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欧州で広がる木質燃料価格の下落をどう見るか(2)

木質チップ価格の長期系列に見る四つに局面

木質エネルギーの先進国であるスウェーデンでも、木質燃料の価格に関してエネルギー庁から四半期ごとのデータが公表されるようになるのは1993年からである。しかし山から下りてくる林業チップについては、その信頼度に多少の問題はあるにせよ、1970年代から価格統計が集められていた。それをエネルギー庁の公式のデータとつなぎ合わせれば、40年以上にわたる長期の動向を辿ることができる。

下の図2はそうした試みの一つである。出典は図1(連載(1)に掲載)と同じだが、林業チップのほか、製材工場の背板からつくる残材チップ、建設廃材からのリサイクルチップ、さらに木質ペレットの価格も掲げられている。価格の単位は前図と同様に発熱量当たりのSEKであるが、図1が貨幣価値の変動を考慮しない名目価格で表示されているのに対し、図2のほうは2015年8月を基準にした実質価格であることに留意されたい。

図2 木質バイオマスの実質価格の推移スウェーデン、1984〜2016年、2025年8月基準、SEK/MWh
図2 木質バイオマスの実質価格の推移
スウェーデン、1984〜2016年、2025年8月基準、SEK/MWh
出所)K. Ericsson & S. Werner: The introduction and expansion of biomass use in Swedish district heating system, Biomass and Bioenergy 94 (2016 ) 57‐65

ここで1984年から2016年に至る林業チップの価格に着目すると、大きなうねりが観察され、大まかに言えば、次の四つの局面がある。

(1)価格の下落期(1970年代半ばから90年代半ばまで)

この時期は木材の伐出が手作業から機械化方式に移行する大転換期である。かつては、森林の中に入って太い木を切り倒し、その場で枝を払って2mか4mに玉切りする。山から運び出すのはその丸太だけだ。エネルギーに向けられる幹の細い部分や梢端・枝条などは林内に放置されてきた。これを改めて集めるとなると大変な労力が要る。構造用の丸太とエネルギー用の残材を一体として生産する機械作業の体系が次第に出来上がっていく。森林チップの生産コストは年々低下し、この期の20年間に約1/3になった。

(2)価格の安定期(90年代半ばから00年代半ばまで)

チップ価格の低落が止まり、比較的安定して推移している。

(3)価格の上昇期(00年代前半から10年代前半まで)

安定していた林業チップの価格が上昇に転じる時期だが、問題はどのような理由で上昇に転じたかである。木質燃料への需要が増えたために、コストのかかる山からもチップが出るようになったという一面があるかもしれない。実質的な調達コストの上昇である。しかし化石燃料価格の上昇と軌を一にしていることを考えれば、これに引きずられて木質チップ価格の上昇が始まったと見るのが自然であろう。

(4)価格の低落期(10年代前半以降)

化石燃料価格の上昇が森林チップの価格を押し上げていたとすれば、前者の下落とともに木質チップが値を下げるのは当然である。

なお図2によると、工場残材チップとペレットは森林チップとおおむね同じような動きをしているが、建廃系の木質チップはいくらか違っているようにも見える。

ドイツでの動向

ドイツで木質燃料の四半期別価格統計が公表されるようになるのは2003年からである。図3には、三種類の木質燃料(木質チップ、木質ペレット、薪)と代表的な化石燃料(暖房油と天然ガス)を対比するかたちで、発熱量当たりの価格の推移が示されている。

図3 発熱量当たり燃料価格の推移ドイツ 2006Ⅰ〜17年Ⅱ4半期 ユーロ/MWh
図3 発熱量当たり燃料価格の推移
ドイツ 2006Ⅰ〜17年Ⅱ4半期 ユーロ/MWh
出所)www.carmen-ev.de/imfothek/preisindizes

03年の初頭には暖房油の価格は薪やペレットとほぼ同じ40ユーロ/MWhであった。その後大きな変動を繰り返しながらも趨勢としては上昇基調にあったのだが、2012年の90ユーロ/MWhをピークにして急落、2016年の初頭には再び40ユーロになっている。薪とペレットの価格はそれぞれ60ユーロ、50ユーロのレベルで推移しているから、暖房油に対する競争上の優位は大幅に失われたことになる。

