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びわ湖ローカルエネルギー研究会
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ウェザーニューズ

エネルギーは夏の雷の数百倍? 世界でも珍しい「冬季雷」の実態

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2018/01/25 17:46 ウェザーニュース
毎年、晩秋から初冬にかけて、石川県や富山県では「鰤(ぶり)起こし」と呼ばれる雷が発生します。この雷をきっかけに寒ブリのシーズンが始まるからです。しかし、冬季雷(冬に発生する雷)は世界でもきわめて珍しい現象なのです。
>>発達した雪雲の様子は?

高圧線鉄塔に落雷が相次ぐ

box0 1970年代に続々と建設された送電線鉄塔
雷研究の第一人者、東京大学名誉教授(電気設備学会会長)の石井勝さんによると「冬季雷(とうきらい)が注目されるようになったのは1970年代になってから。北陸に原子力発電所が次々に建設され、送電のために建てた鉄塔に落雷が相次いだのです。高さ80mの鉄塔、50万Vの高圧線です。被雷してもたかが知れていると思っていたら、送電停止が頻発する被害が出たのです」

もともと高電圧が専門の石井さんは、これがきっかけで冬季雷の研究に取り組みました。

風力発電装置にも被害


石井さんが続けます。「1990年代になると、今度は風力発電施設が日本海側に建設されます。プロペラはプラスチック製だから大丈夫と思われていましたが、よく雷が落ちるのです」

風力発電施設は、大きいものではプロペラの高さが120〜130mに達します。雷はとてつもない電圧を持つため、プラスチックによる絶縁など、ものともしないのです。石井さんが日本海側の風車に観測機器を取り付けて計測したところ、ひと冬で一つの風車に多ければ30〜50回、平均で10回程度の落雷があったといいます。

世界も注目し始めた冬季雷

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「冬の雷について論文を発表しても、海外の研究者は『日本の研究者がまた変なことを言っているよ』という受け止め方でした。しかし、日本で風力発電施設の落雷被害が多いことから、数年前から欧州の風力発電施設メーカーを中心に関心を寄せ始めました」(石井さん)

その結果、石井さんは電力関係の国際機関、CIGRE(国際大電力システム会議)の国際委員会で、冬型雷(Winter type lightning)の調査を率いることになりました。

夏の雷の数百倍の冬季雷も


冬の雷は夏の雷とどう違うのでしょうか。「雷が発達した積乱雲のなかでできるのは夏も冬も同じですが、大きな違いは雲の高さです」(石井さん)

夏の雷雲は高さが12〜13kmに達し、雲底も地上から2kmほどあります。それに対して、冬の雷雲の高さは5km、雲底は1km以下と低いのです。そして雷雲のなかで電荷が集まっているのは霰(あられ)が発生する氷点下10℃付近のところですが、その高度が夏の雷雲は6km付近であるのに対し、冬の雷雲は約2.5kmと低いのが特徴。

「冬の雷は平均すると小さいものが多いのですが、ときおりエネルギーが、平均的な夏の雷の数百倍にのぼる巨大な雷があります」(石井さん)

地上から上空に向かう「上向き雷」

box2 福井県福井市/2004年1月7日撮影(中坪良三)
冬雷のもう一つの特徴は、「上向き雷」が多いことです。地上の鉄塔などから上空の雲に向かって雷光が伸びていくのが上向き雷ですが、一瞬のことなので上向きか下向きか肉眼ではわからないことがあります。

しかし、写真や動画で撮影すれば一目瞭然。太い雷光からヒゲのように見える細い光が上方に伸びている。雷はヒゲが伸びているほうに向かっているのです。

石井さんによると、「上向き雷」は、夏雷では東京スカイツリーのような超高層構造物でしか発生しませんが、冬雷では高さわずか数十mの送電鉄塔や携帯基地局のアンテナなどからも発生するといいます。

