堀尾の保健学ブログ

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別居や離婚に際して、子どもに片方の親を選ぶように強いるのは、良くないことです。

例えば、カリフォルニア上級裁判所は、「子どもに、親のいずれかを選ぶように強いてはならない」と述べています(「ポジティブな子育てのための親のハンドブック」、p14)。
http://tehamacourt.ca.gov/calendar/pdfs/family/Parent_Handbook.pdf

また、アイルランド児童虐待防止協会も、別居や離婚に際して、「片方の親を選ぶように子どもに強いたり、片方の親の味方をさせようとしてはならない」と述べています。
http://www.ispcc.ie/uploads/files/dir305/dir15/13_0.php

また、バージニア州「子どものための後見人の規範」(S-3)は、「子どものための後見人は、親権のケースや面会交流のケースにおいては、子どもが、親や場所を選ぶように強いられているとか、どちらを好むかを述べるように強いられているとか、決して感じることの無いように、ケアを行わなければならない」と述べています。
http://www.courts.state.va.us/courtadmin/aoc/cip/programs/gal/children/gal_performance_standards_children.pdf

また、カナダ法務省は、「片方の親を選ぶように子どもに強いることは、片親疎外の一つである」と述べています「面会交流の困難さの克服:子どもを中心にする方法」p11。
http://www.justice.gc.ca/eng/rp-pr/fl-lf/famil/2003_5/pdf/2003_5.pdf

片方を選ぶように子どもに強いる状況とは、子どもが両親から等距離にいるような状況ではなく、通常は、片親と暮らすような状況で、精神的支配が進んだ状況です。片親を選ばせることにより、他の親との関係を内的に消滅させるということです。

なおガードナーは、片親疎外を行う親は、子どもへの精神的な虐待を行っていると述べています。子どもは愛する親との関係を否定されるのです(同書、p14)。

選択できないものを無理に選択させるのは、良くないことです。映画「ソフィーの選択」は、次のようなストーリーです。「母親のソフィーが息子・娘と共に、アウシュビッツに送られる。そこで、片方の子どもを殺すので選択するように言われる。選択しなければ両方とも殺すと言われ、やむなく片方を選択する。ソフィーは精神的な打撃を受け、後年自殺する」。

子どもに片親を選ばせると、同様の精神的な打撃を受ける可能性があります。

アリゾナ大学の Rebecca Stahl 氏は、次のように述べています。「子どもに、どちらの親を選ぶかを聞くだけでも、子どもに激しい精神的緊張を引き起こす」。(「私のことを忘れないで」:子どもの権利条約の第12条の適用)(p819)
http://www.ajicl.org/AJICL2007/6.%20Stahl%209x6%20Text.pdf

また、カナダ議会の家族法改正に関する特別委員会は、次のように述べています。(「子どものために For the Sake of Children」)(2章A、B)
http://www.parl.gc.ca/HousePublications/Publication.aspx?DocId=1031529&Language=E&Mode=1&Parl=36&Ses=1&File=54

「委員会のメンバーは、両親のいずれかを選ばないといけない立場に子どもを立たせないようにする必要があることを、強く認識した。委員会の多くのメンバーは、ミシガンの裁判官のジョン・キルケンダールの証言が、役に立つと感じた。彼は子どもにどのように感じているかをしばしば尋ねるのであるが、彼が常に注意深く子ども達に知らせているのは、子どもたちが意思決定者ではないということである。子ども達が言ったことを彼は考慮はするが、子ども達が要求した通りの決定を彼は必ずしも行わないことを子どもたちに告げる。委員会のメンバー達が重要であると感じたのは、『両親が、養育と住居をどうするかについて、子どもと話をするようにアドバイスされていること』であり、『両親が、子どもと相談せずに新しい設定を押し付けないようにアドバイスされていること』である。

この委員会は、親と子どもの関係が別居や離婚で切れないことが必要であると認める。それゆえ、離婚した親とその子どもは相互に親密で継続的な関係を保つ権利があるという原則を、離婚法の前文に加えることを含むような、離婚法の修正を勧告する。

この委員会は、カナダ中からの子ども達から証言を聞いた。離婚が良いことだと言った子どもは1人もいなかった。彼らが話したことは、彼らの生活が分裂したこと、親の離婚に伴って強い精神的な苦しみが生じたことである。

この委員会のメンバーは、子ども達の考えを聞くことと、子どもにどちらかの親を選ばせることとは、区別する必要があることを理解している。多くのプロフェッショナル達がこの委員会に警告したのは、たいていの子ども達は離婚後も両方の親に忠実でありつづけたいと思うことであり、二人のうち、どちらか一人の親を選ばないといけないという事態は、子どもにとって信じられないような強い内的な葛藤を生み出すことである。この委員会の多くのメンバーが確信しているのは、子どもが、片親との接触を断つことを望んだとすれば、それは大きなトラブルを意味するのであり、法的な介入よりもむしろ治療的な介入を必要としているということである」(太線:堀尾)。

ただし、実際に具体的にどのようにして子どもの意見を聞くかについては、なかなか微妙な点があります。片方では、「子どもの権利条約」の通りに、子どもの意見を聞かなければなりませんが、他方では、子どもに親を選択させてはならないのです。

先ほどのアリゾナ大学の Rebecca Stahl 氏によれば、Philip Stahl博士は、子どもの意見を聞く場合には、次のように聞いているそうです(同文書、p819)。

「君も知っているように、この『親権評価』は、君の人生についてのものです。君の両親についての評価ではないし、私についての評価でもありません。君がお父さんやお母さんをどう思っているかについて、これまでに話をしてくれました。君は自分の時間を、お父さんやお母さんのそれぞれと、どのように使いたいかを考えたことがありますか。この件の最終決定は、君の両親か裁判官が行います。もし君が、お父さんやお母さんと、どのように時間を過ごすかについて、何か考えがあって、それを私に教えてくれるのなら、私はそのことを、勧告書を書く時に参考にすることができます。けれども、君がそうしたいと言ってくれたことを、そのまま私の勧告書に載せるわけではありません。そうではなくて、君の人生に重要だと私が考えることをすべて考慮して、勧告書を書きます。この件について、もし、何か質問があれば、教えて下さい。」

これについて、著者のRebecca Stahl 氏は、次のようにコメントしています。
1.最終決定は子どもが行うのではないこと
2.子どもの意見は、決定の多くの要因の一つに過ぎないこと
3. 片親疎外についての問題があること
4. 子どもが希望を述べても、結末は、最後にしか分からないこと

この聞き方が良いかどうかは分かりませんが、各年齢ごとに、聞き方の雛形を事前に作成して、充分に検討しておく必要がありそうです。子どもの意見を聞いた後で、質問文と回答内容を、両親と裁判官に知らせる必要があります。
 

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