水分率35%の木質チップについて言うと、03年当時の15ユーロ/MWhからスタートして緩やかな上昇を続け、11年には30ユーロの大台に乗った。これで安定したかに見えたのだが、15年からは下落に転じている。この局面に焦点を当てて、少し詳しく観察してみよう。

図4はドイツを南部の諸州と北部の諸州に二分して、2014年Ⅰ〜2017年Ⅱ四半期までの森林チップ価格の動きを見たものである。ここでは発熱量当たりではなく、水分率35%の生トン当たりのユーロで表示されている。継続的な下落は明かで、とくに北部諸州では2015年のピークから今日までに40ユーロ、35%も値を下げた。同じような状況が今後しばらく続くことになるかもしれない。
図4 森林チップ(WG35)価格の推移ドイツ南部と北部平均 ユーロ/トン
図4 森林チップ(WG35)価格の推移
ドイツ南部と北部平均 ユーロ/トン
注)半径20kmの集荷域から水分率35%の森林チップを80m3集めた場合の単価
出所)図3と同じ

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欧州で広がる木質燃料価格の下落をどう見るか(1)

はじめに

この数年来欧州ではチップペレットなどの木質燃料の価格が下がり続けている。変動の激しい原油の先物価格やスポット市場での卸電力価格に比べれば、木質燃料の値動きは至極穏やかで、あまり目立たない。しかし詳しく見ると、看過できない重大な変化が起こりつつあるように思う。

これまで何回かに分けて述べてきたように、ドイツでは風力や太陽光由来の「燃料費ゼロ」の電気が電力市場に流れ込むようになって、電力の卸価格は大幅に引下げられた。この過程で通常の火力発電は市場競争力を失い、化石燃料の価格も下がってきている。燃料費の割合がとりわけ高い木質バイオマス発電は電力市場から真っ先に締め出された感じだが、熱供給の分野でも安くなった化石燃料と競争しなければならず、苦戦を強いられている。

風力発電や太陽光発電は「お天気まかせ」の変動電源であり、その穴を埋める調整役としてバイオマスに期待が寄せられているのだが、現状のままでは前途多難と言わざるを得ない。欧州の一部では、CO2削減の観点から化石燃料とバイオマスの明確な差別化を図るために、炭素税の導入を求める声も聞かれるようになった。
炭素税の話は、またの機会に取り上げることにして、今回は木質燃料の価格が近年どのように動いているかスウェーデンとドイツの統計を使って検証しておこう。

木質エネルギーの先進国:スウェーデンの歩み

スウェーデンは木質バイオマスの近代的なエネルギー利用を先導してきた国の一つである。2015年の統計によると、この国の総一次エネルギー供給525TWhのうちバイオマスは134TWh、25.5%を占める。このシェアは原子力発電(29.5%)に次ぐもので、近年では石油・石油製品(22.7%)をも上回るようになった。

バイオマスの大部分は木質系だが、輸入の化石燃料を国産の木質燃料に代替しようとする努力は1970年代から始まっている。まずバイオマス熱供給に対する助成は、石油代替基金を財源とした投資補助に始まり、1991年の炭素税の導入で本格化した。この炭素税は、気候変動問題への対応を意図したもので、熱量当たりのCO2排出量が大きい石炭や石油に、当初CO2トン当たり25ユーロほどの税が課せられた。カーボンニュートラルとされる木質燃料はこの税が免除されており、お陰で最も安価な熱供給用の燃料となったのである。

ただし発電用の燃料については、炭素税の対象になっていなかった。スウェーデンが再エネ電力の促進を図るべく取引可能なグリーン証書(TRECs)の制度を取り入れたのは2003年のことである。すべての発電事業者は発電量の一定割合(クォータ)に相当する証書を購入しなければならなくなり、その一方で大型の水力発電を除く再エネ電気の生産者は生産した電気をTRECsにすることができる。この証書を売れば収入になり、市場での売電収入に付加されることになる。

スウェーデンの地域熱供給の施設では、炭素税の導入で化石燃料からバイオマスへの燃料転換が進み、さらにグリーン証書の導入でバイオマスプラントでの熱電併給が進展した。CHPの展開プロセスとしては比較的うまくいったケースと言えるであろう。
以上のようなエネルギー政策にも支えられて、バイオマスの一次エネルギー供給は、1980年の48TWhから2015年の134TWhまで、ほぼ直線的に増加している。この間、木質燃料の価格はどのような推移を辿ったであろうか。

