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びわ湖ローカルエネルギー研究会
地域エネルギーとネットワーク

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「エネルギーテック」のこれから:「ブロックチェーン」がエネルギー業界にもたらすインパクト

新しいビジネスモデルを実現する持つ技術基盤として、エネルギー業界でも注目されはじめている「ブロックチェーン」。具体的には業界にどのようなインパクトをもたらす可能性があるのだろうか。

2017年10月03日 07時00分 更新
[江田健二,スマートジャパン]

 ビジネス界では今、「ブロックチェーン」が注目を集めている。ブロックチェーンとは、「これまで1つの場所で集中的に管理していたものを分散させて管理しよう」という考え方のもとに作られた技術のことを指す。発想の根底にあるのは、ある1つの集中的に力を持った組織やシステムに全てのコントロールを委ねるのではなく、参加する一人一人が相互に信頼し合い、助け合って管理していこうという共助・共同管理の考え方だ。例えば、銀行・証券業界では金融(ファイナンス)とテクノロジーが融合した「フィンテック」が期待されているが、ここにもブロックチェーンの技術が生かされている。

 ブロックチェーンがこんなにも注目される理由の1つに、安全面・コスト面での大きなメリットが挙げられる。ブロックチェーンは、日本語で「分散型台帳技術」ともいわれている。つまり、データを分散管理することができる。データは分散管理することで安全性・安定性が高まる。また、大規模で複雑な集中型システムに比べると、構築するための投資コストが少なくて済む。

 このブロックチェーンが技術的土台となり生まれた代表的なものに「ビットコイン」などの仮想通貨がある。2016年7月にベトナムの仮想通貨取引所を視察に行く機会に恵まれた。視察訪問するまでは、正直なところ仮想通貨に対しては、半信半疑な気持ちが強かった。しかし、現地取引所の担当者が平然とした顔で「この仮想通貨取引所では、1日150億円の取引がおこなわれています」と話していて驚いた。知らない間に、世界では仮想通貨が一定のポジションをとりつつあることを肌で感じた。日本でも改正資金決済法の改正により、仮想通貨がこれまで以上に一般的になろうとしている。

 ビットコインなどの仮想通貨を利用すると、円からドル、ドルからユーロなどに通貨を交換する必要がない。海外送金や海外での商品購入での手間暇や手数料が減らせるメリットがある。また、手持ちの自国通貨を仮想通貨にしておくことで資産防衛の手段になる。「なんだ、そのくらいのメリットか」と思う人も多いだろう。しかしそれは、日本の円が国際的に信用され、安定している通貨だからこその発想である。世界的に自国の通貨が不安定な国はたくさんある。自国の通貨が下落していくハイパーインフレの国にとっては、国境のない仮想通貨の方がはるかに信用できるのだ。例えば2013年に預金封鎖が行われたギリシャでは、自国の通貨への信用が下がったことで、資産を仮想通貨に移す人も大勢いた。つまり、金融の世界では分散管理の明らかなニーズが存在している。

業界を超えて広がるブロックチェーン

 ブロックチェーンは、不動産、医療などさまざまな業界でも活用が研究されている。おそらくブロックチェーンが変えるのは金融の世界だけではない。将来的には、権利証書、音楽や芸術の著作など、あらゆる価値の取引はブロックチェーンを使って行うことができるだろう。

 今、その波はエネルギーの取引にも押し寄せている。例えば、ヨーロッパや米国では、電気を個人間でやりとりする実証実験が行われている。また、これまで管理が非常に煩雑であった再生可能エネルギーの環境価値の交換(太陽光発電や風力発電の付加価値を交換すること)をする実験も行われている。取引される電力量や環境価値の管理、保持、交換にブロックチェーンを活用されている。

 海外ではこのようにエネルギーとブロックチェーンを組み合わせた、新しいビジネスモデルの開発を目指す企業が続々と登場している。例えば米国では、エネルギー、クリーンテック、通貨システムに関する分散型ビジネスモデルの開発やコンサルティングを手掛けるLO3 Energy社というエネルギーベンチャーが誕生している。同社は、ニューヨーク州ブルックリンで、ブロックチェーンを活用して太陽陽光発電を持つ家庭が地域内で自由に電力取引を行えるようサービスの実証を進めている。

 日本は大手新電力のエナリスが、ブロックチェーン技術を活用した電力取引サービスの商用化に向けた取り組みを進めているところだ(関連記事「ブロックチェーン活用した電力取引、福島で実証が始まる」)。

 とはいえ、金融業界とエネルギー業界は事情が異なる。海外送金の手数料が安くなる理由から仮想通貨を利用するのは理解できる。しかし、わざわざエネルギーを遠くの異国に送る必要性は高いとはいえない。また、自国の通貨変動リスクをヘッジするために仮想通貨に一部資産を避難させる理由も分かる。しかし、電気代やガス代が毎日変動しすぎて困っているという話も聞かない。

 ブロックチェーンは、本当にエネルギー業界にインパクトをもたらすのか、本当に役に立つシーンはあるのだろうか、ブロックチェーンのおかげでこれまではかなえられなかった私たちのニーズが満たされることはあるのだろうかーーこうした点について、これからのエネルギーの活用方法について想像しながら、考えてみたい。

