|
『天城越え』;石川さゆり
作詞;吉岡治
作曲;弦哲也
編曲;桜庭伸幸
『天城越え』についてであるが、この歌なくして石川さゆりさんの文学作品の世界は語れない!と言っても過言ではない歌である。念のため書いておくと、松本清張の『黒い画集』の中に書かれている「天城越え」とは無関係とのことである。女性の情念をみごとに演じ切ったさゆりさん独自の世界だと、私は思っている。
「隠しきれない 移り香が いつしかあなたに しみついた」という歌詞で始まるこの歌は、どことなく視聴者を引きつけるパワーがある。それに、私はこの歌を唄われるさゆりさんがやはり凄い!と思う。というのも、「隠しきれない 移り香が」という低音から始まり、だんだんだんだん音階が上がっていき、「何があっても もういいの」というところで最も高音になる。そして、又低めになり、「天城越え」と高くなる。音の高さが激しいーつまり音域が広いのだ。だから、作曲者はさゆりさんにしか唄えない歌をと思い、さゆりさんにこの歌を書かれたようだ。けれども、この歌はカラオケファンの根強い人気であり、常に女性がカラオケで熱唱したい歌の上位にランクインされている。
歌詞については、最も印象深いところが「誰かに盗られるくらいなら あなたを殺していいですか」という部分である。言うまでもなくそんなことをしていいわけがないのだが、この部分の歌詞からは、かなりの女性の情念というものが感じられる。そこまで人を愛することができるだなんて、凄いなぁ〜!と思う。それから、「何があってももういいの くらくら燃える火をくぐり あなたと越えたい 天城越え」という部分である。ここからは、やはり押え切れない激しい感情を「あなたと越えたい」という思いで表現している。何があっても後悔はしない。だから、私はあなたと一緒に越えたいんだという、女性の強さと愚かさをも感じるのである。
そして、さゆりさんはこの歌の主人公(女性)に成り切って、この歌を唄うというよりは演じ切っておられる。前奏が流れ出すと、さゆりさんは着物の帯に手をそえ、ぐっと力を込めて触れられる。「さぁ、今から唄うわよ」というような意気込みが感じられる。「おぉ〜!カッコイイぃ〜!」と思いながら、私はいつも見ている。又、この歌で見せるさゆりさんの激しくも切ない表情・歌声は、何度聴いても(見ても)迫力がある。さゆりさんが唄われるこの歌は、きっとこれからも私達を虜にし、はなさないであろう。
|