木質燃料価格の展開

まず図1を見ていただきたい。森林から下りてくと木質チップの価格とスポット市場における卸電力価格とを対比したものだが、いずれも発熱量MWh当たりのスウェーデンクローネ(SEK)で表示されている。1SEKはおおむね1/10ユーロだ。

見られる通り、Nordpoolにおける月別電力価格の変動(点線)はまことに激しい。傾向としては2010年ころまでが上昇基調、それ以降が下降基調と言えようか。実線はグリーン証書の売却収入を加えたものだが、再エネの発電者にとって相当有利になっていることが知られよう。

それはともかく、電力卸売価格の激しい変動に比べると、木質チップの価格のほうは動きがすこぶる穏やかだ。一見したところ両者の間に何らかの関連があるとは、とても思えない。イギリスで高品質の木質チップを生産・配達しているChip Chip Ltd.が自社のホームページに次のような宣伝文を載せているのも頷ける。

「木質燃料の価格は、これまで他の燃料とは比べものにならないほど安定して推移してきた。石油やプロパンガス、さらには天然ガスなどと中長期的に十分競争できる熱供給源の一つと言っていい。木質燃料は、上昇を続ける化石燃料からある程度切り離されて、購入しやすい価格で最終利用者に提供されるエネルギーになる可能性がある。それは恐らく数ある再生可能なエネルギー技術の中で最も低コストの技術であろう」

ただし図1には多少不正確なところがある。木質チップの価格が安定しているように見えるのは、一種の目の錯覚であって、縦軸の目盛りを少し拡大して観察すると、事はそれほど単純ではない。

図1 卸電力価格と木質チップ価格の推移スウェーデン、名目価格 1996〜2016年 SEK/ MWh
図1 卸電力価格と木質チップ価格の推移 スウェーデン、名目価格 1996〜2016年 SEK/ MWh
出所)K. Ericsson & S. Werner: The introduction and expansion of biomass use in Swedish district heating system, Biomass and Bioenergy 94 (2016 ) 57‐65

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昼間の揚水回数増加 太陽光急増の九電管内 余剰電力を有効活用
毎日新聞 2017年8月25日 西部朝刊


天候次第で急激に発電量が変化する太陽光の急速な導入を背景に、発電に利用した水をくみ上げて再び発電に使う九州電力の「揚水(ようすい)発電所」の昼間の揚水回数が急増している。昼間の発電量増加で余った電力をくみ上げ動力に使っているためで、2016年度の昼間の揚水回数は11年度の23・6倍の969回に上った。ただ揚水発電所の稼働にも限りがあり、他の対応策を踏まえても、九州本土での太陽光の出力抑制が徐々に現実味を帯びつつある。【浅川大樹】

 ■揚水発電フル回転

 「最近は揚水発電の注目度が増している。できるだけ早く点検を終えたい」。水力発電本部の土持(つちもち)久幸・揚水工事グループ長は、報道陣に今月公開した九電最大の水力発電所、小丸川(おまるがわ)揚水発電所(宮崎県木城町、計120万キロワット)で強調した。

 九電は今月3日、小丸川揚水発電所2号機の解体修繕工事を始めた。他の3基の修繕工事は約8カ月かけて既に終了。2号機は修繕用の加工機器を発電所に持ち込み、工期を6カ月半に短縮して来年2月に終える予定だ。

 揚水発電所は起動から約10分でフル出力状態になるため、天候次第で発電量が急に伸びる太陽光にも即座に対応できる。昼間の揚水回数は、太陽光の急増で九電が買い取り手続きを一時中断した15年度以降に急激に増加。今年度も7月末時点で前年同期比60・6%増の204回に上っており、九電は「17年度も前年度を上回るのはほぼ間違いない」とし、現実化しそうな出力抑制をにらむ。

 ■長期的対応も

 日射量が多い九州は12年7月に再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まると、太陽光発電設備が急増した。冷暖房などの利用が減る春や秋は、昼間の発電量が家庭などの使用量を上回るケースが出てきた。そこで対応策として揚水発電所のくみ上げ動力に余った電力を使う機会が増えた。

