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びわ湖ローカルエネルギー研究会
地域エネルギーとネットワーク

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電力会社の営業利益の91%は小口電力で上がっている。小口の販売電力量は全体の38%しかないのだが、「原価+適正利潤」の規制料金で利益を保証されているからだ。
 
>ところが現在の地域独占型スマートメーターが全世帯に配備されると、電力自由化が止まるばかりでなく、日本の家電は世界のどこにも輸出できないエコーネットに囲い込まれ、インターネットにもつながらない。検針情報は電力会社からもらうしかないので、家電もリアルタイムで制御できない。
 
 
 
転載
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スマートメーターは電力自由化を阻む「トロイの木馬」

電力業界は「ガラパゴス」携帯の失敗を繰り返すのか


 
経済産業省で3月12日に開かれた「スマートメーター制度検討会」で、今年からスマートメーター(次世代電力計)の導入を始める方針が確認された。しかしその規格については、経産省が標準化を求めたのに対して電力各社が難色を示し、結論が出なかった。
 これは地味な技術的問題のように見えるが、実は電力業界を揺るがす問題なのだ。

電力各社がバラバラに開発するスマートメーター

 この夏に向けて、原子力発電所の再稼働が課題になっている。しかし電力の使用量は時間帯によって2倍近い開きがあり、真夏のピーク時を除けば発電所の能力は余っているので、時間帯によって電気代に差をつけてピーク時の料金を上げれば電力使用料が減り、停電を避けることができる。
 深夜電力を使った給湯システムなどでは、こういう時間別の料金体系が採用されているが、一般の家庭ではできない。家庭にある普通の電力計は1カ月の電力消費量を積算して人間が検針するので、いつ使ったかが分からないからだ。
 これを記録するためには、時間別の検針情報を電力会社に送信する機能を備えた電力計が必要になる。これをスマートメーターと呼び、イタリアやスウェーデンなどでは全世帯に配備されているが、日本ではほとんど導入されていない。電力を節約すると売り上げが減る電力会社が嫌ったからだ。
 しかし震災と原発事故で電力不足が深刻になり、政府もスマートメーターを今後5年間で4000万台導入する計画を発表し、専用に980MHz帯の周波数を割り当てた。電力会社もスマートメーターの導入に乗り出し、実証実験を行っている。
 ところが各社のメーターはまったく規格が違い、データも相互に読めないので、全国で10種類以上のスマートメーターがバラバラに配備されることになる。日本の携帯電話がよく「ガラパゴス」とからかわれるが、このままでは電力計は国内でさえ規格が統一できない「超ガラパゴス状態」になる。
 

地域独占で守られてきた「電力ゼネコン構造」

 なぜこういう奇妙なことになったのだろうか。規格を統一できない理由として、電力会社は「料金体系が違う」と言うが、これは理由にならない。電力計の検針情報はわずかなもので、データを別の料金体系に変換するのはわけもない。
 
 この背景には、複雑な業界事情がある。現在のアナログ電力計は電力各社が独自仕様で発注し、電力計5社(大崎電気工業、東光東芝メーターシステムズ、三菱電機、GE富士電機、エネゲート)が納入している。随意契約で1社独占になり、10電力でシェアを分け合う電力ゼネコンとも言うべき構造だ。
 大口の企業向け電力は自由化されているので、PPS(Power Producer and Supplier:特定規模電気事業者)などと呼ばれる独立系の発電会社が独自の電力計をユーザー企業に取り付けているが、家庭用の小口電力(契約電力50kW未満)は電力会社の独占で料金も規制されているため、電力計も地域独占になっている。
 しかも電力会社の営業利益の91%は小口電力で上がっている。小口の販売電力量は全体の38%しかないのだが、「原価+適正利潤」の規制料金で利益を保証されているからだ。これも本来は自由化する予定だったが、電力会社が抵抗して先送りされてきた。しかし電力会社への批判が強まり、小口も自由化されるのは時間の問題だ。
 
 そこで電力会社は、今まで渋っていたスマートメーターを「前倒しで配備する」と言い始めた。しかも出すデータは「時間がない」という理由で、検針情報だけでリアルタイムに送ることもできず、電機製品を制御する信号の受信もできない。HEMS(Home Energy Management System:家庭用エネルギー管理システム)との通信インターフェースもないので、家電ともつながらない。
 これを設置するのも各地域の電力会社なので、小口電力が自由化されても、この独自規格のスマートメーターを配備しておけば、新規参入するPPSは各家庭に電力計を設置しなければならない。7700万個もある電力計をスマートメーターに変更できる業者は、電力会社以外になく、検針情報をPPSが課金に利用することも想定されていない。
 
 つまり独自規格・低機能のスマートメーターは、電力会社の地域独占を守るトロイの木馬なのだ。電力が全面的に自由化されても、独自規格でこのガラパゴス型スマートメーターを配備しておけば地域独占を守ることができ、電力ゼネコンも安泰だ。実に巧妙な参入障壁である。

インターネットが負ける方に賭ける電力業界

 さすがに経産省は電力業界の狙いに気づき、標準化を進めようとしている。総務省も電力各社を呼んで通信規格の統一を要請したが、拒否された。「なにしろわれわれの所管業界じゃないもので・・・」とある課長は嘆いていた。
 
 しかし電機メーカーは「家庭の情報化」の拠点としてHEMSに期待を寄せているので、その標準化は進めざるをえない。ところが12日の検討会では、HEMSを「エコーネット・ライト」で統一することが決まった。
 エコーネットというのは、電力会社が開発した電力線を使って通信する技術である。電力線には電気信号も通るのでノイズが多く、速度も9600ビット/秒と電話以下なので、ほとんど普及していない。「ライト」はその改良版だが、できたばかりで実績はゼロなのに経産省の公式標準に認定された。
 
 アメリカではAMI(Advanced Metering Infrastructure:高度検針基盤)などと呼ばれる次世代の電力インフラが開発されている。これは無線インターネットで携帯電話から電力使用量を見て、遠隔操作で空調を切ることもできる。ガスや水道の検針と統合して、社会全体のインフラにする構想もある。
 ところが現在の地域独占型スマートメーターが全世帯に配備されると、電力自由化が止まるばかりでなく、日本の家電は世界のどこにも輸出できないエコーネットに囲い込まれ、インターネットにもつながらない。検針情報は電力会社からもらうしかないので、家電もリアルタイムで制御できない。
 
 日本の携帯電話では、通信業者が独自規格で端末を囲い込み、ファミリー企業がそれに従属してガラパゴス端末を作り続けて壊滅した。スマートメーターも、このままではグローバル競争に取り残されるおそれが強い。
 物理的な計測器は各社独自で作るとしても、データ形式は統一して同じ半導体で処理し、通信も無線インターネットで行えば、新しいベンダーが参入してコストも安くなるだろう。しかし電力ゼネコンにとっては、競争が起こって単価が下がるのは困るのだ。
 グーグルの元CEO、エリック・シュミットは「インターネットが負ける方に賭けるな」と警告したが、日本の電力業界は団結してインターネットが負ける方に賭けているように見える。この賭けに負けると、日本のエネルギー産業もIT産業も立ち直れなくなるだろう。
 

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