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転載
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欧州で広がる木質燃料価格の下落をどう見るか(2)
木質チップ価格の長期系列に見る四つに局面木質エネルギーの先進国であるスウェーデンでも、木質燃料の価格に関してエネルギー庁から四半期ごとのデータが公表されるようになるのは1993年からである。しかし山から下りてくる林業チップについては、その信頼度に多少の問題はあるにせよ、1970年代から価格統計が集められていた。それをエネルギー庁の公式のデータとつなぎ合わせれば、40年以上にわたる長期の動向を辿ることができる。
下の図2はそうした試みの一つである。出典は図1(連載(1)に掲載)と同じだが、林業チップのほか、製材工場の背板からつくる残材チップ、建設廃材からのリサイクルチップ、さらに木質ペレットの価格も掲げられている。価格の単位は前図と同様に発熱量当たりのSEKであるが、図1が貨幣価値の変動を考慮しない名目価格で表示されているのに対し、図2のほうは2015年8月を基準にした実質価格であることに留意されたい。
図2 木質バイオマスの実質価格の推移 スウェーデン、1984〜2016年、2025年8月基準、SEK/MWh 出所)K. Ericsson & S. Werner: The introduction and expansion of biomass use in Swedish district heating system, Biomass and Bioenergy 94 (2016 ) 57‐65 ここで1984年から2016年に至る林業チップの価格に着目すると、大きなうねりが観察され、大まかに言えば、次の四つの局面がある。
(1)価格の下落期(1970年代半ばから90年代半ばまで)
この時期は木材の伐出が手作業から機械化方式に移行する大転換期である。かつては、森林の中に入って太い木を切り倒し、その場で枝を払って2mか4mに玉切りする。山から運び出すのはその丸太だけだ。エネルギーに向けられる幹の細い部分や梢端・枝条などは林内に放置されてきた。これを改めて集めるとなると大変な労力が要る。構造用の丸太とエネルギー用の残材を一体として生産する機械作業の体系が次第に出来上がっていく。森林チップの生産コストは年々低下し、この期の20年間に約1/3になった。
(2)価格の安定期(90年代半ばから00年代半ばまで)
チップ価格の低落が止まり、比較的安定して推移している。
(3)価格の上昇期(00年代前半から10年代前半まで)
安定していた林業チップの価格が上昇に転じる時期だが、問題はどのような理由で上昇に転じたかである。木質燃料への需要が増えたために、コストのかかる山からもチップが出るようになったという一面があるかもしれない。実質的な調達コストの上昇である。しかし化石燃料価格の上昇と軌を一にしていることを考えれば、これに引きずられて木質チップ価格の上昇が始まったと見るのが自然であろう。
(4)価格の低落期(10年代前半以降)
化石燃料価格の上昇が森林チップの価格を押し上げていたとすれば、前者の下落とともに木質チップが値を下げるのは当然である。
なお図2によると、工場残材チップとペレットは森林チップとおおむね同じような動きをしているが、建廃系の木質チップはいくらか違っているようにも見える。
ドイツでの動向ドイツで木質燃料の四半期別価格統計が公表されるようになるのは2003年からである。図3には、三種類の木質燃料(木質チップ、木質ペレット、薪)と代表的な化石燃料(暖房油と天然ガス)を対比するかたちで、発熱量当たりの価格の推移が示されている。
図3 発熱量当たり燃料価格の推移 ドイツ 2006Ⅰ〜17年Ⅱ4半期 ユーロ/MWh 出所)www.carmen-ev.de/imfothek/preisindizes 03年の初頭には暖房油の価格は薪やペレットとほぼ同じ40ユーロ/MWhであった。その後大きな変動を繰り返しながらも趨勢としては上昇基調にあったのだが、2012年の90ユーロ/MWhをピークにして急落、2016年の初頭には再び40ユーロになっている。薪とペレットの価格はそれぞれ60ユーロ、50ユーロのレベルで推移しているから、暖房油に対する競争上の優位は大幅に失われたことになる。
水分率35%の木質チップについて言うと、03年当時の15ユーロ/MWhからスタートして緩やかな上昇を続け、11年には30ユーロの大台に乗った。これで安定したかに見えたのだが、15年からは下落に転じている。この局面に焦点を当てて、少し詳しく観察してみよう。
図4はドイツを南部の諸州と北部の諸州に二分して、2014年Ⅰ〜2017年Ⅱ四半期までの森林チップ価格の動きを見たものである。ここでは発熱量当たりではなく、水分率35%の生トン当たりのユーロで表示されている。継続的な下落は明かで、とくに北部諸州では2015年のピークから今日までに40ユーロ、35%も値を下げた。同じような状況が今後しばらく続くことになるかもしれない。
図4 森林チップ(WG35)価格の推移 ドイツ南部と北部平均 ユーロ/トン 注)半径20kmの集荷域から水分率35%の森林チップを80m3集めた場合の単価 出所)図3と同じ |
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