 ただ昼間の電力量が非常に多く、くみ上げだけでなく九州域外への電力供給などの対策を講じても電力が余ってしまう場合、太陽光発電の出力を抑制する必要がある。九電はこれまで離島で出力抑制は実施しているが、暑さが和らぐ今秋以降は九州本土で出力抑制する可能性も出てくる。

 一方、長期的な対応策も検討されている。経済産業省の認可団体、電力広域的運営推進機関(広域機関、東京)は今年6月、九州電力と中国電力の送配電網をつなぐ「関門連系線」(送電能力278万キロワット)を増強する検討を始め、今年度中に増強すべきか判断する方針だ。連系線の増強工事は一般的に10年以上かかることになるが、送電能力向上で再エネなどの電力を九州域外に供給しやすくなることが期待される。

 ■ことば

揚水発電所

 発電所より高い場所にあるダムから水を落とし水車を回して発電する一方、水車を逆回転させて発電所より下にあるダムから水をくみ上げて、再び発電に利用する水力発電所。従来は電力使用量がピークの昼間に発電し、夜間にくみ上げていた。九州電力の揚水発電所は小丸川(宮崎県木城町、出力計120万キロワット)のほか、大平(おおひら)=熊本県八代市、計50万キロワット=と天山(てんざん)=佐賀県唐津市、計60万キロワット=の計3カ所ある。

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【 一般公衆とは、放射性物質を取り扱う作業者(つまりプロ)と異なり、意図せざる被曝を受ける市民のことである。作業者の場合は、報酬を得て計測しながら被曝(計画被曝という)するので、一般公衆の意図せざる被曝とは区別される。一般公衆の場合、医療放射線などの計画被曝を除き、原発事故や核戦争などによる意図せざる被曝の上限を年間1mSvとする、という意味である。つまり、医療被曝と原発事故による被曝は明確に区別されている。】

ICRP「2007年勧告」のポイント
【放射線防護の生物学的側面】
             
確定的影響(有害な組織反応)の誘発――吸収線量が100ミリ・グレイ(グレイはシーベルトとほぼ同じ)の線量域までは臨床的に意味のある機能障害を示すとは判断されない

・確率的影響の誘発(がんのリスク)――LNT(Linear Non-Threshold……直線しきい値なし)モデルを維持

●筆者による解説……100mSv以下だと特定の機能障害は見られないという。累積100mSv以上の短期集中被曝で確定的影響が出るという意味だ。確定的影響とは、脱毛、白血球の減少、白内障などの明らかな病変である。一方、長期にわたる低線量被曝でも累積100mSv以上で影響が出る。これを確率的影響という。年間20mSvだと5年で100mSvに達する。年間1mSvならば100年である。1mSvの根拠は、100歳まで生きたとして年間1mSvを上限にする、ということだ。実際には、内部被曝、医療被曝、自然放射線などもあることに注意されたい。100mSv以下の確率的影響は、閾値(しきいち)はないとするLNTモデルを想定している。ガン死亡のリスクは、放射線被曝ゼロから線量率に比例して直線的に上昇するという考え方だ。すなわち、可能な限り被曝を避けるべき、という発想である。





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2017年8月1日 坪井賢一 :ダイヤモンド社論説委員

放射線被曝の誤解、「年間100ミリシーベルトまで安全」は本当か?

http://diamond.jp/mwimgs/1/f/600/img_1fd41d82f294b24d9740429f1bcb721d276854.jpg発立地周辺の一部で避難解除が進む一方、大洗町ではJAEA作業員の被曝事故が起きるなど、放射線被曝が改めて注目されている。この機に「線量限度」の正しい読み解き方を考えよう。
写真は現在の福島第一原発
Photo:読売新聞/アフロ

福島第一原発事故から6年と5ヵ月が経過した。原発立地周辺の一部で避難解除が進む一方、茨城県大洗町では日本原子力研究開発機構(JAEA)作業員の被曝事故が起きるなど、放射線被曝に関する問題が改めて注目されている。しかし私たちは、放射線に関する正しい知識をちゃんと身に着けているだろうか。現状では、放射線被曝の「線量限度」について、正しい認識の下で報道しているとは思えないメディアも散見される。キーとなる3つの数値の分析を通じて、「線量限度」の正しい読み解き方を考えよう。(ダイヤモンド社論説委員 坪井賢一)

