ここから本文です
びわ湖ローカルエネルギー研究会
地域エネルギーとネットワーク

書庫表紙

記事検索
検索

全4ページ

[1] [2] [3] [4]

[ 次のページ ]



転載
--------------------------------------------------------------


地熱発電、再び沸くか 政府が埋蔵調査テコ入れ
エコノフォーカス

政策研究
コラム(経済・政治)
2018/1/21 21:02
日本経済新聞 電子版
 訪日外国人客にも人気の「ONSEN」は日本が火山国ゆえに生まれた。日本は地熱発電という極めて安定した再生可能エネルギーの適地でもあるのに、消費電力に占める地熱の割合はわずか0.3%。原子力発電所の再稼働が滞る中、政府はこの割合を2030年に3倍の1%に引き上げるべく18年度から埋蔵調査のてこ入れに動く。石油危機などでエネルギーが心配になると注目されてきた地下の宝。再び沸くか。
 地熱発電は、地熱で熱せられた蒸気を使う。いわば地球をボイラーとした発電で、太陽光や風力と違って天候に左右されない。一定期間でどのくらい発電設備が働いたかを示す設備利用率は83%と、太陽光(12%)や風力(20%)よりずっと高い。効率が良いうえに、事業化すれば半永久的にエネルギー供給できる理想的な資源だ。
 潜在的な発電能力にあたる日本の地熱の資源量は2347万キロワット。米国、インドネシアに次ぐ世界3位だが発電に使っているのは53万キロワットにすぎない。資源量に対する利用率は約2%にとどまっており、潜在力に比べると開発が進んでいない。
 地熱発電用のタービンで東芝三菱重工業富士電機など日本企業が7割の世界シェアを占めるのに、肝心の発電事業では日本は遅れている。
 理由の一つは発電までに時間がかかること。広い国土から重力探査装置などを使って適地を探り当てるのはまさに宝探しで、掘削や環境調査などの事業化に平均14年かかる。太陽光の1年やバイオマスの5年、風力の8年に比べずっと長い。
 宝が眠っていそうな場所の8割は国立・国定公園に指定され、原則、掘削や新たな建物の建設ができない。候補地の多くが温泉地に近く、地元の反対が強いこともある。鹿児島県指宿市では地熱発電計画について、地元旅館業者らが湯量への影響が出るなどとして撤回を要求。全国で同じような反対運動は多い。
 2012年に再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が始まり、燃料がいらない地熱発電は事業収益が見込みやすくなった。だが、導入量の増加は1.6万キロワット(導入前比3%増)。太陽光の3350万キロワット増(6.7倍)とは比べものにならない。
 地熱の導入目標は今の3倍の150万キロワット程度だ。実現すれば国内消費電力の1%になる。政府は今後、事業者への後押しを強める。
 経済産業省は18年度に指針を改定し、環境への影響を調べる「アセスメント」を書面と実地で同時に進められるようにする。段階を踏んでいた従来と比べ、期間を2年程度に半減できる。
 18年度からは環境や埋蔵調査をする地点をこれまでの2倍に増やし、地熱発電ができそうな地域の候補を積極的に示す。これらの施策に採掘技術の進化も踏まえると、事業化の期間を14年から10年に短くできる。
 国立公園内の開発については「特別保護地区」を除き規制を緩和し、全資源量の7割程度を開発できるようにしている。
 
◇ ◇ ◇
 日本における地熱発電開発は1960年代にさかのぼる。66年に松川発電所(岩手県、出力2万3500キロワット)が国内初の地熱発電所として稼働した。
 73年の第1次石油危機で電力料金が1年で2倍近くになったときに一躍脚光を浴びる。政府は石油依存からの脱却を模索するなかで地熱に支援制度を設け、70年代には4基で計12万キロワット超、80〜90年代に計34万キロワットあまりを稼働させた。
 しかし開発には膨大な時間と費用がかかり、1カ所あたりの出力は数万キロワットと小さい。1基で100万キロワットの出力を備える原子力などに政府の目は向き、地熱は97年には新エネルギー法の対象からも外れ、長らく忘れ去られてしまった。
 しかし2012年の再生エネの固定価格買い取り制度では、地熱も対象となり、環境調査が不要な出力7500キロワット以下の発電所の建設が相次ぐ。三菱マテリアルなどは23年ぶりに出力1万キロワット超の大型の山葵(わさび)沢発電所(秋田県)を19年度にも稼働する計画だ。クリーンエネルギーの地熱がまた注目されている。
(古賀雄大)




転載
--------------------------------------------------------------------

「エネルギーテック」のこれから:「ブロックチェーン」がエネルギー業界にもたらすインパクト

新しいビジネスモデルを実現する持つ技術基盤として、エネルギー業界でも注目されはじめている「ブロックチェーン」。具体的には業界にどのようなインパクトをもたらす可能性があるのだろうか。

2017年10月03日 07時00分 更新
[江田健二,スマートジャパン]

 ビジネス界では今、「ブロックチェーン」が注目を集めている。ブロックチェーンとは、「これまで1つの場所で集中的に管理していたものを分散させて管理しよう」という考え方のもとに作られた技術のことを指す。発想の根底にあるのは、ある1つの集中的に力を持った組織やシステムに全てのコントロールを委ねるのではなく、参加する一人一人が相互に信頼し合い、助け合って管理していこうという共助・共同管理の考え方だ。例えば、銀行・証券業界では金融(ファイナンス)とテクノロジーが融合した「フィンテック」が期待されているが、ここにもブロックチェーンの技術が生かされている。