日本海の暖流が雷雲をつくる

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夏は地上で温められた空気が上昇して上空の寒気によりさらに上昇気流が強まり積乱雲(雷雲)を形成しますが、冬の雷雲はどのようにつくられるのでしょうか。

「大陸から吹き付ける北西風は、暖流の対馬海流で暖められた日本海を渡ってくるときに、水蒸気をたっぷり含み、冷たい上空との相互作用で雷雲が発生します。この気流が冷たい日本列島にぶつかると、雷雲が一段とできやすくなります」(石井さん)

半世紀で2.5倍も増えた


冬季雷は年々増えています。その理由を石井さんは、「地球温暖化の影響は寒冷地に顕著に現れます。北極海の海氷やグリーンランドの氷床が減少しているのがその典型例ですが、日本での冬雷の増加もその一つと考えられます」

冬雷の多発地の一つが金沢(石川県)です。年間雷日数を見ると、1950年代までは20日前後で推移していましたが、60年代以降は急増し、2011〜14年を見ると約50日に増えています。この半世紀の間に、およそ2.5倍に増えているのです。

冬季雷の期間が長くなる

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「冬季雷が増加している理由に、発生する期間が長くなっていることがあげられます。以前は11月頃から始まって1月中に終わっていたのが、今は2月、3月にも見られるようになりました」(石井さん)

冬季雷が発生するのは、先にも述べたように大陸からの風が対馬海流(暖流)で温められた日本海を渡ってくるときに水分をたっぷり含み、冷たい上空との相互作用が起こるからです。しかし、冬が深まって上空が冷えすぎると、冬季雷はかえって発生しなくなります。

ところが、地球温暖化の影響で上空の気温が下がりきらないと、冬季雷がいつまでも発生することになると石井さんは付け加えます。
>>この先の長期見解

高さ20m超は避雷針設置義務


では、どのような雷対策があるのでしょうか。まず避雷針です。高さ20mを超える建築物には有効な避雷設備を設けなければならないと建築基準法に規定されています。避雷針は雷を突針で受けて大電流を大地に逃すという設備です。

避雷針は建物だけでなく、送電鉄塔や風力発電装置にも必要です。風力発電装置の場合、プロペラの先端に金属板を貼り付け、そこから導線で落雷の電流を大地に流す仕組みです。

雷に弱い電子機器

box5 福井県福井市/2010年12月24日撮影(吉岡敏夫)
避雷針は建物や人を守ることができますが、建物内の電子機器などを完全に守ることはできません。避雷針で雷のエネルギーの大半を大地に流すことができても、雷のエネルギーはとても大きいため、その際に発生する雷サージ(雷による異常な電気)が電子機器に影響を与え、パソコンのデータが消えたり、産業用機器が誤作動を起こしたりします。

雷対策機器メーカーの音羽電機工業・開発営業部部長の吉田厚さんによると、「雷サージは電線、電話回線、アンテナ、アース線などから侵入して電気製品に障害を与えます。それを防ぐのが避雷器です」

雷サージを防ぐ避雷器


避雷器はふだん電気を通さない絶縁体ですが、雷サージのような過電圧がきたときは瞬時に電気を通す導体に変わります。これを電線などに接続しておくと、雷サージが避雷器を通して大地に流れる仕組みです。

吉田さんが続けます。「最近の電気製品は小電力で動くため、少しの異常電圧でも誤作動や故障を起こしやすいこともあって、事業所と一般家庭を合わせて年間被害額は1000億円から2000億円と見積もられています。避雷器で被害を防いでください」

人的被害は少ない冬季雷


冬季雷による送電設備や風力発電施設などの被害は少なくありませんが、人的被害はほとんどありません。その理由は石井さんによると、「冬は寒くて外に出る人が少ないからです。正月に海岸で凧(たこ)を揚げていて雷に打たれた人がいると聞いたことがありますが、幸い命に別状はなかったそうです」

参考資料など

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