大洗の作業員被曝で注目、
累積放射線量100mSvのリスク

 茨城県大洗町のJAEA大洗研究開発センターで6月6日に起きた作業員5人の被曝事故で、JAEAの発表は「プルトニウムを大量被曝」(6月7日)、「内部被曝はなかった」(6月9日)、「やはり内部被曝はあった」(6月19日)と二転三転し、ようやく内部被曝の放射線量の推計が発表されたのは7月10日だった。

 この記者発表によると、今後50年間、内部被曝が継続した場合、予想される累積放射線量は100mSv(ミリシーベルト)以上200mSv未満が1名、10mSv以上50mSv未満2名、10mSv未満が1名だそうだ。そして、「100mSvで増加するガン死亡のリスクは0.5%」と説明されている。100mSvが重要な指標であることがわかる。

 福島第一原発事故から6年と5ヵ月が経過し、この3月31日と4月1日には浪江町や飯館村などで避難解除が進んでいる。避難解除の要件は、政府によってこう規定されている。

「空間線量率で推定された年間積算線量が20mSv以下になることが確実であること」(2015年6月12日原子力災害対策本部決定、閣議決定)。
 年間20mSvは、ガン死亡リスクが0.5%増加する100mSvの5分の1だ。5年で100mSvに達してしまうが、線量は今後、確実に減少するので、その5年が10年に伸び、やがて20年、30年になるという予想だろう。
 福島第一原発事故で広範囲に飛散し、東日本各地で除染作業の続いたセシウムは確実に減少している。事故から6年以上経過したことも大きい。
 降下したセシウム134と137の数量比は1:1だという。三重大学の勝川俊雄准教授によると、セシウム137の半減期は30年だから6年経過してもなだらかに減少しているだけだが、半減期2.06年のセシウム134は急速に減少し、3年で3割近く減っていた。それを前提に考えると、両セシウム総量の半減期は30年よりはるかに短い6年になり、2017年3月の時点で半減していたことになる(このことは2011年7月1日付DOLレポート「除染を急げば大幅に放射線量は減少する 市民の健康を守れるのは自治体」で書いた)。
 セシウムの総量は6年で半減したはずだが、今後は半減期の長いセシウム137の影響でなだらかに減少していく。

1mSvは平時の基準、
20mSvは短期的な上限

 避難解除の要件は年間積算量で20mSv以下になることだが、もっと重要なのは、環境省の基準では、年間1mSvが公衆被曝の上限だということだ。
 年間20mSvと1mSvでは20倍の差がある。1mSvは平時の基準であり、20mSvは事故後に許容すべき放射線量の短期的な上限である。これから可能な限り早く1mSvへ下げなければならない。これは筆者が主張しているのではなく、ICRP(国際放射線防護委員会)のガイドラインに基づく政府の考え方である。
 年間20mSvは、避難する下限の基準でもある。原発事故後には、年間20mSvを時間あたりに換算した毎時3.8μSv(マイクロ・シーベルト)以上の放射線量を観測した地域で避難が行なわれた。この換算値は、単に時間数で割ったわけではない。屋外活動を8時間として換算した数値である。そして、同様に年間1mSvを時間当たりに換算した毎時0.23μSv 以上の市町村を除染対象地域としていた。
 環境省は除染対象地域を大きく2つに分けていた。政府が直轄する「除染特別地域」と、自治体が除染する「汚染重点調査地域」である。「汚染重点調査地域」の市町村数は、岩手県(3)、宮城県(9)、福島県(40)、茨城県(20)、栃木県(8)、群馬県(10)、埼玉県(2)、千葉県(9)の合計101だった。これらの地域は放射線量を毎時0.23μSv以下にするよう自治体に指示され、ほぼ達成されている。しかし、除染後の放射性廃棄物の処理は進んでいない。ゴミ焼却場の近くに一時貯蔵されているだけだろう。30年程度の中間貯蔵に移すとされているが、各地の中間貯蔵施設の選定は現在も道半ばである。
 一方、基本的には前者の「除染特別地域」である福島第一原発から20km圏内の「警戒区域」、および放射性物質が大量に降下した北西方向の「計画的避難区域」9市町村の除染は政府が直轄で行なってきた。2013年時点で「警戒区域」と「計画的避難区域」は3つに再編された。まず、年間被曝量が50mSvを超える「帰宅困難区域」で、帰還は当面不可能だ。次に年間20〜50mSvの「居住制限区域」、そして年間20mSv未満の「避難指示解除準備区域」である。
 政府直轄除染の対象地域は「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」の市町村だ。除染の数値目標は、ICRPの「2007年勧告」に準拠し、2013年度(2014年3月)までに「居住制限区域」は年間20mSv以下へ、「避難指示解除準備区域」は「長期的に年間1mSv」以下、つまり毎時0.23μSv以下にする、と2011年に決まっていた。
 しかし、そう簡単には放射線量は下がらない。そこで、年間20mSv以下に減少することが確実であると認められた地域は避難解除とする、と要件を緩和したのが2015年6月12日の閣議決定だった。