 ブロックチェーンがこんなにも注目される理由の1つに、安全面・コスト面での大きなメリットが挙げられる。ブロックチェーンは、日本語で「分散型台帳技術」ともいわれている。つまり、データを分散管理することができる。データは分散管理することで安全性・安定性が高まる。また、大規模で複雑な集中型システムに比べると、構築するための投資コストが少なくて済む。

 このブロックチェーンが技術的土台となり生まれた代表的なものに「ビットコイン」などの仮想通貨がある。2016年7月にベトナムの仮想通貨取引所を視察に行く機会に恵まれた。視察訪問するまでは、正直なところ仮想通貨に対しては、半信半疑な気持ちが強かった。しかし、現地取引所の担当者が平然とした顔で「この仮想通貨取引所では、1日150億円の取引がおこなわれています」と話していて驚いた。知らない間に、世界では仮想通貨が一定のポジションをとりつつあることを肌で感じた。日本でも改正資金決済法の改正により、仮想通貨がこれまで以上に一般的になろうとしている。

 ビットコインなどの仮想通貨を利用すると、円からドル、ドルからユーロなどに通貨を交換する必要がない。海外送金や海外での商品購入での手間暇や手数料が減らせるメリットがある。また、手持ちの自国通貨を仮想通貨にしておくことで資産防衛の手段になる。「なんだ、そのくらいのメリットか」と思う人も多いだろう。しかしそれは、日本の円が国際的に信用され、安定している通貨だからこその発想である。世界的に自国の通貨が不安定な国はたくさんある。自国の通貨が下落していくハイパーインフレの国にとっては、国境のない仮想通貨の方がはるかに信用できるのだ。例えば2013年に預金封鎖が行われたギリシャでは、自国の通貨への信用が下がったことで、資産を仮想通貨に移す人も大勢いた。つまり、金融の世界では分散管理の明らかなニーズが存在している。

業界を超えて広がるブロックチェーン

 ブロックチェーンは、不動産、医療などさまざまな業界でも活用が研究されている。おそらくブロックチェーンが変えるのは金融の世界だけではない。将来的には、権利証書、音楽や芸術の著作など、あらゆる価値の取引はブロックチェーンを使って行うことができるだろう。

 今、その波はエネルギーの取引にも押し寄せている。例えば、ヨーロッパや米国では、電気を個人間でやりとりする実証実験が行われている。また、これまで管理が非常に煩雑であった再生可能エネルギーの環境価値の交換(太陽光発電や風力発電の付加価値を交換すること)をする実験も行われている。取引される電力量や環境価値の管理、保持、交換にブロックチェーンを活用されている。

 海外ではこのようにエネルギーとブロックチェーンを組み合わせた、新しいビジネスモデルの開発を目指す企業が続々と登場している。例えば米国では、エネルギー、クリーンテック、通貨システムに関する分散型ビジネスモデルの開発やコンサルティングを手掛けるLO3 Energy社というエネルギーベンチャーが誕生している。同社は、ニューヨーク州ブルックリンで、ブロックチェーンを活用して太陽陽光発電を持つ家庭が地域内で自由に電力取引を行えるようサービスの実証を進めている。

 日本は大手新電力のエナリスが、ブロックチェーン技術を活用した電力取引サービスの商用化に向けた取り組みを進めているところだ(関連記事「ブロックチェーン活用した電力取引、福島で実証が始まる」)。

 とはいえ、金融業界とエネルギー業界は事情が異なる。海外送金の手数料が安くなる理由から仮想通貨を利用するのは理解できる。しかし、わざわざエネルギーを遠くの異国に送る必要性は高いとはいえない。また、自国の通貨変動リスクをヘッジするために仮想通貨に一部資産を避難させる理由も分かる。しかし、電気代やガス代が毎日変動しすぎて困っているという話も聞かない。

 ブロックチェーンは、本当にエネルギー業界にインパクトをもたらすのか、本当に役に立つシーンはあるのだろうか、ブロックチェーンのおかげでこれまではかなえられなかった私たちのニーズが満たされることはあるのだろうかーーこうした点について、これからのエネルギーの活用方法について想像しながら、考えてみたい。

変わっていく私たちのニーズ

 50年前に比べて、世界は非常に身近になった。そして、一人一人が電気に代表されるエネルギーを利用する生活シーンが増えている。自分たちの親の世代と比較すると、エネルギーの活用方法は大きく変わっている。

 2020年の私たちは、今以上に多くのIoTデバイスを持ち、世界中を移動しているだろう。そうなると、より柔軟性の高い電源確保のニーズが高まる。いつでもどこでも気にせず使える電気、わかりやすくいうならば「持ち運べるエネルギー」が必要だ。 
 そのニーズに応えるように、発電分野において集中から分散へいう大きな流れが生まれる。これまでは、1つの大規模発電所から多くの利用者に、一方通行でエネルギーを提供していた。この流れが、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを中心とする大小さまざまな規模の分散された発電所から提供されはじめている。

 世界中を移動しながら電気を利用したいニーズ、さまざまな場所で分散型発電されるエネルギー、この2つの取引をつなぎ合わせるテクノロジーがブロックチェーンになるのである。

