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びわ湖ローカルエネルギー研究会
地域エネルギーとネットワーク

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スマートグリッドは、いったい何が凄いのか?(引用)<1>より
 
転載
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 一方で、これら再生可能エネルギーは天候に左右され、いつどれだけ発電するのか、供給量の予測が難しい。また、風力発電はデベロッパーにより、太陽光発電は家庭により設置されるため、電力会社の中央管理外にある不安定な電源という位置づけになる。これらを既存の電力網と無秩序に接続すれば、需要と供給を一致させるのが困難になり、電圧や周波数の維持に支障が出るとされている。
 これが「電力の逆潮流」と呼ばれる問題であるが、この解決策としてもスマートグリッドが期待されている。すなわち、分散型発電という奔放な供給者をやはりITで結び、さらにIT化された家庭やEVといった需要者の協力も得ることにより、システム全体として不安定な供給を吸収するというのである。例えば風力発電からの供給が一時的に多すぎれば、家庭で積極的に電力を消費するよう指示を出すことが考えられている。

電気自動車という“モバイル需要”に対応

 第3の構造変化は、EV及びプラグインハイブリッド車(PHV)の普及という、需要の高度化である。日本ではエコカー減税などの政策効果もあり、既に新車の6台に1台にはハイブリッド車(HV)という状況が続いているが(図3)、本命は充電した電気によって走行するEVあるいはPHVと見られている。これも地球環境問題への対応策の1つであるが、やはり近年の技術革新により蓄電池の性能が向上すると共にコストが低下してきたことが背景にある。
 
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その結果、純粋なEVはいまだ航続距離に限界がある一方で、走行性能や走行コスト(電費)ではガソリン車に勝るとも劣らないことが知られている。例えば、1km走行するのに必要なコストを試算すれば、三菱自動車の「i-MiEV」はそのモデル車である「ガソリン車i」の半分以下でしかない。仮にガソリン価格がリッター当たり180円に高騰し、充電を夜間にすれば、9分の1にまで低下するのである(図4)。2010年末には、日産自動車がEVの「リーフ」の本格販売を予定しており、今後の普及が待たれるところである。
 
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 EVやPHVが普及すれば、動力源として電気が必要になる。現在の運輸部門の電気化率は2%に過ぎないが、57%を占めるガソリンに置き換わることになれば(2010年版『エネルギー白書』)、まずは電力の需要が大きく増える(※3)
※3 筆者の試算によれば、2008年度の自動車交通に使われた石油(乗用車用489億リットル、貨物用339億リットル:2008年度総合エネルギー統計)がすべて電気に置き換われば、1966.5億kWhの電力が必要になり、これは既存の全電力消費の2割に相当する。
 さらにEVは、最終的には自動車登録台数の8000万台近く(自動車検査登録情報協会)に達すると考えれば、膨大な数のまさにモバイルな需要となる。家庭で使用する家電製品などと比べれば、これらがいつどこでどのように電力を需要するかを予測することは難しい。
 EVのドライバーは、ガソリンスタンドを選ぶように少しでも電気料金の安い所で、安い時に充電したいと思うだろう。一方で電力会社にとっては、EVの充電が昼間の需要ピーク時に集中してもらっては困るのであり、逆に深夜に行われれば需要の平準化に寄与する。そのためには、電力の価格情報がリアルタイムにドライバーに届けられる必要がある。

巨大な蓄電池としての電気自動車

 また、EVはスマートグリッド上の巨大な蓄電池としても期待されている。電力需給を最適化するというスマートグリッドの根本に立てば、電力網の随所に蓄電池が配置されれば、理論上は足りることになる。現在のリチウムイオン電池は非常に高価なため、採算性の観点からそのようなことは難しいが、交通手段として普及するEVがこの役割を担う可能性がある。なぜならば、多くの自家用車は多くの時間において自宅の駐車場などに停まったままであるから、電気料金が安い時に充電し高い時に売電する、V2G:Vehicle to Gridといったアイデアが注目されている。
 とは言え、そのEVをいつどのように利用するかが管理されていなければ、いざ自動車として運転しようと思った時に電池切れといったことになりかねない。こうして自動車が電気化されれば、既存のガソリンの供給網が不要になる一方で、電力の需給を包括的に管理する巨大な情報通信システムが必要になる。これまで受動的だった電力需要は高度化し、家庭は供給者となる可能性すらあるのである。
 この連載コラムでは、スマートグリッドという話題のキーワードについて、インターネットのアナロジーから徹底的に分析を試みたい。既存の電力システムに精通したプロから見れば、このような議論は机上の空論と思われるかもしれない。しかし、この連載の中で説明するように、非連続のイノベーションが起こる際には、既存のシステムで最も成功している人ほど、その変化を理解できないことがある。
 次回以降、どうしてスマートグリッドとインターネットが同じと言えるのか、まずネットワークや事業としての特性から話を始め、ビジネスモデルの進化のあり方の類似性に話を移す。インターネットの際に、日本では産業界も政府もアメリカに対して大きな遅れをとったわけだが、スマートグリッドというイノベーションにおいても同様の失敗を繰り返すのではないかという危機感が、筆者の最大の問題意識である。

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