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もしかしたらドラムがイアン・ウォレスでなければ聴こうと思わなかったかもしれない。キング・クリムゾンとジャズは相性がいいとは思えなかった。イアン・ウォレスは第一期キング・クリムゾン後期のドラマーで、アイランドとアースバウンドに参加している。アイランドは荒涼たる静寂さを感じさせるアルバムだが、アースバウンドはエネルギーに満ちている。ロバート・フリップさえコントロールしきれない邪悪なエネルギーが。あのリング・モジュレーターで歪んだ怒涛のドラムは、一度聴いたら忘れられない。
このCDにはキングクリムゾンの第一期、第二期、そして再結成まで幅広く選曲された演奏が収められている。名曲は数々あるが、何といってもキング・クリムゾンを代表するといえる曲は、まさにファーストアルバムの冒頭を飾る「21st Century Schizoid Man」だ。このCDにも第一曲目に掲げられている。だがしかし、この曲が果たしてジャズになるのだろうか、といささか危惧をしていたが、それは杞憂にすぎなかった。原曲の印象を壊すことなく、ジャズとして魅力を感じる演奏に仕上げられている。
おそらくジャズにしてもぴったりだろうと思われたのは4曲目の「Starless」だったが、予想通りだった。後半の盛り上がりではイアン・ウォレスのドラムが暴れまくる。そして「I Talk To The Wind」もいいかんじだ。この曲はオフィシャル・アルバムでもファーストの「In The Court Of The Crimson King」に収められ、その後「The Young Persons' Guide To King Crimson」という2枚組のLPに女性ボーカルのバージョンが納められていたことを思い出す。この曲はどんなアレンジにしてもいい。普遍性を持った名曲だ。
「Three Of A perfect Pair」は再結成クリムゾンの曲で、歌が曲の主要な部分を占めている。その点、ジャズ・トリオではやや物足りなさが残る。これは「Matte Kudasai」にも言えることで、歌のメロディーをなぞりながらの演奏は悪くはないのだが、あまりにもエイドリアン・ブリューの歌が印象深いので物足りなく思ってしまう。
意外なところでは「Catfood」では原曲がジャズ風のピアノを有しているにもかかわらず、いざ曲全体をジャズ風にしてみるとしっくりこないところだ。原曲がブルースに基づいているからだろうか。これと似たようなところが「Ladies Of The Road」にもあって、なんとなく違和感が残る。
「Red」はジャズにして文句なしだ。原曲を超える魅力があると言ってもいい。「Red」という曲はまるで最初からこのようなジャズにして演奏されることを想定して作曲されたかと思えるほどだ。
CDの裏にはロバート・フリップのいかにも彼らしく几帳面に2005年7月1日金曜日17:56と時間まで書かれ「最初の印象は、いいぞ!次の印象は、ボリューム2が待ち遠しい。」「キング・クリムゾンの曲をレパートリーにするバンドはほとんどなく、卓越した演奏は一曲か二曲くらいしかない。しかしこれらの演奏は素晴らしく、私にクリムゾンの曲の新しい解釈をみせてくれた」というような賛辞のコメントがある。
ザ・クリムゾン・ジャズ・トリオはドラムがIan Wallace、ピアノがJody Nardone、ベースがTim Landers。このCDは2005年にVOICEPRINTから発売された英盤だ。(20090621/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)
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