(連合国軍総司令部)統制下で定められた日本の労働法制の骨格は、(1)労働条件の最低基準を罰則規定付きで定めた労働基準法、(2)労働組合の結成を擁護する労働組合法、(3)労働組合と経営者間のトラブル解決手続きを定めた労働関係調整法──の3法からなる。
だが、現行の労働基準法は、最低賃金の遵守や労働時間の上限などを定めているだけ。解雇や労働条件の切り下げ、有無を言わさぬ配置転換などの妥当性は、これまでに蓄積された過去の判例を基に裁判所が判断しており、判決の予測可能性が著しく低かった。そこで、日本労働組合総連合会(連合)などの労働組合と労働法学者や弁護士が要望し、民法をベースにした「労働契約法」を作ろうという動きが2004年4月からスタートしたのである。
前述のように、日本の労働トラブルの年間相談件数は17万件を超えるのに対し、労働裁判の件数はわずかに3000件。ドイツの労働裁判所の56万件、フランスの労働審判所の20万件に比べ圧倒的に少ない。それは、労働の権利関係を明示したまともな労働契約法がなく、裁判の結果を読めないことから、日本の多くの労働者が会社を訴えることなく泣き寝入りしているためだ。これは、厚労省、労働組合の悲願だった。
だが、透明性の高い労働契約法ができれば、労働審判制度の導入と相まって、従業員、元従業員からの訴訟が激増する恐れがある。当然のごとく、財界側は「新しい労働契約法制などいらない」と反対した。特に日本経済団体連合会は嫌悪感を隠さなかった。
そうした中で、議論の俎上に上ってきたのが、ホワイトカラー・エグゼンプションである。「本筋の議論をしていたら、訳の分からないお土産がついてきた」とは、連合の高木剛会長の言葉だ。ある労働組合関係者は、「60年に1度の大改正と言われる労働契約法を成立させるために、厚労省と労働法学者が、財界と机の下で手を握った」と解説する。
利害が絡み合って声高な論争にならない
ホワイトカラー・エグゼンプションは、労働契約法を通すために差し出された後付けの交換条件みたいなものだった。しかし、小泉純一郎前内閣の下で進んだ英米流の規制緩和の流れの中で、主客が逆転してしまう。
小泉前首相は日本がグローバル競争の流れから取り残されると国民に訴えかけ、郵政だけでなく、労働分野でもトップダウンで大胆な規制改革を進めた。そのブレーンとなったのが、竹中平蔵・前総務相、宮内義彦・内閣府規制改革・民間開放推進会議前議長(オリックス会長)、同会議の八代尚宏・労働問題担当主査(国際基督教大学教授)であり、財界の要望を飲んだ。
今年3月の「規制改革・民間開放推進3か年計画」でホワイトカラー・エグゼンプションを含む規制緩和策が閣議決定された。今年9月に小泉氏から安倍晋三首相に交代し、竹中氏や宮内氏は辞職したが、基本的にこの構造は今も変わっていない。厚労省の官僚からは反対意見も聞かれるが、閣議決定までされているので声高には言えない。
ところが、経済同友会が11月21日に「自律的という視点が、むしろ企業や従業員の負担を増大する側面があること等も考慮すべきである」と異例の声明を発表した。財界も一枚岩ではないことが明らかになり、混迷の様相を呈している。
冒頭の質問を繰り返そう。
「ホワイトカラー・エグゼンプション」あるいは「自律的労働時間制度」という言葉、その意味をご存じだろうか。
恐らく大多数の読者が、「知らない」と答えるのではないか。最大の問題はそこにある。極めて多数の労働者に重大な影響を与えかねない新しい労働法制の議論が、絡み合う利害関係者の思惑のために国民によく知らされないまま進んでいる。そのことに、強烈な違和感と危機感を覚える。
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こんにちは、トラックバックは、どうぞご自由に(^O^) 。ところで、「その内容」ですが、私は、いまだよく理解出来ておりません。恐縮です。
2007/1/15(月) 午前 9:34 [ hori ]