 電気の売買が容易にできるようになると日常生活も一変する。外出先でパソコンの充電が足りなくなってしまった場合、今は「すみません」とお願いして、近くで見つけたお店などで充電させてもらうだろう。それが「100円分、電気を売ってください」と購入できる時代になる。自分がどれだけ電気を充電したか(購入したか)がわかることで、販売する場所が増え、あらゆる場所で充電が可能になる。いつでも充電でき、充電した分だけお金を払うということが、ブロックチェーン技術の活用によって一歩前進する。また、太陽光パネルで発電した電力の余剰分を隣の家に直接販売することも可能になるのだ。

 今の私たちの常識では、電気やガスは、世帯ごとで契約して基本料金と利用量に応じた料金を支払うのが普通だ。しかし、この先、電力会社1社のみと利用契約するのではなく、電気を使う分だけ、使う機器ごとにあちこちから購入することも可能になる。そうなると、家族一人一人が異なる電力会社と契約する時代も来るだろう。通信業界の変遷と同じ現象だ。従来は家庭に固定電話が1台だけあり、その基本料金と通話料を支払うというのが一般的だった。しかし、現在は家族の各人がスマートフォンをそれぞれ別の通信会社と契約し、自分に合った料金プランを選ぶことが可能になった。

 ここで「消費者がわざわざ電気を売り買いするニーズがあるのか?」という疑問もあるだろう。しかし、AppleがiPhoneユーザーに「電気もAppleから買ってください。割安で、100%再生可能エネルギーの電気を販売します」と投げかけたらどうだろうか? 購入するユーザーは多いのではないだろうか。

 環境への意識が高い消費者の中には、風力や地熱などの再生可能エネルギーから発電された電気だけを買いたいというニーズが一定数存在する。また、海外旅行者が日本で電気を買いたいという際にも、コンビニやカフェで気軽に電気を買えると便利だろう。

 そして究極のニーズは、「使った分だけ支払いたい」ということである。これは、電気が「基本料金」というものから自由になるということを意味する。屋外で充電した電気は、ブロックチェーンを活用して正確に把握し、支払うことができる。そうなると他の人やお店からの電気の販売や交換(シェア)も進むはずだ。

エネルギーをシェアすることが当たり前の時代に

 これまでエネルギーは、集中的に発電され、一方通行で供給されたもの利用するしかなかった。それがこれからは、分かち合う時代、互いにシェアする時代に向かう。それは、「参加する一人一人が相互に信頼し合い助け合って管理していこうという共助・共同管理の考え方」をもつブロックチェーンの思想にフィットする。

 ブロックチェーンは、外出先でも海外でもエネルギーを自由に利用したいというニーズをかなえてくれる(とはいえ、ブロックチェーンもすべてが万能ではない。例えば、リアルタイムでの確認処理や秘匿性が苦手である。これらは、これからの技術でカバーできるかどうか楽しみなところだ)。

 今、多くの業界で起こっている地殻変動。その原因の根底にあるのは、私たちの生き方や考え方の変化とそこから新たに生まれてくるニーズだ。その波に呼応して、エネルギーの在り方もおのずと形をかえていく。

 ブロックチェーンは、本当にエネルギー業界にインパクトをもたらすのか?

 私の考えでは、エネルギー業界に多大な影響をあたえる。影響を与えられた個人もそしてエネルギー企業も存在価値を変えていく。個人は、エネルギーを今まで以上に柔軟に利用し、生活を豊かにしていく。そして、エネルギー企業は、分散して発電された電力をマネジメントするなどの形で個人をサポートすることで成長していくだろう。

 未来のエネルギー企業は、電気の発電、販売にとどまらない。省エネや関連したサービスを提供することで顧客に対して価値を提供していく存在になる。また、どのPCが売れても常に利益を出し続ける、半導体企業のインテルのように自動車、住宅、家電業界と協業し、これまではありえなかった形でエネルギーの提供を模索する企業も生まれる。


転載
--------------------------------------------------------------------

2017年05月29日 07時00分 更新

日本とアジアをつなぐ国際送電網(2):自然エネルギーへ移行する欧州、多国間で電力の取引量が拡大 (1/4)


欧州で自然エネルギーの電力が拡大する背景には、国際送電網による多国間の電力取引がある。島国のイギリスやアイルランドを含めて、欧州全体で年間に4500億kWhにのぼる大量の電力が国際送電網で送られている。他国との電力取引が活発なデンマークでは、輸出・輸入率が30〜40%に達する。

2017年05月29日 07時00分 更新
[自然エネルギー財団,スマートジャパン]


 驚くべきことに、欧州の国際送電網の歴史は100年以上も前に始まっている。1915年に北欧のデンマークとスウェーデンの間に国際連系線が建設されたのを皮切りに、1920年にはフランス・スイス・イタリアを結ぶ国際連系線が稼働した。さらに1950〜60年代になるとドイツからポルトガルまで、そして1980年代には海底ケーブルを通じてイギリスまで国際送電網が広がっていく。

 国際送電網の拡大に伴って送電量も増え続け、2015年には欧州全体で約4500億kWh(キロワット時)に達した(図1)。これは日本国内の電力需要(9490億kWh、2015年度)の5割弱に匹敵する膨大な送電量である。特に1990年代に入ってイギリスをはじめ各国で発送電分離(発電・小売事業と送電事業の分離・独立)が進み、国境を越えた広域の電力取引が活発になった。

http://image.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1705/29/asg_figure2.jpg
図1 欧州における国際送電量の推移。TWh:テラワット時(=10億キロワット時)。出典:ENTSO-eの情報をもとに自然エネルギー財団が作成

