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びわ湖ローカルエネルギー研究会
地域エネルギーとネットワーク

転載
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再エネの系統連系「神話」を解体する
「再エネは不安定なのでバックアップ電源が必要」・・・。相変わらず巷ではそのような神話が跋扈しています。ということは本コラムでは繰り返し述べてきましたが、この議論を非常にわかりやすく述べた報告書がつい最近、国際エネルギー機関(IEA)から公表されましたので、本コラムでもいち早く紹介したいと思います。

副題に「政策決定者のための手引き」とあるように、この報告書は専門家向けではなく、政策決定者やこの問題に関心のある一般の方に書かれた文書です。同書から一部引用し(p.9〜11)筆者が仮訳したものを以下に紹介します。

系統連系にまつわる神話と現実

風力および太陽光発電の系統連系に関する多くの主張は、それらの電源が電力系統に導入され始めた直後から起こり得ます。また、そのような主張が誤解であることを立証するためにはまだ充分な知見がない段階で起こり得ます。

神話1:天候依存の変動は制御できない。

最も顕著な主張をひとことでまとめると、おそらく「風力・太陽光発電は短期的に非常に大きく変動し、電源として不安定である」となるでしょう。この主張は、我々は日常的な経験から一見非常に最もらしく聞こえます。風速が突然変化すると、変動性再エネの変動出力を受け入れるためには火力発電の出力を急速に変化させることが必要になるかもしれません。同様に、雲が通過すると急激に日射量が変化し、太陽光パネルの出力も急激に変化するでしょう。しかし、このような感覚論的な理解は、2つの重要な要素を見落しています。

まず一点目として、電力需要そのものがランダムで短期的変動を持つ、ということです。結論から言うと、全ての電力系統はこのような変動性に対処するためのメカニズムを有しています。風力・太陽光の導入が始まったばかりの段階(訳者中:導入率約3%未満)では、これらの出力変動は需要の変動の「誤差範囲内」となる傾向にあります。

電力系統により多くの変動性再エネ電源が加わると、二番目の効果が現れてきます。電力系統の中のさまざまな場所に位置するさまざまな種類の変動性再エネ電源から出力される短期的変動は、お互いキャンセルされる傾向にあります(訳者中:いわゆる「集合化」「ならし効果」のこと)。つまり、秒単位の変動はそれほど重要ではなく、大きな変動はむしろ数時間単位のタイムスケールで発生する傾向にあります。単一の発電所が周囲に負の影響を与えるような状況もあり得ますが、これについては次項で後述します。

神話2:変動性再エネによって従来型電源のコストが上昇する。

次によくある主張としては、「風力・太陽光発電からの変動は、従来型の制御可能な発電所に多大な責務を与え、それらの変動を調整するために急激に出力を変化させることを強いている」というものが挙げられます。

一般に、風力・太陽光が導入され始めたばかりの大きな電力系統ではこの主張は正しくありません。その理由は「神話1」と同じで、変動性再エネの導入率が低い段階では,その変動性は電力需要のそれよりもずっと小さく、結局、従来型電源にとって大きな変化はないということになります。

しかし、導入率が大きくなってくると、変動性再エネ出力の変動は他の発電所の発電パターンに影響を与え始めます。ただし、これまで多くの電力系統における知見により、電力系統のトータルコストを大きく上げることなく、発電所を動的に運用する技術的能力を持たせることができることが明らかになっています。リアルタイム(実供給時間)に近い時間帯で変動性再エネ出力を予測し発電スケジュールを調整すると、これが負の影響を緩和する低コストで効果的なツールとなり、電力系統全体でコストが上昇してしまう手段を取ることを防ぐことができます。
             

神話3:変動性再エネには1対1のバックアップが必要。

この主張は、「風力・太陽光は信頼できない電源である。したがって従来型電源によるバックアップが必要となり、それは非常に高コストである」という形でよく言われます。変動性再エネ電源は天候によって変動するのは確かですが、そのことは1MWの再エネに対して1MWの従来型発電所が必要になるということを意味するわけではありません。

