正林堂 本の気休め

群馬県渋川市の小さな本屋が、本に関する話やお客さんとの会話、地域での出来事、ホームページの更新情報などを気ままに綴ります。

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菊池 実 著 『戦争遺跡の発掘 陸軍前橋飛行場』
  新泉社 定価 本体1,500円+税

アジア太平洋戦争の末期、群馬県高崎市の郊外に陸軍の飛行場が急造された。
農地をつぶしての造成と住民・児童の勤労奉仕、
特攻隊の突撃訓練、米軍の空襲など、戦争の実相を考古学的発掘調査と地元資料、
米軍資料などから明らかにし、戦争遺跡発掘の意義を訴える。
                  (以上、表紙の解説文より)

 著者である菊池実氏は、(財)群馬県埋蔵文化財調査事業団主席専門員をされており、『しらべる戦争遺跡の事典(正・続)』柏書房などで中心となって活躍されてる方です。

 最近、これまでの古代の遺跡調査や地理学的研究を中心とした考古学から、歴史考古学ともいわれる、中世、近世、近代、さらに現代まで含めた考古学調査と歴史学との融合が盛んになってきています。
 これまでの文献中心の歴史研究に、こうした考古学的調査が加わると、その実証性が格段に進歩します。
史実のなかには、こうした調査が遅れているばかりに誤った歴史理解に陥ってしまっている例も少なくありません。

 安土城や大阪城の発掘調査をはじめとする城郭、寺院の研究に、こうした戦争遺跡の調査が最近では加わってきました。
「かみつけの国 本のテーマ館」のなかにも
「戦争遺跡と廃墟の美学」というページがあります。
私の場合は、足尾銅山跡をきっかけにのめりこんだのですが、遠い過去の遺物やカケラなどの断片を見てその時代を想像してみることは、とても面白いものです。

ましてやこうした身近な戦争の遺跡ともなると、その姿を通して様々な物語も目に浮かんできます。

群馬県は、遺跡の多さでは全国屈指のものがありますが、そうしたものの多くは、大規模な道路の拡幅工事や巨大ショッピングセンターの造成などによって発見されたものです。
この陸軍前橋飛行場も、こうした大規模な道路工事が計画されてはじめて発見され注目たものです。

このような現場から、当時の新聞や地元の人の聞き取り調査などを経て、広大な土地が接収されていく過程や、その工事に徴用された青年団や児童の勤労奉仕、あるいは朝鮮人労働者などの雇用の実態にまで調査が及んでいく。
残念ながら、朝鮮人労働者の雇用実体の解明までは本書ではできませんでした。

ちょうど今、私は月夜野町から少年飛行兵として戦争に関わった方の体験を冊子にまとめるお手伝いをしているところなので、前橋飛行場から浜松、加古川を経て、九州の特攻前線基地大刀洗などへ向かうルートの図など、とても興味深く見ました。

県内を普段、車で何気なく運転しているその場所が、こうした戦争の歴史の現場であったことを生々しく伝えてくれる本です。


この新泉社の「遺跡を学ぶ」というシリーズは、他にも三ツ寺遺跡や赤城山麓の3万年前のムラ・下触牛伏遺跡などの群馬にかかわる本があります。
是非、店頭で手に取ってみてください。

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