 加えて風力発電を中心に自然エネルギーの電力が欧州全域で増加したことも、国際送電量を拡大させた。早くから風力発電の導入に取り組んできたデンマークでは、天候による発電出力の変動対策として国際送電網を積極的に活用している。既に他国に向けた電力の輸出率は30%を超え、輸入率は40%近くまで上昇した(図2)。欧州全体で見ても輸出入の比率は10%以上に達している。

http://image.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1705/29/asg_figure1.jpg
図2 世界の主要国・地域の電力輸出率と輸入率(2014年)。出典:国際エネルギー機関(IEA)などの情報をもとに自然エネルギー財団が作成

 実際に各国間の電力の潮流を見れば、国境を越えて電力の輸出入が活発に行われている状況が分かる。欧州の国際送電網は地域別に4つの大きなネットワーク(欧州大陸系統、北欧系統、イギリス系統、バルト系統)で構成する。さらに各地域のネットワークを直流送電方式で非同期に接続して、遠く離れた国の間でも広域の電力取引を可能にしている(図3)。

http://image.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1705/29/asg_figure5.jpg
図3 欧州各国間の電力潮流状況(2015年)。GWh:ギガワット時(=100万キロワット時)。(クリックで拡大)出典:ENTSO-e(凡例の和訳は自然エネルギー財団)

高圧直流方式で送電コストが低下

 国際送電網を支える送電技術の進展は目覚ましい。特に重要な役割を果たしているのが、高圧直流(HVDC)方式による長距離送電技術である。通常の送電網では電圧を変換しやすい交流で電力を送るが、直流と比べて送電時の損失が大きくなる。この点で高圧のまま直流で電力を送るHVDCは損失が小さく、国際送電網の基幹部分に採用することで送電効率を高めることができる。

 それに加えて海底ケーブルの技術が進んできた。長距離の国際送電線をHVDCで海底に敷設する大規模なプロジェクトが各地域に広がり始めている(図4)。その中で代表的な例を挙げるとすれば、ノルウェーとオランダ間を結んで2008年に開通した「NorNed(ノルネッド)」だろう。全長が583kmに及び、現在でも世界最長の海底送電ケーブルである。

http://image.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1705/29/asg_table1.jpg
図4 大規模な高圧直流送電の主な事例。€:ユーロ m:100万。出典:電力広域的運営推進機関

 NorNedは±450kV(キロボルト)の高圧直流方式で700MW(メガワット)の電力を送電できる。建設に掛かった総コストは6億ユーロ、現在の為替レートで計算すると約750億円である。日本の近海と海底の状況などが違うものの、技術革新によるコスト低下も進んでいる。そう考えると、欧州とさほど大きく変わらない単価で、日本と近隣諸国の間をHVDC方式の海底送電ケーブルで接続できる可能性は大きい。

 欧州では国際送電網の建設コストが下がるのと同時に、太陽光発電や風力発電を中心に自然エネルギーの電力が各国で増加して、電力を輸出入するメリットが大きくなった。とりわけ海に面した国々では、HVDC方式による国際連系を通じてさまざまな便益が期待できる(図5)。

http://image.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1705/29/asg_table2.jpg
図5 国際連系によって各国に期待されている主な便益(高圧直流送電の事例)。水色が運転中、それ以外は建設中または建設予定。出典:自然エネルギー財団

北欧からイギリスへ自然エネルギーの電力

 日本と同じ島国のイギリスでは火力発電の比率が高く、しかも電力の卸売価格が近隣諸国と比べて高いという問題を抱えている。こうした課題を国際連系線で解決できる期待は大きい。最近では欧州の電力取引のハブになっているオランダから大量の電力を輸入できるようになり、新たに北欧のノルウェーやデンマークからも国際連系線を通じて安価な水力・風力の電力を輸入する計画が進んでいる(図6)。

http://image.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1705/29/asg_figure7.jpg
図6 イギリスの国際連系線プロジェクト。(クリックで拡大)出典:Poyry、“Costs and Benefits of GB Interconnection”(凡例の和訳は自然エネルギー財団)

 2011年にイギリスとオランダの間で運転を開始した国際連系線の「BritNed(ブリットネッド)」の事業規模を見ると、オランダからイギリスへ融通する電力量が年々増加して、2015年には年間で80億kWhにのぼった(図7)。さらにイギリスとオランダ間の電力価格差が拡大したことにより、BritNedの送電事業の売上高は2億ユーロ近くまで達した。建設に掛かった総事業費(6億ユーロ)を数年のうちに回収できる見通しだ。

http://image.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1705/29/asg_figure8.jpg
図7 「BritNed」の売上・総経費・電力融通量。€:ユーロ、TWh:テラワット時(=10億キロワット時)。出典:BritNedなどの情報をもとに自然エネルギー財団が作成

 これに加えてイギリスには北欧から新たに水力や風力の電力が国際連系線で入ってくる。欧州各国の卸電力の取引価格を比較すると、自然エネルギーの比率が高い北欧4カ国を含む卸電力取引所「Nord Pool(ノルドプール)」の価格が最も低い(図8)。2015年にはイギリスの半値以下の水準になっている。2つの地域間を国際連系線で接続すれば、イギリスの卸電力の価格低下と自然エネルギーの利用拡大が期待できる。

http://image.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1705/29/asg_figure6.jpg
図8 卸電力取引の前日スポット価格(年平均)。€/MWh:ユーロ/メガワット時(=1000キロワット時)。欧州電力取引所(EPEX)などの情報をもとに自然エネルギー財団が作成