変わっていく私たちのニーズ

 50年前に比べて、世界は非常に身近になった。そして、一人一人が電気に代表されるエネルギーを利用する生活シーンが増えている。自分たちの親の世代と比較すると、エネルギーの活用方法は大きく変わっている。

 2020年の私たちは、今以上に多くのIoTデバイスを持ち、世界中を移動しているだろう。そうなると、より柔軟性の高い電源確保のニーズが高まる。いつでもどこでも気にせず使える電気、わかりやすくいうならば「持ち運べるエネルギー」が必要だ。 
 そのニーズに応えるように、発電分野において集中から分散へいう大きな流れが生まれる。これまでは、1つの大規模発電所から多くの利用者に、一方通行でエネルギーを提供していた。この流れが、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを中心とする大小さまざまな規模の分散された発電所から提供されはじめている。

 世界中を移動しながら電気を利用したいニーズ、さまざまな場所で分散型発電されるエネルギー、この2つの取引をつなぎ合わせるテクノロジーがブロックチェーンになるのである。

 電気の売買が容易にできるようになると日常生活も一変する。外出先でパソコンの充電が足りなくなってしまった場合、今は「すみません」とお願いして、近くで見つけたお店などで充電させてもらうだろう。それが「100円分、電気を売ってください」と購入できる時代になる。自分がどれだけ電気を充電したか(購入したか)がわかることで、販売する場所が増え、あらゆる場所で充電が可能になる。いつでも充電でき、充電した分だけお金を払うということが、ブロックチェーン技術の活用によって一歩前進する。また、太陽光パネルで発電した電力の余剰分を隣の家に直接販売することも可能になるのだ。

 今の私たちの常識では、電気やガスは、世帯ごとで契約して基本料金と利用量に応じた料金を支払うのが普通だ。しかし、この先、電力会社1社のみと利用契約するのではなく、電気を使う分だけ、使う機器ごとにあちこちから購入することも可能になる。そうなると、家族一人一人が異なる電力会社と契約する時代も来るだろう。通信業界の変遷と同じ現象だ。従来は家庭に固定電話が1台だけあり、その基本料金と通話料を支払うというのが一般的だった。しかし、現在は家族の各人がスマートフォンをそれぞれ別の通信会社と契約し、自分に合った料金プランを選ぶことが可能になった。

 ここで「消費者がわざわざ電気を売り買いするニーズがあるのか?」という疑問もあるだろう。しかし、AppleがiPhoneユーザーに「電気もAppleから買ってください。割安で、100%再生可能エネルギーの電気を販売します」と投げかけたらどうだろうか? 購入するユーザーは多いのではないだろうか。

 環境への意識が高い消費者の中には、風力や地熱などの再生可能エネルギーから発電された電気だけを買いたいというニーズが一定数存在する。また、海外旅行者が日本で電気を買いたいという際にも、コンビニやカフェで気軽に電気を買えると便利だろう。

 そして究極のニーズは、「使った分だけ支払いたい」ということである。これは、電気が「基本料金」というものから自由になるということを意味する。屋外で充電した電気は、ブロックチェーンを活用して正確に把握し、支払うことができる。そうなると他の人やお店からの電気の販売や交換(シェア)も進むはずだ。

エネルギーをシェアすることが当たり前の時代に

 これまでエネルギーは、集中的に発電され、一方通行で供給されたもの利用するしかなかった。それがこれからは、分かち合う時代、互いにシェアする時代に向かう。それは、「参加する一人一人が相互に信頼し合い助け合って管理していこうという共助・共同管理の考え方」をもつブロックチェーンの思想にフィットする。

 ブロックチェーンは、外出先でも海外でもエネルギーを自由に利用したいというニーズをかなえてくれる(とはいえ、ブロックチェーンもすべてが万能ではない。例えば、リアルタイムでの確認処理や秘匿性が苦手である。これらは、これからの技術でカバーできるかどうか楽しみなところだ)。

 今、多くの業界で起こっている地殻変動。その原因の根底にあるのは、私たちの生き方や考え方の変化とそこから新たに生まれてくるニーズだ。その波に呼応して、エネルギーの在り方もおのずと形をかえていく。

 ブロックチェーンは、本当にエネルギー業界にインパクトをもたらすのか?

 私の考えでは、エネルギー業界に多大な影響をあたえる。影響を与えられた個人もそしてエネルギー企業も存在価値を変えていく。個人は、エネルギーを今まで以上に柔軟に利用し、生活を豊かにしていく。そして、エネルギー企業は、分散して発電された電力をマネジメントするなどの形で個人をサポートすることで成長していくだろう。

 未来のエネルギー企業は、電気の発電、販売にとどまらない。省エネや関連したサービスを提供することで顧客に対して価値を提供していく存在になる。また、どのPCが売れても常に利益を出し続ける、半導体企業のインテルのように自動車、住宅、家電業界と協業し、これまではありえなかった形でエネルギーの提供を模索する企業も生まれる。

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