放射線量の限度は?
キーとなる「3つの数字」

 以上で、放射線量の限度を考える上でキーとなる「3つの数字」が登場している。
 累積100mSv、年間20mSv(毎時3.8μSv)、年間1mSv(毎時0.23μSv)である。もう一度整理しておこう。
・累積100mSv……累積100mSvでガン死亡のリスクが0.5%上昇
・年間20mSv(毎時3.8μSv)……これ以下に下がることが確実な場合は避難解除
・年間1mSv……一般公衆の被曝限度線量
 ICRP「2007年勧告」による公衆被曝の許容量である年間1mSvはだんだん緩くなり、いつのまにか、「100mSvまでは安全だ」ということになってしまった。
 たとえば、「『20ミリシーベルト帰還』へ安全指針」と題した「読売新聞」(2013年3月11日付1面)の記事では、「政府は長期的な目標として1ミリシーベルトの除染基準は維持する。一方で新たな指針は、年間積算線量が5ミリシーベルトや10ミリシーベルトなど、線量の段階ごとに、安心して生活するために必要な対応策を示す。国際放射線防護委員会(ICRP)は、年間積算線量が100ミリシーベルトまでなら健康への影響は明確に検出できないとしている。病院の放射線診断では1回に約7ミリシーベルト被曝することもある」と書かれている。
 記事では「新たな指針」が出ることになっているが、その後出ていない。ICRPは公衆被曝の限度は年間1mSv、事故後は1mSv〜20mSvに拡大するが長期的には1mSvとする、という指針を変えていないからだ。この「読売」の記事で間違っているのは、「年間積算線量が100ミリシーベルトまでなら健康への影響は明確に検出できない」と書いている箇所だ。これは生涯にわたる累積線量が100mSvまではガンによる死者数が明確ではないということを勘違いして書いたのだろう。年間100mSvは明らかな誤りである。「読売新聞」の記事データベースで確かめたが、修正されていなかった。
 また、「日本経済新聞」(2013年3月12日付2面)は「帰還基準線量緩和へ」へと題してこう報じている。「原発周辺では、一度の除染で5〜10ミリシーベルトまで放射線量を減らした後に作業を繰り返しても、1ミリシーベルトまで低下させるのは困難なことがわかってきた。(略)1ミリシーベルトの目標は、前民主党政権が国際放射線防護委員会(ICRP)が示す1〜20ミリシーベルトの下限を採用した経緯がある。一方で放射線の影響による発がんリスクは、100ミリシーベルト以下なら喫煙に伴う発がんリスクと差はないとされる」。
 この記事でも、年間1〜20mSvと生涯累積100mSvの時間(期間)を混同していることに注意しよう。

