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『風の盆恋歌』;石川さゆり
作詞;なかにし礼
作曲;三木たかし
編曲;若草恵
この歌は、高橋治先生の小説『風の盆恋歌』がモチーフである。私は、この小説を読み始めたとたん、このお話しの世界にぐっと感情移入し、一気に読んでしまった。というのも、さゆりさんの歌と小説の内容が私の頭の中でピタッと一致したからである。さゆりさんの歌の中にはこんなにも深い男女の想いがあったのかと、その時改めて気付いたのだ。さゆりさんは、この歌を唄うにあたって歌の舞台となっている富山県八尾町を訪れたそうだ。八尾では、毎年九月初めに「風の盆」というお祭りが行われる。けれども、それは賑やかに騒ぐものではなく、静かに胡弓や三味線の音色に合わせて越中おわら節を唄い、八尾を練り歩くお祭りである。胡弓の音色がとても美しく、何とも言えない「日本の美」の世界がそこにはあるようだ。私も、是非一度行ってみたいと、この頃になると毎年思うのである。
さて、歌詞についてである。この歌は、「蚊帳の中から 花をみる 咲いてはかない 酔芙蓉」という歌詞から始まる。なんて、和の美を感じさせてくれる表現なのだろう。蚊帳の中から酔芙蓉という花を見ているだなんて、情景が頭に浮かんできそうだ。美しい歌詞だな〜って思う。そして、この歌の中で一番私が印象深い部分が三番の歌詞である。「生きて添えない 二人なら 旅に出ましょう 幻の」凄く凄く愛し合っていたんだということが、この部分から伝わってくる。この世で一緒になれないなら、せめてあの世で一緒になりたい。私は、こういった考えは古くから日本にあったものではないかと思うのだ。先に紹介した『夢の浮橋』のおさんと茂兵衛の場合も、「この世で生き恥 晒すなら いっそあの世で 二世三世」と唄われている。せめて、あの世で一緒になりたいという男女の想いは、何か他の人が入ることができない固い絆で結ばれているような気がする。次に、「遅すぎた 恋だから 命をかけて くつがえす」という部分について少し触れておきたい。特に、「命をかけて くつがえす」という部分は、さゆりさんも特別な思い入れがあるようで、かなり情感たっぷりに熱唱しておられると感じる。この世で一緒になれないのなら、命をかけてくつがえしてみようじゃないか。そういった男女の深い愛と固い絆が唄われている。又、「くつがえす」のところでさり気なく回すさゆりさんの小節が、何故か私は大好きである。
曲調はというと、富山県八尾のお祭り「風の盆」のような静かなメロディーとなっている。前奏などもとても美しく、「風の盆」を想像させてくれる。そして、小説『風の盆恋歌』を思いながら、さゆりさんの透き通るような歌声に酔い痴れるのである。又、この歌を唄い終わる時に、さゆりさんはそっと手を合わせ目を閉じられる。きっと、この男女の悲しいまでの恋を思い、これから二人できっと幸せになってね・・・という気持ちを込めてのことであろう。
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