北海道と似ているアイルランド

 イギリスからは西側のアイルランドとの間にも国際連系線がある。2013年に運転を開始した「East West Interconnector」である。アイルランドは風況に恵まれていて、風力発電の開発が活発に進んでいる。2017年1月11日には、風力発電による供給量が国全体の電力需要の8割を超える水準まで跳ね上がった。それでも国際連系線でイギリスに電力を送り、需給バランスの調整に成功している(図9)。

http://image.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1705/29/asg_figure9.jpg
図9 アイルランドにおける電力需要・風力発電・連系線の実績(2017年1月8日〜14日、15分ごと)。MW:メガワット(=1000キロワット)。出典:EirGridの情報をもとに自然エネルギー財団が作成

 アイルランドは面積や電力需要の規模が日本の北海道に近い。北海道でも太陽光発電や風力発電を中心に自然エネルギーの電力が拡大しているものの、需給バランスを維持する目的で導入量を抑制する動きが見られる。東北と結ぶ連系線の増強計画が進んでいるが、他国とも国際連系線でつながれば、自然エネルギーの導入量を大幅に増やすことが可能になるだろう。

 国際連系線は原子力発電の依存度が高い国にもメリットを与える。イギリスに向けてフランスからも国際連系線で電力が送られている。原子力発電の比率が高いフランスでは卸電力市場のスポット価格が低い。ただし原子力発電は1基当たりの供給力が大きいために、1基でも運転を停止すると価格が上昇してしまう。

 最近の例を挙げると、フランス国内で2016年11月8日に原子力による供給力が減少して、スポット価格が急激に高くなる現象が発生した。そこで近隣諸国から安価な電力を国際連系線で輸入して、コストの上昇を抑えることができた(図10)。フランスでは電力の安定供給に欠かせない予備力の一部も国外から調達している。

http://image.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1705/29/asg_figure12.jpg
図10 フランスと周辺国の電力取引量・前日スポット価格(2016年11月8日)。MW:メガワット(=1000キロワット)、MWh:メガワット時(=1000キロワット時)、€:ユーロ。出典:自然エネルギー財団

 こうして欧州の先進国では電力の安定供給と自然エネルギーの拡大を両立させながら、国際送電網による取引を通じて国全体の電力コストを抑制している。日本の電力市場が抱える課題の多くは、国際送電網を実現することで解決できる可能性が大きい。








転載
---------------------------------------------------------------------------------


電力グリッドの運用で立ち遅れる我が国

2017年5月25日 内藤克彦 京都大学大学院経済学研究科特任教授

 我が国においては、再エネの導入の議論となると、素人にも分かり易いので直ぐに会社間連系線の話になる傾向がある。欧州の状況を見てみると、TSO(送電会社)レベルの設備増強も行われているが、DSO(配電会社)レベルの設備増強経費の方が数倍の大きさで、電力グリッド増強は主にDSOレベルで行われていることがわかる。

【再エネ接続は本来配電網が主】
 我が国に限らず一般に人口の少ない僻地に自然エネルギーの適地が多いが、このようなところでは電力需要が小さいので、従来の型の給電システムでは、変電所や配電線の能力は電力需要に見合った小さなものになっている。一方で、洋上風力クラスのよほど大規模再エネでない限り、再エネ接続に適するのは一般にDSOレベルの電力グリッドとなる。ドイツでは配電線の増強義務があるので、再エネ接続の都度、関連する配電線や変電所のキャパシティ(容量)が自動的に増加され、上位グリッドに接続する変電所の双方向化が行われる。このため、DSOの設備増強経費はTSOの数倍となっているわけである。

 我が国の場合はどのようになっているだろうか。再エネ開発事業者が接続しようとする場合、末端の配電線のキャパシティが足りないと、①さらに上位の高圧の送電線レベルまで接続線を引き接続させる、②配電線レベルの設備増強費を電力会社が適当に見積もって再エネ事業者に請求書を回す、ということが一般に行われている。①の場合は再エネ事業者が長い接続線と高圧への変電設備の負担を強いられ、②の場合はグリッド側の設備費の負担を再エネ事業者が負わなければならない。いずれにしても強い経済的な抑制効果を生じることとなる。

【ドイツの系統増強費用はインフラ側が負担】
 ドイツの場合には、EEG(再生可能エネルギー法)における「適切な電圧の地点に接続」させる義務により、①は法律で禁じられ、②はDSO側の一般負担で整備されるので、再エネ事業者には負担が生じない。EEGの解説によるとグリッドの増強はグリッドを熟知するグリッド側の負担とすることによって最も経済効率的なグリッド増強が期待できるとされている。

 我が国のようにグリッド側が見積り他人に負担させるシステムでは、経済合理性が働くことは期待できない。英仏のように一部発電負担(5〜50%)を求める場合であっても、全ての発電事業者全体からkWhあたりの公平な負担を求めるシステムとなっている。我が国の場合は、最初の一歩を踏み出そうとする事業者にグリッド側の言い値で全て負担させてしまうわけであるから、発電負担にしても公平性を欠き、かつ、「最初の一歩の出足を挫く」強い抑制効果を持つシステムとなっていると言える。