「年間」と「累積」は違う
100mSvをめぐるメディアの誤解

 これらの記事を読むと、年間1mSvなんか大したものではない、現に健康被害は何も起きていない、年間20mSvならぜんぜん問題ないと思われるかもしれない。
 最近も、「読売新聞」は2017年2月9日付の社説で「放射線審議会 民主党政権時の基準を見直せ」と題してこう書いていた。「除染に関しても、民主党政権下で、実質的に年間1ミリシーベルト以下とする目標が設けられた。/科学的には、100ミリシーベルト以下の被曝による健康への影響はないとされる。国際放射線防護委員会(ICRP)は、これに余裕を見込んで、20ミリシーベルト以下で避難措置を解除し、長期的に1ミリシーベルトを目指すとの考え方を示している」。
 以上の新聞報道では100mSvまでは安全だということが強調されている。しかも、年間100mSvまで安全だと誤解している節もある。
 日本の自然放射線量(空気中のラドン、大地、食物などからの放射線量)は、年間1.4mSvだとされている。年間1.4mSvは平均的な推定値である。平時の関東地方の空間放射線量は、毎時にすると0.04μSvくらいだ。除染基準の0.23μSvは平時より5倍高いことになる。
 また、「読売」や「日経」の記事で登場するレントゲン写真などの医療被曝が大きいことも事実だ。つまり、年間1mSv自体、危険な数値ではない。そうではなくて、この被曝が医療のように便益のある計画的な被曝なのか、原発事故のように意図せざる被曝なのか、という違いを押さえておかなくてはならない。この違いを混同していると線量限度の数字を誤解することになる。
ICRP「2007年基準」の正しい読み方
 ICRPは1960年に一般公衆の線量限度を年間5mSv程度とした。この基準が長く続いたが、チェルノブイリ原発事故(1986年4月)を経て、1988〜90年に一般公衆の年間被曝許容量を1mSvまで下げている。この基準が現在も続いている。
 一般公衆とは、放射性物質を取り扱う作業者(つまりプロ)と異なり、意図せざる被曝を受ける市民のことである。作業者の場合は、報酬を得て計測しながら被曝(計画被曝という)するので、一般公衆の意図せざる被曝とは区別される。一般公衆の場合、医療放射線などの計画被曝を除き、原発事故や核戦争などによる意図せざる被曝の上限を年間1mSvとする、という意味である。つまり、医療被曝と原発事故による被曝は明確に区別されている。
 しかも、内部被曝はカウントされていない。日本では現在、意図せざる内部被曝も年間1mSvを上限として食品のセシウム137含有量を規制している。

一般にはわかりづらい
ICRP「2007年勧告」を解説

 ICRPは2007年に「勧告」を大きく改定した。基準を変更したのではなく、原発の重大事故や核攻撃を受けた場合の緊急事態を想定した数値を発表したのである。ICRP「2007年勧告」は邦訳が出版され、現在はウエブで無料公開されている。「1990年勧告」に比べ、被曝対象者の分類などが細かくなり、事故や核戦争を想定した緊急事態時の対応が記されていることなどから、非常に分かりにくくなっている。文章も難解なので、ここでは重要なポイントだけを、中央放射線審議会の中間報告から抜き書きする。これも2011年と2013年の筆者のレポートで紹介したが、もう一度簡略に書いておく。
ICRP「2007年勧告」のポイント
【放射線防護の生物学的側面】             
確定的影響(有害な組織反応)の誘発――吸収線量が100ミリ・グレイ(グレイはシーベルトとほぼ同じ)の線量域までは臨床的に意味のある機能障害を示すとは判断されない
・確率的影響の誘発(がんのリスク)――LNT(Linear Non-Threshold……直線しきい値なし)モデルを維持
●筆者による解説……100mSv以下だと特定の機能障害は見られないという。累積100mSv以上の短期集中被曝で確定的影響が出るという意味だ。確定的影響とは、脱毛、白血球の減少、白内障などの明らかな病変である。一方、長期にわたる低線量被曝でも累積100mSv以上で影響が出る。これを確率的影響という。年間20mSvだと5年で100mSvに達する。年間1mSvならば100年である。1mSvの根拠は、100歳まで生きたとして年間1mSvを上限にする、ということだ。実際には、内部被曝、医療被曝、自然放射線などもあることに注意されたい。100mSv以下の確率的影響は、閾値(しきいち)はないとするLNTモデルを想定している。ガン死亡のリスクは、放射線被曝ゼロから線量率に比例して直線的に上昇するという考え方だ。すなわち、可能な限り被曝を避けるべき、という発想である。
【線源関連の線量拘束値と参考レベルの選択に影響を与える因子】
・年間1mSv以下――計画被曝状況に適用され、被曝した個人に直接的な利益はないが、社会にとって利益があるかもしれない状況(計画被曝状況の公衆被曝)
●筆者による解説……非常にわかりにくい表現だが、事故などで公衆が意図せざる被曝状況にあり、被曝を避けなければならない、しかし、事故は起きてしまったので、年間1mSvまでなら社会活動上の利益があるので許容する、という意味である。
・年間1〜20mSv以下――個人が直接、利益を受ける状況に適用(計画被曝状況の職業被曝、異常に高い自然バックグラウンド放射線、及び事故後の復旧段階の被曝を含む)
・年間20〜100mSv以下――被曝低減に係る対策が崩壊している状況に適用(緊急事態における被曝低減のための対策)
●筆者による解説……「計画被曝」とは作業者のことである。したがって、この項目を公衆レベルで読むときは「事故後の復旧段階」と「緊急事態」が適用される。つまり、事故直後の「緊急事態」では対策が崩壊しているので、短期的に20〜100mSvまで許容、「復旧段階」では一般公衆の被曝量は1〜20mSvまで認める、という意味だ。ここから避難解除の要件が生まれたわけである。