例えば、1MWの太陽光発電は年間平均で10〜30%で運転しており、これは設備利用率として知られています。実際の値は風力・太陽光の「質」に依存し、これは地理的要因によって異なります(例えば風力発電の設備利用率は20〜50%とさまざまです)。長期的計画のタイムスケールで考えると、これは夜間太陽が照らなかったり風が吹かなかったりといった時にこれをカバーするために必要な量となります。

数秒から数日といった短期的なタイムスケールで考えると、変動性再エネの出力は天候により変動します。太陽光の出力は一日の時間帯によって変わりますが、定格に対しておよそ20〜30%となる可能性があります(太陽光発電は必ずしも太陽の直射光を必要とするものではないので、ゼロになることはありません)。しかし、変動性再エネが広域に設置されていれば、この変動は減少します。隣接する国や電力系統への連系線により、このエリアは非常に広がります。このことは、設置された変動性再エネの「容量価値」を向上させる効果があります(訳注:原文では図10が参照されているがここでは省略)。

「容量価値」もしくは「容量クレジット」は、変動電源がどの程度まで従来型電源と同様に信頼できるかを示す指標です(訳注:日本には独自の「kW価値」という指標がありますが、これとは少し定義が異なります)。変動電源の容量価値は、場所ごとによって異なり、電力系統のサイズによっても異なります。このことは非常に重要であり、「バックアップ」神話に対する解答は唯一つではありません。風力・太陽光発電の出力は相補的なため、それらを組み合わせることによって容量価値はさらに向上します。

変動性再エネと電力需要のピークのタイミングはもう一つの大きな問題です。例えば、太陽光発電は一日のうち最も暑い時間帯にピークを迎えるので、エアコンによる大きな需要はこのパターンによくマッチし、太陽光発電の容量価値はより大きくなります。風力発電の出力はより規則的ではないため、この需要との相補性という点では便益は小さくなります。

結局、電力系統では、ある特定の発電所群をバックアップすることを想定しているわけではない、ということ知っておくことが基本です。従来は冗長な設備によって行われてきましたが、最近では連系線でつながれた設備をより柔軟で動的な運用することも増えており、電力系統「全体」で需要に追従する能力こそが重要なのです。

そしてこの問題を考える場合、考慮するのは発電所だけではありません。変動性再エネの容量価値は比較的低いですが、それを管理するための低コストな戦略はほかにも存在します。需要側応答(DSR)は変動性再エネが利用可能な時に需要をシフトさせるために使うことができます。蓄電池は既存の貯水池式水力発電や揚水発電とともに注目されつつあります。これらのエネルギー貯蔵は、変動性再エネが余ってしまった時に蓄電し、変動性再エネの出力が低い時に放電することができます。DSRや蓄電池はまだ萌芽的段階ですが、将来大きなポテンシャルが期待されています。

神話4:変動性再エネに必要な系統コストは非常に高い。

以上の3つの主張は変動性再エネの時間軸に対する出力の特性に関係するものでした。それ以外の主張として、「風力・太陽光発電は需要地から非常に遠く、電力系統に接続するには非常に高コストである」など、変動性再エネの空間的配置に関する主張もあります。風力・太陽光発電に最も適した場所は人が住むにはあまり適さない遠隔地である場合が多い、ということは事実です。砂漠は地球上で最も太陽が照る場所ですし、開けた風の強い平地に大規模人口密集地が建設されることはほとんどありません。一方、風況の良い洋上風力発電への近接は重要になってくるでしょう。

このような資源にアクセスするためには、既存の電力系統の拡張や増強のためのコストがかかります。このコストは、地理的要因や土地の価格などによって大きく変わります。米国の系統連系研究を網羅的に調査した解説論文によると、風力発電のコストのおよそ15%(中央値)が送電線の拡張のためのコストに相当することが明らかになっています。ただし、そのコストは0〜1,500ドル/kWと大きな幅を持つことも明らかになっています。経験則によると、系統インフラのコストは発電設備の10分の1に過ぎず、送電線を増やすことにより送電混雑を減らし信頼性を向上するという他の多くの便益を生み出す可能性があります。

さらに、技術の進歩に伴いコストが低減することにより、必ずしも最良の風況や日射量ではない場所にもコスト効率のよい変動性再エネが建設されることになります。このことにより柔軟性がさらに増し、系統コストをさらに低減することが可能となります。