【欧州の系統運用は市場取引を基礎に広域・実潮流で】
 グリッドの運用においても、欧州は既に遥か先へ行っている。ドイツに限らず欧州のTSOでは、前日市場を正午に閉じると同時に、前日市場の落札結果としての電源配置と需要予測に基づき送配電グリッド上で「実潮流ベース」の送電計算を実施し、市場価格を決定する。ここで市場の選択による電源配置が計算上電力グリッドに収まれば(予め空きグリッドキャパシティを帳簿上設定しているわけではない)、TSOは残存送電キャパシティを算出して、当日市場の参加者に公表し、15:00からの当日市場の運営に備えることになる。

 送電ネックの存在等によりうまく収まらない場合は、Re-dispatch(再給電)を行いう。これは、送電ネック前後の一部火力発電等の発電割当を再調整し、送電ネックの回避を図るものであり、この結果を当日市場用の残存送電キャパシティを実潮流ベースで再度計算する基礎とする。Re-dispatchでもうまく行かない場合に出力抑制を行う。

 市場の落札結果と送電キャパシティとの整合を取る計算は、ひとつのTSOの管内だけで行われるのではなく、欧州全体で同時に行われる。これが「市場のカップリング」である。この計算に際しては、TSO間のやり取りはもちろん、国境を越えた潮流計算が欧州規模で行われ、市場価格の決定も欧州規模で行われる。グリッドのネックがなければ、欧州全体で統一されたメリットオーダーに基づく単一の市場価格となるわけである。実際には送電ネックにより価格分離が多少生じるが、この場合も「実潮流ベース」のグリッド計算により価格が決定されることになる。

 このような流れを見ると、我が国のように実運用の何か月も前からグリッドキャパシティが一杯で接続ができない、というような主張は起こりえないということが理解できる。「予め満杯」と主張する人は、おそらく契約上限値を、人為的に仮定した送電ルート上に積み上げて、送電キャパシティの計算をしているのではないかと思われる。しかし、実際の潮流は人為的に仮定した送電ル−トに限って流れるわけでもないし、需要も供給も時々刻々と変化しているので、実潮流ベースで計算すると、よほど極端なケースでない限りRe-dispatchによりグリッドに収まることになる。ここでは、冒頭に出てきた「会社間連系線」を区別して特別に扱うという発想は生じようがない。

【実潮流ベースの送電容量管理が電力システム改革の根幹】
 米国やEUの電力システム改革の根幹は、実はICTを駆使したこの「実潮流ベースの計算に基づく送電キャパシティ管理」にある。米国では、ISO/RTO(独立系統運用機関・地域送電運用機関)が、このような実潮流に基づく送電キャパシティ管理を行い、EUでは、EU指令・規則にて送電混雑管理は実潮流ベースで行わなければならない旨が規定され、契約ベースの管理を規制している。

 このように欧州では、市場価格決定と送電のキャパシティ管理、送電割り振りは、ICT技術を駆使して、EU規模での実潮流計算により、同時に行っているわけである。これは、グリッド増強以前の送電線運用技術の問題であり、ICTを得意とする我が国が本来先陣を切っていても良さそうなところであるが、このようなグリッド管理技術の面でも、我が国は既にかなり遅れを取っているのではないかと思われる。

転載
---------------------------------------------------------------------

再エネの系統連系「神話」を解体する
「再エネは不安定なのでバックアップ電源が必要」・・・。相変わらず巷ではそのような神話が跋扈しています。ということは本コラムでは繰り返し述べてきましたが、この議論を非常にわかりやすく述べた報告書がつい最近、国際エネルギー機関(IEA)から公表されましたので、本コラムでもいち早く紹介したいと思います。

副題に「政策決定者のための手引き」とあるように、この報告書は専門家向けではなく、政策決定者やこの問題に関心のある一般の方に書かれた文書です。同書から一部引用し(p.9〜11)筆者が仮訳したものを以下に紹介します。

系統連系にまつわる神話と現実

風力および太陽光発電の系統連系に関する多くの主張は、それらの電源が電力系統に導入され始めた直後から起こり得ます。また、そのような主張が誤解であることを立証するためにはまだ充分な知見がない段階で起こり得ます。

神話1:天候依存の変動は制御できない。

最も顕著な主張をひとことでまとめると、おそらく「風力・太陽光発電は短期的に非常に大きく変動し、電源として不安定である」となるでしょう。この主張は、我々は日常的な経験から一見非常に最もらしく聞こえます。風速が突然変化すると、変動性再エネの変動出力を受け入れるためには火力発電の出力を急速に変化させることが必要になるかもしれません。同様に、雲が通過すると急激に日射量が変化し、太陽光パネルの出力も急激に変化するでしょう。しかし、このような感覚論的な理解は、2つの重要な要素を見落しています。

まず一点目として、電力需要そのものがランダムで短期的変動を持つ、ということです。結論から言うと、全ての電力系統はこのような変動性に対処するためのメカニズムを有しています。風力・太陽光の導入が始まったばかりの段階(訳者中:導入率約3%未満)では、これらの出力変動は需要の変動の「誤差範囲内」となる傾向にあります。

電力系統により多くの変動性再エネ電源が加わると、二番目の効果が現れてきます。電力系統の中のさまざまな場所に位置するさまざまな種類の変動性再エネ電源から出力される短期的変動は、お互いキャンセルされる傾向にあります(訳者中:いわゆる「集合化」「ならし効果」のこと)。つまり、秒単位の変動はそれほど重要ではなく、大きな変動はむしろ数時間単位のタイムスケールで発生する傾向にあります。単一の発電所が周囲に負の影響を与えるような状況もあり得ますが、これについては次項で後述します。

