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どうして神様は、死人を出すのだろう。
必要な人ほど死んでしまう。
でも、どうしてよりにも寄って兄さんなんだよ。


その日は、病院で過ごした。
病院内にある椅子に横たわり朝を迎えた。
早朝五時。
日の出が上がるより早く起きてしまった。
トイレに入って、自分の顔を見ると、ひどい顔だった。
そのあと続いて津森も起きて、隣で顔をジャブジャブ洗う。

「おはよう」
「うん」

いつもならふざけ半分で挨拶をかわすのに、今日は静かだった。
だって、兄さんは眼を覚まさない。
安定はしたが、油断できないらしい。

「そろそろ、渚が来るって」
「わかった。」

トイレを出て、病室前の窓ガラスから覗く。
まだ、肌の色が真っ白で、目を覚ます気配がまったくなかった。
折れそうな心に鞭打って。
兄さんの事を見守った。

「宮君」
「渚」

渚を見た瞬間、俺は泣きそうになった。
どうしてか。
会いたくて、ずっと待っていたように……

「宮君」

思わず抱きしめる。

「ごめん、少しだけ」

すると、震えてるのがわかったのか渚は俺を強く抱きしめた。
それだけで、心の糧になる。
なんて心強いんだろう。

「宮」

津森も俺を抱きしめた。
俺は嬉しくて。
涙が零れた。
ありがとう。
二人とも、ありがとう一緒にいてくれて。
涙が止まらなかった。

「早瀬君」

大人の声。

「幸田先生」

二人から離れて、先生を見た。

「兄さん、助かりますか」
「まぁ、今はね……」

濁らした答え。

「先生。今週の日曜日に、文化祭があるんです。兄さんいけませんか」

先生は、外を見た。
考えた顔ではなかった。
なんとなく、その思考がわかったんだ。
きっと、こう思った。
最後の文化祭ぐらい出させてやりたい。

「いいよ」
「先生」
「ただし、移動は車椅子ね」

微笑みながら、言っていた。
でも、その微笑みが悲しそうに見えたのは俺だけじゃなかったと思う。

「ありがとう、ございます」
「いいんだよ。しっかりね宮君、それに君たち、宮君を支えてやってくれ」
「はい」
「もちろんです」

津森は頷き、渚も小さくうなずいた。



今日はずいぶんと静かだと思った。
さっきまで騒がしく金属音がしていたのに。

「あ……れ」

眼を覚ますと、横には宮、津森、渚がいた。
宮と津森は疲れたように眠っていた。


「光君」

渚が読書から目を離し、俺のベットの横に座った。

「な…ぎさ」

微笑みながら、俺の髪の毛を触る。

「驚いたよ。倒れて、しかも生死さまよってるなんて」

目には涙が溜まっていた。
重い手をそっと渚の頬に触れた。

「冷たい」

手を重ねる。
そして、温かな涙。

「ごめん」

小さく微笑んでみる。
すると、逆に泣かれてしまった。
渚の頬から流れる涙が、冷たい手にはとても暖かくて。
優しくて、そして……愛おしかった。

「渚……ありがとう」

頬を撫でる。
涙をぬぐってやる。
そして、俺は呼吸器を外した。
心臓が痛いほど動いていた。
耳に聞こえてくるぐらい。
宮も津森も寝ている。
だからじゃない。
だけど……

「好きだったんだ」

渚の頭を優しく押して、自分の顔に引き寄せる。
そして、優しく額にキスをする。
俺は、渚が好きだから一緒にいたんだ。
ただ、一緒にいるだけなのに。
何の感情もないと思っていた。
だけど、だけど好きだったんだ。

「兄さん……」

目を丸くして、俺と渚を見た。

「兄さんは渚が好きなの」
「そうだ」

きっと、宮も好きなんだろう。
だから。

「でも、俺は渚を友達として好きなんだ」
「えっ」

俺が好きというより、宮が渚に好きといった方が未来があるから。

「そうなの」
「うん、今のは……ありがとうの印」

微笑んだ。
宮は不思議そうに、そこにいた。
渚は悲しそうに微笑んだ。

「そっか、そうなんだ。じゃぁ、言うけど俺……渚のこと好きなんだ」
「えっ」

そうだ、俺よりお前のが渚と付き合った方がいい。

「だから、付き合ってくれ」
「渚、モテモテだな」

津森はいつの間にか起きていて、二や付いていた。

「あっ、えっと」

真っ赤にして、俺の方を見た。
俺は優しい笑みを見せて、うなずいた。

「はい」
「嘘、マジっ!?」

頷く渚。
喜ぶ宮。
嬉しい……嬉しいけど、悲しくもあった。

「やったぁ!!」
「よかった……な」

あっ、いけない。
少し、少しだけど……憎いと思ってしまった。

「それより!!」
「ん?」
「心配したんだから!!」

宮が俺の目の前に立った。
津森もうなずいた。

「ごめんな」
「死んじゃうのかと思ったよ」

また涙。
まったく、よく泣く。

「ごめんな。もう、もう、大丈夫だから」

嬉しそうに泣く。
安心したように溜息をつく津森。
微笑ましく見守る渚。
だけど、ただ俺だけは皆とは違うところに心があったと思う。

「宮、渚。水買ってきて」

津森はいきなり言った。
宮たちは頷いて病室を出た。

「お前、いいのかよ」
「何が」
「時間ないのに、また人のために自分を捨てただろ」
「だから?」
「お前、いいのかよそれで」
「いいんだ。死んでしまう人間より、生きていられる人間のが未来があるから。それに、俺はこの方がいいんだ。その方が嬉しいから」

空を見上げる。
雲が動く。
津森は、俺を抱きしめた。
そして、泣いていた。
俺も泣いていた。
悲しかった。
自分の未来がないことに。
もう少しで無くなってしまう自分に。
そして、この人たちを残していくのに。
涙がとまらなかった。

「なんで、犠牲にする。自分の意思を」
「俺、人のために生きたいんだ。少しでも、時間があるなら」
「馬鹿」
「いいんだ、これが俺の生き方。馬鹿な生き方。」

津森は頭をギュッと抱きしめた。
俺は苦しいと思うより、胸が苦しかった。
止まらない涙を止めて欲しかった。
いつ、いつ死ぬのかな。
怖いよ。
だけどさ、神様。
俺は今生きてます。
そして、俺はここにいます。
俺は存在してます。
それだけは確かです。


あとがき

のわぁ!!
あっけない!!
あんなに心配していたのに、まったく反応薄い!!
笑える。
まぁ、そろそろ最終回に入りたい。
大丈夫かな。


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