|
俺達はお前がいてくれて感謝してる。
お前が、生まれてきてくれて感謝してる。
そして、俺達は、お前の笑顔に救われていたんだ。
ねぇ、光。
お前は、それに気づいていたかい?
俺は病院にって、精密検査を受けてきた。
特に異常はなかった。
そんな中、異常が出たのは、病状の変化だ。
腫瘍が前よりか大きくなっていた。
それに、すぐ体が疲れてしまって歩くのもままならなくなっていた。
だけど、そんな事もお構いなしに文化祭の準備は着々と進められていく。
俺は、皆には言わなかった。
また、心配をかけてしますから。
頼りたくない訳ではない。
ただ、皆には気にしてほしくなかった。
そう、もうひとつ言われたこと。
文化祭が終わったら、学校に行けなくなるということだった。
もう、限界らしい。
ギリギリまで待ってくれた先生に感謝したい。
だから、この文化祭の準備も、文化祭も最後。
きっと、もうないから。
「兄さん?」
俺のボーッした顔に皆が心配していた。
「ん?」
「大丈夫?」
俺は平気だと言って教室を出た。
騒がしい。
でも、聞けなくなるんだ。
この騒がしさも……
そう考えると、涙があふれてくる。
「クソッ」
どうして、俺なんだ。
どうしてこんなにも、悲しい。
前だったら、こんなこと思わなかったのに。
むしろ、俺はこの感情に気づかに方がよかったのかもしれない。
「会長」
「……梓」
屋上に俺はいた。
梓は俺の居場所をいつだって見つけてくれた。
「どうしたんですか?そろそろ会議始りますよ」
「うん。行くよ」
「何かありましたか」
沈黙。
言いたいけど、それは言ってはいけない気がした。
「なんでもない」
「そうですか」
「ねぇ、梓。この文化祭、成功させような」
「……はい」
小さく頷いて微笑んだ。
楽しまなくてはいけない。
「楽しもう」
そう、楽しもう。
最高の文化祭。
最後の学校生活。
文化祭の準備も無事終わり。
皆、やり遂げた感でいっぱいだった。
俺も、忙しい毎日が終わって、少し肩の荷が下りた。
あとは、文化祭を待つだけだった。
そう、楽しい文化祭。
だけど、文化祭を目前としたある日。
胸の痛みが俺を襲った。
部屋で最後の確認を取っていた時だった。
誰も家にはいなかったんだ。
宮は津森の家で、何らかの作業があるからと言って。
そう、1人だった。
「っ……う」
携帯に手を伸ばし、必死にアドレス帳から宮を探す。
「うっ……っ」
コールがかかり、宮が出るのを待つ。
その間も、意識が遠のいていく感覚が抜けなかった。
目の前の景色が、消えていく。
「もしもし?」
宮の声。
「み……っ…はっ…」
「兄さん?」
早く、助けて。
「た…けて」
「兄さん!?」
もう、駄目だった。
目の前が見えなくなった。
携帯から聞こえる宮の声が、聞こえなくなっていく。
どうして、こんな時に。
神様は意地悪だ。
どうして、最後の楽しみを取ってしまうんだろう。
俺はもう、学校に行けないのかな。
携帯にかかってきた兄さんの声。
掠れていて、俺に言った言葉。
『助けて』
急いで津森と家に帰ると、兄さんは部屋で冷たくなって倒れていた。
息は微かにある。
すぐに救急車を呼び病院に運ばれた。
兄さんの青い唇。
血色が無くなった肌。
まるで死人。
怖かった。
このまま死んでしまうんじゃないかって。
津森も、この時はさすがにショックだったようだ。
震えている手を無理に抑えようとしていた。
病院について、俺は廊下の椅子に座ってジッと病室をみる。
呼吸器や点滴やらのチューブが兄さんにつけられていく。
少しすると、津森が温かなコーヒーを買ってきて俺の前に差し出してきた。
「大丈夫か?」
「うん」
沈黙。
「文化祭、来れないのかな」
「あぁ」
その日は、それ以上言葉がなかった。
兄さん、死なないで。
ずっと、それしか頭になかった。
忙しく出入りする看護婦や医者。
暗い病院。
俺は、怖かった。
何もかも。
|