神話5:電力貯蔵は必ずなくてはならない。

「電力貯蔵を新規に追加しなければ、風力や太陽光の変動を平滑化することはできない」という主張もよく聞かれます。変動性再エネからの変動成分に注目すると、それを平滑化するためにはこの出力に対するバッファが明らかに必要だ、というのは非常に感覚論的に見えます。

しかしながら、他の神話と同じく、これには重要な要因が欠落しています。この神話の背後に隠された主な点は、ある段階に達すると変動性再エネを系統連系するためには電力系統の柔軟性が必要となる、ということですが、実はこれは変動性再エネの「第3段階」の特徴です(訳者中:「第3段階」は導入率が約15〜25%の国や地域に相当)。さらに、電力貯蔵だけが柔軟性を供給するわけではありません。需要側の変動は、火力発電や貯水池式水力発電などの制御可能な電源によって日常的に管理されています。DSRや他の電力系統からの融通など、柔軟性供給源は他にもたくさんあり、電力貯蔵はそれらの選択肢の中のひとつでしかありません。そして現在のところ、変動性再エネの導入率が20%に達したほとんどの国でも、電力貯蔵はそれほど重要視されていません(これらの国のほとんどは風力の方が支配的であり、一般に電力貯蔵は風力よりも太陽光に対しての方がコスト効率が高いとされています)。

神話6:変動性再エネによって電力系統が不安定になる。

電力系統は、これまで人類が作り上げた装置の中で最も複雑なもののうちのひとつに挙げられます。電力系統を安定に運用するための運用者の仕事は、常に監視・制御を行うことです。これは、常にバランスを保つために微調整を繰り返さなければならないという点で、自転車を乗るのと似ています。
自転車に乗る人ならば誰でもわかるとおり、非常にゆっくりとした速度でバランスを取るのは難しいですが、車輪が速く回ると、物理法則に則り慣性力のため自転車は安定します。これと似たような状況が電力系統でも起こっており、従来型電源の非常に大きな発電機やタービンが回転することにより、バランスを保つことができます。一方、風力・太陽光発電は従来型電源とは同じように接続されておらず(訳者中:風力・太陽光はインバータを介して電力系統に接続されているため)、慣性力を生み出すことができません。

「風力・太陽光発電は電力系統の慣性に貢献しておらず、電力系統を不安定にさせる」という最後の神話は、上記のようなことが元になっています。この慣性が問題になる状況は、2つの要因によって決まります。すなわち、ある瞬間にどれだけ変動性再エネ電源が発電しているかと、電力系統のサイズがどれだけか、ということです。電力系統の平均需要や最小需要に比べ変動性再エネの導入率が低い段階では、非常に小さな電力系統(例えばピーク電力が100〜数千MW)を除いては、この慣性問題はほとんど問題になりません。いかなる場合でも、変動性再エネが導入される初期段階では慣性は重要な要因になることはほとんどありません。さらに、フライホールや既存の風車の合成慣性(訳者中:近年のほとんどの商用風車は慣性を供給する機能を持っています)を利用するなど、電力系統に慣性を供給するための技術的選択肢は存在します。

さらに一般的に言うと、変動性再エネの最新技術は技術的にも成熟しており、電力系統の安定のために有用なさまざまな系統サービス(訳者中:周波数制御や無効電力供給などのアンシラリーサービス)を供給する能力を持っています。しかしながら、これらのサービスの提供やそのための補償を変動性再エネに義務づける法令はほとんどありません。このような義務やインセンティブがない限り、変動性再エネから系統サービスが供給されることはほとんどないでしょう。

IEA報告書がもたらす意義

以上、IEAの報告書からの一部引用を筆者の仮訳により紹介致しました。このような議論は10年以上に亘り専門研究者や実務者の間で議論されてきたことですが、ここで重要なことはこのような議論がIEAから公表されたという事実です。IEAは再エネだけでなく全てのエネルギーについて議論する場であり、高度な国際合意を必要とする組織です。そのような組織から再エネに関してこのような報告書が出ること自体、「世界は変わりつつある」ということを示すマイルストーンであるとも言えるでしょう。今回、この仮訳でいち早く日本に紹介することにより、この議論が日本にも浸透することを期待します。

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