神話2:変動性再エネによって従来型電源のコストが上昇する。

次によくある主張としては、「風力・太陽光発電からの変動は、従来型の制御可能な発電所に多大な責務を与え、それらの変動を調整するために急激に出力を変化させることを強いている」というものが挙げられます。

一般に、風力・太陽光が導入され始めたばかりの大きな電力系統ではこの主張は正しくありません。その理由は「神話1」と同じで、変動性再エネの導入率が低い段階では,その変動性は電力需要のそれよりもずっと小さく、結局、従来型電源にとって大きな変化はないということになります。

しかし、導入率が大きくなってくると、変動性再エネ出力の変動は他の発電所の発電パターンに影響を与え始めます。ただし、これまで多くの電力系統における知見により、電力系統のトータルコストを大きく上げることなく、発電所を動的に運用する技術的能力を持たせることができることが明らかになっています。リアルタイム(実供給時間)に近い時間帯で変動性再エネ出力を予測し発電スケジュールを調整すると、これが負の影響を緩和する低コストで効果的なツールとなり、電力系統全体でコストが上昇してしまう手段を取ることを防ぐことができます。
             

神話3:変動性再エネには1対1のバックアップが必要。

この主張は、「風力・太陽光は信頼できない電源である。したがって従来型電源によるバックアップが必要となり、それは非常に高コストである」という形でよく言われます。変動性再エネ電源は天候によって変動するのは確かですが、そのことは1MWの再エネに対して1MWの従来型発電所が必要になるということを意味するわけではありません。

例えば、1MWの太陽光発電は年間平均で10〜30%で運転しており、これは設備利用率として知られています。実際の値は風力・太陽光の「質」に依存し、これは地理的要因によって異なります(例えば風力発電の設備利用率は20〜50%とさまざまです)。長期的計画のタイムスケールで考えると、これは夜間太陽が照らなかったり風が吹かなかったりといった時にこれをカバーするために必要な量となります。

数秒から数日といった短期的なタイムスケールで考えると、変動性再エネの出力は天候により変動します。太陽光の出力は一日の時間帯によって変わりますが、定格に対しておよそ20〜30%となる可能性があります(太陽光発電は必ずしも太陽の直射光を必要とするものではないので、ゼロになることはありません)。しかし、変動性再エネが広域に設置されていれば、この変動は減少します。隣接する国や電力系統への連系線により、このエリアは非常に広がります。このことは、設置された変動性再エネの「容量価値」を向上させる効果があります(訳注:原文では図10が参照されているがここでは省略)。

「容量価値」もしくは「容量クレジット」は、変動電源がどの程度まで従来型電源と同様に信頼できるかを示す指標です(訳注:日本には独自の「kW価値」という指標がありますが、これとは少し定義が異なります)。変動電源の容量価値は、場所ごとによって異なり、電力系統のサイズによっても異なります。このことは非常に重要であり、「バックアップ」神話に対する解答は唯一つではありません。風力・太陽光発電の出力は相補的なため、それらを組み合わせることによって容量価値はさらに向上します。

変動性再エネと電力需要のピークのタイミングはもう一つの大きな問題です。例えば、太陽光発電は一日のうち最も暑い時間帯にピークを迎えるので、エアコンによる大きな需要はこのパターンによくマッチし、太陽光発電の容量価値はより大きくなります。風力発電の出力はより規則的ではないため、この需要との相補性という点では便益は小さくなります。

結局、電力系統では、ある特定の発電所群をバックアップすることを想定しているわけではない、ということ知っておくことが基本です。従来は冗長な設備によって行われてきましたが、最近では連系線でつながれた設備をより柔軟で動的な運用することも増えており、電力系統「全体」で需要に追従する能力こそが重要なのです。

そしてこの問題を考える場合、考慮するのは発電所だけではありません。変動性再エネの容量価値は比較的低いですが、それを管理するための低コストな戦略はほかにも存在します。需要側応答(DSR)は変動性再エネが利用可能な時に需要をシフトさせるために使うことができます。蓄電池は既存の貯水池式水力発電や揚水発電とともに注目されつつあります。これらのエネルギー貯蔵は、変動性再エネが余ってしまった時に蓄電し、変動性再エネの出力が低い時に放電することができます。DSRや蓄電池はまだ萌芽的段階ですが、将来大きなポテンシャルが期待されています。

神話4:変動性再エネに必要な系統コストは非常に高い。

以上の3つの主張は変動性再エネの時間軸に対する出力の特性に関係するものでした。それ以外の主張として、「風力・太陽光発電は需要地から非常に遠く、電力系統に接続するには非常に高コストである」など、変動性再エネの空間的配置に関する主張もあります。風力・太陽光発電に最も適した場所は人が住むにはあまり適さない遠隔地である場合が多い、ということは事実です。砂漠は地球上で最も太陽が照る場所ですし、開けた風の強い平地に大規模人口密集地が建設されることはほとんどありません。一方、風況の良い洋上風力発電への近接は重要になってくるでしょう。

