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びわ湖ローカルエネルギー研究会
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<第3回>不動産投信のノウハウを生かす「メガソーラーファンド」

投資の小口化で、大規模発電所のオーナーを幅広く募集

2014/03/03 00:00
金子 憲治=日経BPクリーンテック研究所
 
 
 福岡県田川郡川崎町は、福岡県のほぼ中央にあり、南に英彦山、北に福智山を仰ぎ、自然環境に恵まれた地域だ。2013年12月16日、同町の工業用地に約1.7MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「川崎町田原太陽光発電所」が着工した。太陽光パネルはシャープ製を採用し、EPC(設計・調達・建設)もシャープが担当する。運転開始は、2014年3月31日の予定だ。

不動産投信の仕組みをメガソーラーに応用

 「川崎町田原太陽光発電所」は、一見すると、固定価格買取制度(FIT)によって急増している、約2MWのメガソーラーの1つだが、他と大きく異なる点がある。事業者(スポンサー)を幅広く募る「太陽光発電ファンド」によって、億円単位に達する事業資金を調達し、建設していることだ。不動産のファンド事業などを手掛けるファンドクリエーショングループが、太陽光発電ファンドとして、手掛けているものだ。
 
 太陽光発電ファンドのスキームは、まずファンドクリエーショングループが設立したSPC(特定目的会社)であるHMF合同会社が事業主となる。HMF合同会社が、メガソーラーによる発電事業への出資者を募り、集めた資金で発電設備の購入などの事業資金を賄い、売電によって得られた利益を出資者に分配する。ファンドクリエーショングループは、「アセットマネジャー」として、HMF合同会社と「アセットマネジメント契約」を結ぶ。この契約により、アセットマネジャーは、メガソーラー設備を維持・管理し、出資者に対して収益を最大化する責任を持つ(図1)。
 
図1●「メガソーラーファンド」の仕組み
(出所:日経BP)
 
 こうした仕組みを「GK−TKスキーム」と呼ぶことがある。GKは「合同会社」、TKは「匿名組合出資」の略称だ。つまり、「出資者が合同会社に匿名組合出資する」ことを意味する。「合同会社」とは、2006年5月に施行された新会社法で認められた会社形態で、設立の手続きが簡単なため、SPCの母体として迅速に立ち上げられる利点がある。合同会社の社員(出資者)は会社債務に対し有限責任とされる点が、合名会社や合資会社とは異なっている。また、「匿名組合出資」とは、出資者がエクイティ・ホルダー(自己資本保有者)の地位を得ながらも、経営は合同会社に委ね、利益配分のみを受け取る契約形態を意味する。匿名組合出資は課税対象とならないため、二重課税を回避できる利点もある。
 
 このようなメガソーラー事業をファンドにする金融スキームは、「REIT(リート)」と呼ばれる不動産投資信託を応用したものだ。不動産投信の場合、多くの投資家から資金を集めて不動産を購入し、そこから生じる賃料などの利益を投資家に分配する。投資家には株券に相当する投資証券を発行し、株と同じように証券コードが割り当てられ、東証で売買できる。REITにより、個人では難しかった不動産投資が、相対的に少額でも可能になった。東証では、FITの施行によってメガソーラー事業に関しても投資対象としてのニーズが高まっていることから、研究会を開いて、REITのような上場する仕組みを検討し始めている。上場が実現すれば、ファンドのセカンダリー市場(流通・二次市場)が活発化し、より気軽に投資できるようになる。メガソーラー建設には、億円単位の事業資金が必要になるが、ファンドにして小口化すれば、多くの人が投資できるため、社会インフラとして整備が加速化する可能性がある。

100億円を超える事業費をファンドで集める

 ファンドクリエーショングループは、不動産ファンド事業を通じてアセットマネジメント、土地のソーシング、ファイナンス・アレンジメントなどの経験を蓄積してきた。こうした経験を生かして、太陽光発電事業にいち早く取り組んだ。メガソーラー事業のアセットマネジャーとして、地主や電力会社との交渉、経産省への申請手続き、建設における電機設備メーカーや建設会社との折衝を引き受け、ノウハウを高めてきた。今回の案件はその1つだ。設備認定の申請準備中の案件を含めて、15サイトを手掛ける(図2)。FITの買取価格42円/kWhの案件が44MW、総事業費132億円、同36円案件が21MW、63億円、申請準備中の案件が26MW、78億円となっている。
 
