|
あれから二週間が過ぎた。
兄さんは夏休みの間は入院すると言っていたが、気が変わったらしく夏休みの間は四人で遊んだ。
海に行ったり、遊園地に出かけたりして。
もちろん、体調の悪い日だってあった。
呼吸が続かなくて、病院に行って一日入院したりして。
でも、それでも兄さんは前よりか笑うようになっていた。
そして、新学期。
一か月が過ぎて夏休みも終わり。
兄さんは相変わらずだが、まだまだ元気そうだった。
医者が言うには、今は進行が遅いから、これならもう少し時間がある。
そう、兄さんは予定より長く生きているんだ。
「おはよう」
「おっそっくり兄弟。久し振り」
クラスの奴らも変わりなく元気だった。
まぁ、随分身なりが変わっている奴もいるけど。
「会長」
クラスのドアに立っていたのは、生徒会副会長、鈴谷梓。
「文化祭についての説明会が始まります。」
「わかっています。それじゃ行ってきます。」
柔らかな微笑みを見せて、俺の言った。
俺もつられて微笑んで
「いってらっしゃい」
手を軽く振って、見送る。
すると、クラスメイトの口から意外な言葉が出てきた。
「なぁ宮」
「ん?」
「光のやつ柔らかくなったよな」
「えっそう?」
「うん、だってすごく雰囲気イイし、それになんていうか……荷が下りた感じ?」
そうだよな。
ずっと、気にしてたんだから。
それが無くなって、少しは笑えるようになったんだから。
俺もよかったと思う。
「うぃー」
「津森」
「おはぁ」
欠伸をしながら、教室に入ってきた。
「あれ?渚は?」
「あぁ、あいつ今日は休み。家の用事でさ」
そうか、休みなのか。
渚に見てもらいたかった、兄さんの笑顔。
それに、ちょっと会いたかったんだけどなぁ
「あれぇ、宮ぁ落ち込んでるぅ」
「なっ!落ち込んでないやい!!」
ドッと笑いが広がった。
俺は顔が熱くて、そしてまだこの気持には気づいていなかった。
「楽しそうですね。」
「あっ、兄さん」
「文化祭の準備、明日から始まりますよ」
やっぱりいいな、兄さんの笑顔。
それに……なんか妙な雰囲気に……
「なぁ、光」
「はい?」
「お前、本当は女なんじゃないか?」
「は?」
そう、見た目本当に女の子なんだ。
なんていうか、随分髪の毛切ってなかったから伸びてるし、ピンで前髪上に止めてるから、そりゃカワイイたらない。
「何言ってるんだ。ふふ……」
楽しそうにクスクス笑いながら、席に着くと手帳を取り出した。
「なぁ、皆。いいこと考えたぜ」
津森が兄さんの肩に腕をまわし。
「こいつに女装させようぜ。文化祭の時」
「はぁあ!?」
ガタっと立ち上がり、兄さんは津森を睨んだ。
津森は動じずにニヤリと楽しそうに笑い
「いいね」
「光なら絶対に合うし」
「宮もやってください」
「えっ」
ニヤリとクラス中の生徒が俺を見る。
やるしかないようだ。
「わかったよ」
「よしっ!!決まりだ!!」
一斉にオーッという掛声がかかった。
楽しい。
うれしい。
兄さんも楽しそうに笑ってくれてる。
こんな兄さんは見た事がなかった。
このあと津森は皆を集めた。
そう、兄さんの事を言うらしい。
放課後、夕日が来ると知らせるように空が赤く染まっていく。
「集まったな。」
「なんだよ、話ってさぁ。文化祭なら決まってるし」
「違うよ」
「兄さんの話」
一斉に静まり返った。
なんとなく気付き始めているんだろうな。
「あいつの事気づいてるやつもいるかもしれない」
沈黙。
言い出しずらい。
だけど、津森小さな咳払いをして、ゆっくりとした口調で話し始めた。
「病気だ。それと、もう一つ……あいつは……」
俺はその言葉が聞こえなかった。
だけど、皆の反応は驚きを隠せないようだった。
「そんな、光が……」
「まさか」
「だから、皆にお願いがあるんだよ。光に何かしてやりたいんだ」
「でも、何を」
「思い出を残してやりたい、俺達はあいつに助けられてきたから」
津森が震えてる。
あの津森が、きっと感情押し殺していっているんだろうな。
「ねぇ、だったらさ。写真。アルバムつくろうよ!」
「アルバム」
「光君だけのアルバム!」
女子がそう言ってはしゃいでいた。
そうか、アルバムなら、すぐに作れるし。
「いいじゃん!!」
「じゃぁ、俺写真入れ買ってくる」
皆乗り気だ。
ありがとう、みんな
「みんな」
一斉に静まり返る。
「ありがとう」
目じりが熱い、涙がこぼれそうになる。
だけど、すごく嬉しくて、嬉しくて。
「なっ何言ってんだよ。ほら、泣くなよ」
「俺達だって、泣きそうなんだからさ」
「うん」
皆が俺の頭や肩を叩いてくる。
それさえ、なんだか涙が止まらない。
ありがとう、みんな。
|