「線量限度」を表わす数字の意味を
きちんと把握しておくべき

 累積線量100mSvまで安全だとは、ICRP「2007年勧告」には書かれていない。公衆の意図せざる被曝は可能な限り避けること、事故が起きてしまった場合は、年間1mSvまでは個人が生活上のベネフィットがあるので許容、事故の復旧段階では20mSvまで認めるが、長期的には1mSvが限度、ということである。
 累積100mSvでガン死亡のリスクが0.5%増加することは実証されている。100mSvまでの長期にわたる低線量被曝の場合も、0から直線的にリスクが増加するという考え方を採用する、これがICRPの指針である。
 年間1mSv、年間20mSv、累積100mSv、私たちは、これらの数字の意味を正確に把握しておくべきだ。発表や報道をうのみにしてはいけない。チェルノブイリ原発事故でも、子どもの健康被害(小児甲状腺ガン4000例《死者15人》)が計数として明確になったのは20年後の2005年だった。世代を超えた超長期の健康フォローが望まれる。
(ダイヤモンド社論説委員 坪井賢一)

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転載
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中之条町、メガソーラーと小水力を稼働、エネ地産地消に活用

ベース電源を確保し、地域新電力の再エネ比率50%超も視野に
  • 金子憲治=日経BP総研 クリーンテック研究所
  • 2017/08/23 12:06

 群馬県中之条町は7月28日、同町が建設していた小水力発電所とメガソーラー(大規模太陽光発電所)の竣工式を開催した。完成したのは、出力135kWの「美野原小水力発電所」と、約2MW の「沢渡温泉第3太陽光発電所」。

 「美野原小水力発電所」は、農業用水として四万川から引いている「美野原用水」を活用した。町営施設「花の駅美野原」の敷地内に約370mの水路と水車を据え付けた発電施設を建設した。北側斜面の約64mの落差と最大使用水量0.3m3/sで最大135kWを発電する。クロスフロー水車を採用した。年間発電量は最大で57万kWhを見込む。

 「沢渡温泉第3太陽光発電所」は、同町上沢渡唐操原の4.2haの敷地にリース方式で建設した。太陽光パネルは、ハンファQセルズ製、パワーコンディショナー(PCS)は、デルタ電子製の分散型を採用した。年間発電量は約275万kWhを見込む。

 小水力発電設備の施工はヤマト(前橋市)と千島工務店(中之条町)、メガソーラーは国定電機(伊勢崎市)が施工を担当した。

 両発電所で発電した電力は、いずれも町の出資で設立した地域新電力・中之条パワー(中之条町)に全量を販売する。

 中之条パワーは、今回、運転を始めた2カ所を含め、メガソーラー4カ所(合計約7MW)と小水力(135kW)から電力を調達する契約を結んでいる。これまでに契約した供給先は、公共施設30カ所を含めて高圧需要家47件、一般家庭を含めた低圧需要家60〜70件で、契約量で約2.9MWとなっている。

 同町では、「ふるさと納税」の返礼品として、「お礼の電力」を供給する仕組みを始めており、低圧需要家のうち約20件が「お礼の電力」契約者となるという。この仕組みでは、15万円の寄付に対し、2500kWh(一般家庭で半年から1年分)を供給する。

 中之条パワーでは現在、電源構成に占める再生可能エネルギーの比率は、42%程度になっている。「今回、ベース電源として活用できる小水力が加わったことで、再エネ比率が50%を超える可能性もある」(中之条パワーの山本政雄代表)としている。中之条町では、間伐材などを活用した木質バイオマス発電も検討しており、エネルギーの地産地消をさらに進め、中之条パワーの供給する電力の再エネ比率の向上を目指す。

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