このような資源にアクセスするためには、既存の電力系統の拡張や増強のためのコストがかかります。このコストは、地理的要因や土地の価格などによって大きく変わります。米国の系統連系研究を網羅的に調査した解説論文によると、風力発電のコストのおよそ15%(中央値)が送電線の拡張のためのコストに相当することが明らかになっています。ただし、そのコストは0〜1,500ドル/kWと大きな幅を持つことも明らかになっています。経験則によると、系統インフラのコストは発電設備の10分の1に過ぎず、送電線を増やすことにより送電混雑を減らし信頼性を向上するという他の多くの便益を生み出す可能性があります。

さらに、技術の進歩に伴いコストが低減することにより、必ずしも最良の風況や日射量ではない場所にもコスト効率のよい変動性再エネが建設されることになります。このことにより柔軟性がさらに増し、系統コストをさらに低減することが可能となります。

神話5:電力貯蔵は必ずなくてはならない。

「電力貯蔵を新規に追加しなければ、風力や太陽光の変動を平滑化することはできない」という主張もよく聞かれます。変動性再エネからの変動成分に注目すると、それを平滑化するためにはこの出力に対するバッファが明らかに必要だ、というのは非常に感覚論的に見えます。

しかしながら、他の神話と同じく、これには重要な要因が欠落しています。この神話の背後に隠された主な点は、ある段階に達すると変動性再エネを系統連系するためには電力系統の柔軟性が必要となる、ということですが、実はこれは変動性再エネの「第3段階」の特徴です(訳者中:「第3段階」は導入率が約15〜25%の国や地域に相当)。さらに、電力貯蔵だけが柔軟性を供給するわけではありません。需要側の変動は、火力発電や貯水池式水力発電などの制御可能な電源によって日常的に管理されています。DSRや他の電力系統からの融通など、柔軟性供給源は他にもたくさんあり、電力貯蔵はそれらの選択肢の中のひとつでしかありません。そして現在のところ、変動性再エネの導入率が20%に達したほとんどの国でも、電力貯蔵はそれほど重要視されていません(これらの国のほとんどは風力の方が支配的であり、一般に電力貯蔵は風力よりも太陽光に対しての方がコスト効率が高いとされています)。

神話6:変動性再エネによって電力系統が不安定になる。

電力系統は、これまで人類が作り上げた装置の中で最も複雑なもののうちのひとつに挙げられます。電力系統を安定に運用するための運用者の仕事は、常に監視・制御を行うことです。これは、常にバランスを保つために微調整を繰り返さなければならないという点で、自転車を乗るのと似ています。
自転車に乗る人ならば誰でもわかるとおり、非常にゆっくりとした速度でバランスを取るのは難しいですが、車輪が速く回ると、物理法則に則り慣性力のため自転車は安定します。これと似たような状況が電力系統でも起こっており、従来型電源の非常に大きな発電機やタービンが回転することにより、バランスを保つことができます。一方、風力・太陽光発電は従来型電源とは同じように接続されておらず(訳者中:風力・太陽光はインバータを介して電力系統に接続されているため)、慣性力を生み出すことができません。

「風力・太陽光発電は電力系統の慣性に貢献しておらず、電力系統を不安定にさせる」という最後の神話は、上記のようなことが元になっています。この慣性が問題になる状況は、2つの要因によって決まります。すなわち、ある瞬間にどれだけ変動性再エネ電源が発電しているかと、電力系統のサイズがどれだけか、ということです。電力系統の平均需要や最小需要に比べ変動性再エネの導入率が低い段階では、非常に小さな電力系統(例えばピーク電力が100〜数千MW)を除いては、この慣性問題はほとんど問題になりません。いかなる場合でも、変動性再エネが導入される初期段階では慣性は重要な要因になることはほとんどありません。さらに、フライホールや既存の風車の合成慣性(訳者中:近年のほとんどの商用風車は慣性を供給する機能を持っています)を利用するなど、電力系統に慣性を供給するための技術的選択肢は存在します。

さらに一般的に言うと、変動性再エネの最新技術は技術的にも成熟しており、電力系統の安定のために有用なさまざまな系統サービス(訳者中:周波数制御や無効電力供給などのアンシラリーサービス)を供給する能力を持っています。しかしながら、これらのサービスの提供やそのための補償を変動性再エネに義務づける法令はほとんどありません。このような義務やインセンティブがない限り、変動性再エネから系統サービスが供給されることはほとんどないでしょう。

IEA報告書がもたらす意義

以上、IEAの報告書からの一部引用を筆者の仮訳により紹介致しました。このような議論は10年以上に亘り専門研究者や実務者の間で議論されてきたことですが、ここで重要なことはこのような議論がIEAから公表されたという事実です。IEAは再エネだけでなく全てのエネルギーについて議論する場であり、高度な国際合意を必要とする組織です。そのような組織から再エネに関してこのような報告書が出ること自体、「世界は変わりつつある」ということを示すマイルストーンであるとも言えるでしょう。今回、この仮訳でいち早く日本に紹介することにより、この議論が日本にも浸透することを期待します。

全4ページ

[1] [2] [3] [4]

[ 次のページ ]

happuu_kaidoo
happuu_kaidoo
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る
本文はここまでですこのページの先頭へ

[PR]お得情報

いまならもらえる!ウィスパーうすさら
薄いしモレを防ぐ尿ケアパッド
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
いまならもらえる!ウィスパーWガード
薄いしモレを防ぐパンティライナー
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!
お肉、魚介、お米、おせちまで
おすすめ特産品がランキングで選べる
ふるさと納税サイト『さとふる』

その他のキャンペーン

みんなの更新記事