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久しぶりに強烈な感動を受ける曲に出会った。マグヌス・リンドベルイの「クラフト」だ。この曲はリンドベルイの代表曲のようだが、この曲を聴いたときの感動は、エドガー・ヴァーレーズの「インテグラル」を初めて聴いたときの感動に匹敵するものだった。
大胆な打楽器で始まるダイナミックな演奏は、ミュージック・コンクレートのようでもある。ヴァーレーズの音楽のように、時間を音という色で塗っていくかのようなイメージがした。マグヌス・リンドベルイは1985年のヘルシンキ・フェスティバルにピアノコンチェルトを書くように依頼されたが、より大きな形式と大アンサンブルの形式にまとめられたのがこの「クラフト」だということだ。またこの曲が完成する過程で、マグヌス・リンドベルイ自身と彼の友人たちによって「トイミー・アンサンブル」が設立された。
この「クラフト」はマグヌス・リンドベルイの言葉で「超複雑な形式と単純な形式の協調」と説明されている。たいへん大きな構成で、オーケストラに加えて、クラリネットとチェロ、ピアノ、パーカッションのソリストアンサンブルが入っている。これが「トイミー・アンサンブル」だ。ポピュラーミュージックで使われるようなドラムキットの音、そしておそらく電子ドラムも使われており、洗面器の水をかき回して泡立てるといった音も使われているらしい。人間の声も使われている。打楽器に対するこだわりを強く感じる曲だが、マグヌス・リンドベルイ自身はもともとピアニストだったらしい。
マグヌス・リンドベルイはフィンランドの作曲家で、セリエリズムの遺産から始める初のフィンランド人作曲家だと言われている。シベリウス音楽院にて伝統的な作曲法をエイノユハニ・ラウタバーラに学び、フィンランドで最初の12音音楽の作曲家であるパーヴォ・ヘイニネンにも学んだ。またフランコ・ドナホーニの影響下にあったシエナの作曲マスタークラスで様々に異なる世界観の音楽に出会った。ダルムシュタットではヘルムート・ラッヘンマンの世界に出会い、極端に複雑な構造をとる「マキシマリズム」のブライアン・ファーニホウからも影響を受けたようだ。
「クラフト」を聞くと、これこそ現代音楽の醍醐味との感想を持つが、しかしその背景にあるものは、やはりあくまでもロマン主義である。新しい手法を使いながらも、曲から伝わってくるパッションは普遍的なものだ。決して奇をてらったものではない。そのことは「クラフト」とともに収められたもう一曲の「ピアノコンチェルト」からもわかる。これは1990年から1994年にかけて作曲されたもので、「クラフト」の作曲が1985年であるから、こちらの曲の方が新しい。
演奏はフィンランド放送交響楽団とトイミーアンサンブル。指揮はエサ=ペッカ・サロネン。2004年にOndineから発売されたオーストリア盤のCDだ。(20080514/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)
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