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自分がどれだけ愚か者なのかと思い知った。
いつも近くにいたのに、どうして兄さんの気持に気づかなかったんだろう。

『光も強くねぇよ!』
『いつも折れそうな自分を自分で支えてたんだ』

津森に言われてやっと気づいたこと。
それは、兄さんがたまに引っかかる顔をする意味。
泣きそうになっていたんだ。
そうだ、両親が死んだ時も、泣きそうなのを我慢していた。
入院した時も、そうだ……眉間にシワを寄せて泣きそうなのを我慢していたんだ。
どうして、気付かなかったんだろう。
いつも微笑んでいるからだろうか。
兄さんは、強くなんかなかった。
俺より弱くて、俺より脆くて、すぐに壊れてしまう人間。
なんで、気付かなかったんだろう。
同じ顔で、同じ声で、同じ身なりで……なのに心は、まったく違っていた。
双子だから、大丈夫。
なんで、そんな考え方してたんだろう。

「行かなきゃ」

ある程度の着替えと保険証の入った鞄を取って、外に出る。
雨も止んで、空は朝を迎えようとしていた。



病院について、入院手続きを済ませて病室に向かう。
白い廊下。
あまり見慣れていないせいか、眼がチカチカした。
兄さんなら、こんなの慣れてしまっているだろう。
病室前に立って、息を呑む。
だけど、そこから津森と大人の声が聞こえてきた。

「じゃぁ……光は……」
「一か月弱が限界じゃないかな」

なんの話だろうと耳を傾ける。

「そんな……どうにかならないんッスか」
「体がだいぶ弱ってきているし、どうにもならない」

嫌な話。
悪い予感。
兄さんが……

「光が、死ぬなんて」

ハンマーで殴られた衝撃が俺を襲った。
体からすべての力が抜ける脱力感。
今のは空耳だろうか。
まさか、兄さんが……
鞄を掴んでいた手が緩み、床に鞄を落とす。

「ん?誰か居るのか」

津森が近づいてくる。
動かない、足も口も手も体がすべて……
まるで金縛りがあったように重い。
ドアが開く。

「み…や」

津森も驚いて目を見開く。

「嘘だよね」

目を逸らす津森を見て、確信に繋がっていく。

「……本当だ」

確信。
繋がってしまった。
兄さんが、死ぬ。
いつもいた、隣にいた兄さんが?
馬鹿にもほどがある、冗談じゃないのか?
誰か嘘だって言ってくれ。
これを確信に繋げないでくれ。

「兄さんが?あはは……冗談だろ」

鞄を取って、病室に入る。
震えている手を必死に抑えながら、兄さんの隣に立つ。

「兄さんが死ぬわけないじゃん。だって……だって、約束した」

そう、約束した。
小さな俺たちは、小さな約束をした。

「ずっと一緒にいようって……だから……」

なんで兄さんなんだ、なんで俺じゃないんだよ。

「だから、死ぬはずないじゃんか!!」

どうして。
いつも優しくて、弱くて脆い人間を消そうとするんだ。
俺にとって必要な存在。
兄さんは俺を必要じゃなくてもいい、これから自分のために生きてほしいと思っていたのに。
どうして……どうして兄さんなんだぁ……―

「宮」
「嘘だ。全部……嘘だろ。お願いだ、もうこれ以上兄さんを傷つけないでくれよ」

涙が溢れ出る。
なんでもっと早く気付かなかったんだろう。
どうしてもっと優しくできなかったんだろう。

「いやだ……いやだ……いやだぁ」
「宮」

津森は俺の首を自分の胸元に引き寄せた。
涙が止まらなかった。
後悔ばかりの言葉が頭に繰り返しリピートされる。

「どうして、兄さんなんだよ」

子供のころのように津森は俺をあやしていた。

「俺達が、光のために出来ることをしてやろう」
「兄さんは死なない。死なないよ!!!」
「宮!」

こんなのは信じない。
俺は病室を飛び出した。
ここから、離れたかった。
どうしても、現実じゃない。
きっと、これは・・・・・・・夢。

「宮……」
「光起きたのか」
「あいつを探しやってくれ」
「光」
「あいつは、現実だと教えてやりたい」

なぁ、神様がいるなら教えてくれ。
俺たちは、どうして双子として生まれてきたんだよ。
どうして二つで一つなんだよ。
神様答えてくれ。

「うわぁあぁ!!!!!」

どうして、俺達を切り裂こうとするんだよ。
まるで、間違えたから二つのものを一つにしようとしているように。


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