図2●ファンドクリエーショングループが手掛ける「太陽光発電ファンド」
(出所:ファンドクリエーショングループ)
 
 また、東京海上アセットマネジメント投信(東京都千代田区)も、メガソーラー事業に幅広く分散投資する投資商品「TM ニッポンソーラーエネルギーファンド2013 投資事業有限責任組合」を開発し、出資募集を終了し、2013年8月に契約が成立した(図3)。これは2012年8月に成立した「TM ニッポンソーラーエネルギーファンド2012 投資事業有限責任組合」に続く第2号商品。国内の企業年金基金、金融機関を含む機関投資家から合計135億円の出資約束を受けた。同社では引き続き同様のコンセプトの商品を組成するという。
 
図3●東京海上アセットマネジメント投信がファンドに組み入れた愛知県半田市のメガソーラー
(出所:千代田化工建設、ソーラーフロンティア)
 
 こうした大手金融事業者によるメガソーラーファンドの場合、出資者の多くは年金基金などの機関投資家になることが多い。一方、一般市民から幅広く出資を募り、地域社会として再生可能エネルギーの普及を進めようとの意味合いが強くなるのが「市民ファンド」だ。市民ファンドは、NPO(非営利組織)などがアセットマネジャーとして、発電設備の運営から収益管理を担い、出資もより小口化するなど、市民性が高いことが特徴だ。寄付を組み込む場合もある。

「市民ファンド」は地域の活性化も狙う

 代表的なものが、自然エネルギー市民ファンド(JGF:東京都中野区)とおひさまエネルギーファンド(おひさまファンド:長野県飯田市)だ。2013年10月に共同で記者会見を開き、新たに5地域で1MW前後の太陽光や風力発電設備を建設し、市民ファンドを商品化し、出資者を募集すると発表した。北海道では2MW、福島では1〜1.5MW、神奈川県小田原では約1MW、長野では1.5〜2MW、山口では0.8MW以上を計画する。北海道は風力発電だが、そのほかの4地域はメガソーラーを設置する。長野がおひさまファンド、それ以外の4地域がJGFによるファンドになる。例えば、小田原市の「ほうとくソーラー市民ファンド」の場合、一口10万円で、8年間、目標利回りは2%となっている(図4)。
 
図4●小田原市の「ほうとくソーラー市民ファンド」に組み入れられた下曽我小学校屋根貸しソーラー
(出所:小田原市)
 
 「ファンド」と、同特集・2回目に取り上げた「プロジェクトボンド」を比べると、銀行を介さない、直接金融という点では同じ。ただ、プロジェクトボンドは、メガソーラー事業の負債部分を債券化したものなので、2%前後と低めながら固定利率になる。加えて、格付けによってリスク判断も容易になっている。一方、ファンドの場合、事業会社のエクイティ(自己資本)に出資するため、配当は期ごとの利益との見合いになり、利回りは確定しない。赤字になれば配当はない。事業が破綻した場合も、負債や債券の返済が優先し、出資金は劣後する。ただ、仮にメガソーラー事業が見込み通りのIRR(内部収益率)、例えば7%を実現できたとすれば、利率は5〜6%程度になる可能性もある。
 
 「ファンド」「プロジェクトボンド」とも、リスクへの十分な対処やアセットマネジャーやアレンジャーの事務手数料などの経費が発生するため、ある程度大きな規模の発電事業でないと、魅力的な利回りで円滑に資金調達するのは難しい。相対的に出力規模の小さな太陽光発電所を対象にした市民ファンドの予定利回りが低めなのはそのためだ。ただ、市民ファンドは、住民が再生可能エネルギーを支え、地域を活性しようという社会貢献的な要素があり、単なる「投資先」という枠を超えて、一定の広がりを見せる可能性もある。

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