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自分には大切な人がいる。
それが、何かの希望になるから。
誰かのために生きることが幸せなら。
俺はその人たちのために生きたい。


文化祭のダンスパーティ。
そこのステージには津森達が立っていた。
その横には、副会長の梓。
そして、皆の視線が俺に集まる。

「光。今日は楽しかったか?」

俺は、静かに頷く。

「兄さん、この文化祭はね。兄さんのための文化祭だったんだよ」
「俺のため?」

何の事言ってるんだ。

「兄さんが入院して、皆に話したんだ。そしたらさ」
「梓副会長がね、光君のためだけの文化祭を開こうと言ってね」

俺だけの文化祭。
じゃぁ、俺に妙に絡んできたのは、そのせいだったんだ。

「じゃぁ、皆俺のこと知っているのか」
「もちろん」

笑顔で頷いた。
そして、皆の顔も笑顔。
俺のために……

「俺達さ、お前に助けられてきたから」
「えっ」

津森が天井を見上げた。

「俺に?何を言っているんだ」

車椅子から立ち上がり、ステージ前に立ち津森を見上げた。
何を助けた。
俺はただただ、仕事をこなしていただけ。
なのに?

「俺達は、お前に笑顔を貰ったから」
「えっ」

俺がお前たちに笑顔を与えただと?

「お前がいてくれただけで、いつも笑顔が周りに笑顔があったのわからなかったろ?」

知らないよ、そんなの。

「それに、兄さんはいつも生徒に優しくしていた」

優しくしたなんて知らないよ。

「俺達はさ、お前が生徒会長で、そして、ここに存在していてくれて、そして」
「私たちの傍にいてくれて」
「嬉しく思うんだ」

俺がいて?
皆、俺のこと嫌いだって言っていた。
なのに、今何て言ったんだ。

「お前、自分が嫌われていると思っていただろ」
「そりゃそうだろ!!」

だって、皆陰口言って。
俺のこと嫌って。
存在してほしくないって思ってたんじゃないのか。

「兄さんは、皆が本気に嫌っていると思ってるの?」

本気じゃない?

「会長は!!俺達のタバコを見逃してくれた」
「俺は、励まされて」

は?
いや、それは会長として……

「会長として、してはならないことをサラリと自然にできるのが貴方の強みです」

俺の強み。
俺はただ、この学園のためにしていただけ。
それだけ、でも……
俺は、たぶん少しでも思ったんだ。
この学園の生徒が楽しく過ごせるなら、俺はどうなってもいい。

「それに、光」

梓は俺に手を伸ばし

「いつも、いつも頑張っていてくれた」

俺はその手を受け取り、ステージに上がった。
明るいステージの上から、俺は生徒たちの顔を見渡した。
皆、楽しそうに笑っている。

「いろいろ、ありがとう」
「梓……」
「俺からも。ありがとう」

津森も微笑んでいた。

「兄さん、ありがとう」

ありがとう。
その言葉は、感情がこもっている。
初めて、俺はこれだけの人に感謝された。
俺は、これだけの人に笑顔を与えることができたんだ。
そして、もう一つ驚いたのは……

「これ、皆の写真が載っているアルバムだ」
「えっ」

アルバムを貰うと、俺は開いた。
沢山の写真。
沢山の思い出。
皆の笑顔。
そして、俺の笑顔。
沢山の笑顔がそこにはあった。
楽しそうにしている。
こんな顔しているんだ。
俺もこの1人になりたかった。

「これ……いつ」
「皆がお前のために作ったんだよ」
「俺のために?」

俺のためって。
俺のためって。
だって、誰も俺のために何もしてくれなかった。
こんな、プレゼント。
貰ったことも、なかった。
だから、嬉しい。
嬉しくて、目じりが熱くなった。

「俺の……」
「会長!!」
「光君!!」

えっ。

「ありがとう!!」
「光、これからもよろしく」

あっ。
そうだ、俺は皆にずっと隠し事してたんだ。
俺にはこれからもなんてないんだ。
俺にはこれからなんて、この場所にはない。

「ごめん。俺、ここにはいられない」
「えっ」

マイクを津森の手から奪い、そして皆の顔を一つ一つ見た。

「俺は、この学校には…もう来れなくなる。医者から言われたんだ。」

静まり返る。
そして、宮が最初に口を開く。

「なんだよそれ……なんだよそれっ!!」

初めて、宮に胸倉を掴まれる。

「俺は、明日から入院になる。治療のために」
「そんなの聞いてない!!だって、このイベントは兄さんを励ます―」
「それは、嬉しかった。だけど、皆ごめん」

沈黙。
ショックだったんだろう。
ごめん。
だけど、聞いてほしいんだ。

「俺、ここに居れてよかったですよ。馬鹿な生徒ばかりでした」
「だれが馬鹿だよ」

津森に睨まれる。
梓も、皆も。

「そうだな、俺が一番馬鹿な奴だ」

涙が零れそうだから、天井を見上げた。
俺がこの学校で最高の馬鹿。
だって、気付かなかったんだから。
皆の優しさに。

「学校なんて嫌いだった。だけど、病気だってわかって。そして、時間がないとわかってから気づいた。学校がこんなにも楽しいことに」

もっといたい。
この場所に、だけど今日で終わり。
俺は、もうここには居場所がないよ。

「もっと、楽しめばよかったな。ごめんな。俺、馬鹿な奴だから」

涙を堪えて皆の顔を見る。
本当は、もっといたいよ。
だって、こんなにも優しい人の中にいたんだから。
俺はもっと皆と思い出を作っていきたい。

「俺の方こそありがとう」

違う。
俺が言いたいのは、俺の証を……

「お願いがあるんだ」

一拍置く。

「俺がここにいた事、存在していたこと。俺のこと、忘れないでいて欲しいんだ。」

微笑んで言う。
なるべく、皆には泣き顔は見られたくなかった。

「何、言ってんだよ!それじゃまるで!!」
「これは俺なりの願いだよ」

微笑む。
微笑む。
だけど、耐えられなかった。
涙が頬をつたる。
なんで、俺はここにいられないのだろう。
もっと、もっと一緒にいたいよ。

「俺……ここにいたいよ」

涙があふれてくる。
しゃがみ込む。
床に零れ落ちる、涙。
こんなに泣いた事があっただろうか。
でも、涙は流れ続ける。
生徒も泣いていた。
先生も、津森たちも。

「ごめん、兄さん」

宮は、俺を抱きしめた。
俺はここにいたかった。
そして、俺はここから離れることになる。
楽しい日は、過ぎていく。
時は、流れていく。
そして、俺は長い時間を過ごしていく。
長く。
辛い。
日々が待っている。
いつものような、騒がしさも。
生徒会長としての仕事も。
勉強も、テストも。
何かかも失うんだ。



あとがき

すみません。
長くて、次は番外編として書きます。
光君、宮君の両親が亡くなったあとの話をします。
戸川先生やっとだせるぅ。


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