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とても内省的な音楽だ。ルイージ・ノーノの代表作とされる「Como una ola de fuerza y luz」、邦題「力と光の波のように」を聴いたとき、胸がしめつけられるほどの不安をかきたてられたが、このアルバムに収められた曲からは、内から湧き出るような熱さはあっても、押し付けがましい暴力性は感じられない。それというのもノーノの作風は、初期の線描主義のセリエル時代、中期の電子音楽時代、それに後期の抑制された静寂時代と3つの時代に分類されるが、このアルバムに収められた曲は、初期と後期の作品だからだ。
1曲目の「Due espressioni」は1953年の作品で、初期の作品だ。暗闇のような静けさの中から、じわりじわりと音が滲み出してくる。「線描主義」ともいわれるように、楽器の各音がそれぞれ別々の線となって現れるかのようだ。タイトルの「Due espressioni」は「2つの部品」といった意味で、音楽表現の異なる2つのパートを示している。曲の中間部で打楽器の音が現れると最初の静かなパートが終わりを告げ、より断片化した音空間があらわれる。なおこの録音は、1953年10月11日のドナウエッシンゲン・ミュージック・フェスティバルの初演の録音だ。
2曲目「A Carlo Scarpa, architetto」は1984年の作品、3曲目「Fragmente - Stille, an Diotima」は1979年から1980年にかけての作品、4曲目「Post - Prae - Ludium」は1987年の作品と、残りの曲はルイジ・ノーノ後期の作品にあたる。
「A Carlo Scarpa, architetto」は、ルイジ・ノーノの友人であった建築家カルロスカルパのための哀悼をあらわした曲だ。断片的に演奏される楽器は、それぞれ無造作に演奏されているようでありながら、あやういハーモニーに彩られている。いったい何という打楽器の音か、あるいは弦楽器を打楽器として扱っているのか、不思議に重厚感のある衝撃音がいい。
「Fragmente - Stille, an Diotima」は「断片-沈黙、ディオティーマに」だが、これはドイツの思想家フリードリヒ・ヘルダーリンが書いた「ヒューペリオン」に登場するディオティーマのことをテーマにしているのだろうか。27分3秒の長さがあり、このアルバム中で最も長い曲だ。すすり泣くようなバイオリンの音、沈黙、どの瞬間も緊張感が途切れない。時折ひきつるように激しさを増すバイオリンも刺激的だ。
最後の4曲目「Post-Prae-ludium」はバス・チューバとライブ・エレクトロニクスのための作品だ。押し殺すようなバス・チューバの音と電子音が微妙に混ざり合うデリケートな音で始まるが、一瞬の隙を突いて開放されたかのようなバス・チューバの低音が響き渡る中間部分は意表を突かれる。また後半のバス・チューバと電子音が共振をおこしたようなヒステリックさも緊張感が高い。ここには1987年10月17日にドナウエッシンゲン・フェスティバルの初日に演奏された録音が収められており、客席の咳払いなども録音されている。
このCDは2000年にCol Legno Musikproduktionから発売された。ドイツ盤だと思われる。(20080508/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)
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